24 翔太(SHOUTA)
朝、和臣が一緒に車に乗って行くというのを避けるために翔太は母屋に逃げてきた。
逃げ先は和臣の弟の篤臣くんの所。
「兄様探してるよ?」
「ごめん!知らないふりして?」
「え~…あと怒られるのやなんだけど」
「ごめんね~」
篤臣くんは年が離れていてまだ小学3年生。秀邦の小学部に通っていて、和臣をそのまま小さくした感じの優秀な子だ。
「翔ちゃん……仕方ないな…」
「篤臣くん、ありがと」
小さい身体をぎゅっと抱きしめる。
ああ、自分より小さい身体に心が休まる。
「隠れてっ!」
和臣の声が近づいてくる。
翔太は慌てて篤臣くんの寝室の部屋の方に逃げ込んだ。
「篤臣!翔太は来ていないか?」
「来てませんよ?」
「……本当に?隠してるんじゃないだろうな?」
「してませんよ。兄様がいじめすぎて翔ちゃんは嫌になったんじゃないの?」
いじめすぎは合ってるけど、そんな事ないよ、と心の中で翔太は付け加える。
「兄様、もう出る時間でしょう?間に合わなくなりますよ?」
「ちっ。翔太!ちゃんと学校には来い」
和臣はちゃんと翔太がここにいるのが分かっているかのように声を張り上げた。
「兄様、ここにいるの分かってますよ?」
ドアを開けて篤臣くんがやれやれという顔で翔太に言うのに翔太はだらだらと冷や汗を流して頷いた。
「うん…ごめんね~~篤臣くん~~」
和臣を小さくした感じ、小学校の頃の和臣を見ているみたいで篤臣くんは可愛い。
「翔ちゃんのためなら仕方ないですけど」
「うん、ありがと~~」
翔太は離れに戻って制服に着替えた。和臣は朝の生徒会の仕事があるからもう行ったはず。
翔太はいつもと同じ時間に出ていつもと同じように電車で学校に向かった。
いつも柏木と会う所であれ?と翔太は止まった。
柏木が誰かと一緒だ。
しかもぴったり張り付くようにその人の後ろに立っている。
おやおや~?と思って楽しそうにそれを眺めた。
柏木の好きな人?だよな、きっと。
近くなってくるとその人がはっきり見えた。
二宮副会長だ。
そういえば昨日のお姫様抱っこしてたとか誰かが言ってたな。
え?まじで?
離れたところから柏木と副会長の様子を見る。
いつも表情が見えない副会長が柏木の制服掴んで何か言ったり、顔赤くしたりしてるのに思わずじっと見入ってしまう。
和臣と噂があったのに…。和臣と朝一緒にいるとこ見るのが苦痛だったけど、どうみても副会長の様子が違いすぎる。
そして柏木の顔はもう恥かしくて見てらんない位いつもと違う。
なんだお互い好きなんだ。
見てても分かる位だ。
さらに見てると校門の前で生徒会の役員の前で副会長が謝っているのが見えた。
そう思ったら柏木が和臣の前で副会長を後ろから抱きしめるような感じにして和臣となんか話している。
何話してるんだろ?
すぐに柏木が副会長を放して和臣と握手してるのに翔太は頭を傾げた。
う~~ん…不思議な組み合わせだ。
そのまま柏木と副会長が校門を過ぎていったので翔太もその後ろから校門をくぐった。
勿論和臣と目が合った。
でも和臣も何も言うつもりはないみたいでほっとする。
昇降口と校舎は2年とは離れてるので柏木が一人になった。
「柏木!フクカイチョーと仲いいの!?」
挨拶もしないでいきなり話しかけた。
「…幼馴染」
「まじで!?」
へぇ~!そうなんだ!びっくりだ!
「何?」
「いいやぁ?」
上履きに変えようとして翔太が屈んだ。
「三浦」
「なぁにぃ?」
「ここ、見えるけど?」
そう言って柏木が翔太の項を触った。
「は?何が?」
「キスマーク」
はぁ!?
慌てて翔太は項を押さえた。
キスマークって…?
言葉しか知らなかったけど…。
そういえば風呂でそこ強く吸われた!
か~~~っと顔が熱くなってくる。
「……やることヤってんだ……さすがだ…」
「さすがって!なんだ!?」
柏木の言葉に翔太は眩暈がしそうになってくる。
「あ、いや…」
柏木が困った様にしていた。
「…よかったな」
よかった~~~!?
「…別によくない。最後までヤってないし」
そもそも最後を知ったのは昨日なんだから!
「そうなの?」
「…だってアイツ意地悪いんだ」
そう!意地悪なんだ!こんな痕までつけるなんて!
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