はのんのBL部屋

25　　　翔太(SHOUTA)


　「……なぁ、柏木の好きなのってもしかしてフクカイチョー？昨日お姫様抱っこしてたってほんと？」
　昨日の事が本当で、副会長が相手なのか確かめたくて柏木にそう聞いてみた。
　「…具合悪くしたから、だけどな」
　「ほんと、なんだ…」
　へぇ、と顔を赤くして翔太は頷いた。
　「で、フクカイチョーなの？」
　「だよ」
　やった！と翔太は嬉しくなった。だって和臣と副会長が立っている所を見れば完全な一対のように見えて翔太に入る隙間なんてどう見てもなさそうだった。それなのにその副会長の相手が柏木で和臣が好きなんじゃないと分かれば嬉しい。
　「で？で？フクカイチョーも？」
　肝心な答え。柏木は口説き中だといったけど、さっきの様子を見れば副会長だって柏木の事は好きだろう。
　「さぁ？」
　「え？ちげぇの？」
　さぁ？だってあれ見たらどうみたって好き同士だよな？
　違うの…？じゃやっぱり和臣…？
　柏木だってかっこいいけど、和臣はやっぱ特別だと思うし。
　「お前、キスマークまでつけられてて不安なの？」
　柏木が不思議そうに聞いてきた。でもその言い方がなんか、相手分かってるようで…。
　「え！？だって、それは……その……。………ん？…柏木、もしかして俺の好きな相手、分かってる…？」
　「分かってるけど？」
　嘘だろ～～！なんで？
　思わずしゃがみこんだ。
　「似合わねぇ、とか不釣合いって思わねぇ？」
　伺うように柏木に聞いてみた。だってあの和臣だよ？
　普通だったら絶対そう思う。
　「は？別に思わねぇけど…」
　え？そうなの…？
　「……あのさ、ちゃんと好きだって言えって言ったよな？」
　「言えねぇんだもん！」
　「…………」
　呆れたように柏木が翔太を見ていた。
　だって言えるはずない。甘えろって言われたのだって出来てるんだかできてないんだか。
　恐怖を感じるパニックにかこつけてるだけだし。和臣だってきっとそう思っているるだろう。
　「……素直になれば？」
　「なれれば相談なんかしねぇもん」
　そんな簡単になれるんだったらなってる。
　だって昨日だって和臣はキスマークつけたのだって翔太の触ったのだってどうして？って聞いてもしたいから、しかないんだ。
　翔太だけ好きだって仕方ない。
　「だって…優しくねぇんだもん…。意地悪ばっかなんだもん」
　翔太は立ち上がってクラスにすたすたと向かった。その後ろを柏木がついてくるけど、その柏木が携帯を取り出してメールを打っていた。
　「…なんだよぉ！話してる途中にメールかよ」
　「ああ、ちょっと恩を売っておこうかと思って」
　「は？恩？」
　「そ」
　「わけわかんねぇ奴」
　翔太はむっとした。
　「三浦はとにかく思った事口に出せば？嬉しいなら嬉しいって言え。嫌なら嫌って言え」
　「ええぇ～～～…」
　「それも言えねぇのに相談なんかすんなよ」
　「う……」
　「素直に思った事言え。意地張るな」
　「………出来れば……はい」
　仕方なく翔太は小さく頷いた。


　そうは言うけれどだって嫌って…何が？
　本当は触られるのだって嫌じゃないし。
　嬉しいのは…言ってない。
　どう言えばいいんだ？
　手繋いでる時とかは嬉しい。
　頭撫でてくれるのとかも。
　意地悪だけど嫌じゃないんだ。ただ嫌われるのが怖い。和臣に嫌われたらどうすればいい？
　パニックになった時の事だけじゃない。
　勿論恐い時は困るけど、でもそうじゃなくて、嫌われたら今みたいに一緒にいられないって事だろう？
　そんなの耐えられない。
　離れではテレビもあんまりつけないし、何もないしんとした部屋だけど、和臣の息遣いとか紙を捲る音、和装の時の空気感。全部好きだ。
　ああ、着物姿好き、だったら言えるかも。
　それ言ってみようかな？
　そういえば言った事なかったかも。
　素直に、意地張るな、って柏木が言った。
　意地は張ってないと思うけど…。
　何に対して意地？
　よく分かんない。
　嫌な事…。
　ああ、昨日言われた。風呂に一人で入れとか、一緒にいられないなんて言われるのは嫌だ。
　あとしなくていいって言われたのも嫌だった。
　それも言っていいの？
　意地張らないってそういう事言っていいのだろうか？
　本当に…？
　

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