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熱視線 狂詩曲~ラプソディ~3

 学校が始まって普通に電車に乗って学校に向かった。
 この電車をもっと先まで乗っていけば怜の家の近くの駅に着く。
 そうしたい気分だったが、まさかそんな事は出来ず明羅は学校の駅で電車を降りた。
 携帯を出して怜の番号を表示させる。
 これをかければ怜に繋がるのだ。
 
 昨夜家に帰って来て、部屋でメールしようか、電話しようかと何回も携帯を手に取った。
 でも怜と別れたばかりなのにそれはおかしいだろ、と結局かけられなかった。
 だって用事もない。
 わざと忘れ物でもしてくればよかったんだ、と後から気付いた。
 そうしたら用事があるふりしてかけられたのに。
 
 今学校に向かって歩いてる所、とでも電話入れる?
 メールする?
 いや、だからどうした?と思われるに違いない。
 明羅は携帯をしまおうとしたが、ブログを見てみようと開いた。
 でもやっぱり更新はされてなくて。
 そうだよね…、とがっくりする。
 もう何回も何回も更新されないブログを見ている。
 離れてしまうとこんなに心許ない。
 夏休み中ずっと一緒にいたのは夢なんじゃないかと思ってしまう。
 
 「桐生」
 携帯をポケットにしまったら珍しく声をかけられた。
 周りを歩くのは青桜の生徒がほとんどだ。だが、明羅はめったに声をかけられることはない。
 誰だろうと声の方向を見たらなんと怜さんの異母弟だという二階堂 宗だった。
 「あ…」
 なんで声かけられるの?
 明羅は思わず怪訝な表情になってしまう。
 「お前、兄貴とどんな関係?」
 二階堂 宗は明羅の隣に並んだ。
 やっぱり怜と似ているのか背は高い。
 「………別に言う必要ないと思うけど?」
 怜の事を敵視しているような二階堂 宗に明羅はどうも心象はよくない。
 私立の普通校だ。明羅は小学校は普通に公立の学校に通って高校だけが青桜だ。二階堂 宗はずっと小学校から青桜と誰かが言っていたような気がする。

 「ピアノか…」
 二階堂 宗が呟いた言葉に明羅は顔を上げた。
 「お前の母親ピアニストだろう?」
 知っているんだ…。明羅はあまり気分がよくなくなる。
 「何で知っているって顔だな?うちの親父が桐生 佐和子の後援してるだろ」
 ん?と明羅は考える。
 「ああ……二階堂グループだ」
 なるほど、と思わず頷いて、そしてまた怪訝に思う。それなのに息子の怜さんには後援しない?
 いや、怜さんが断っているという可能性もあるかも、といつやら親父からの電話だといって少し変だった怜を思い出した。
 「何?俺が礼を言えばいいの?」
 「…そうじゃない」
 二階堂 宗が苛立ったように言った。
 どうやら親の事を恩着せがましく言うような奴ではなかったらしいのにはほっとした。

 しかしなんで二階堂 宗と並んで歩かなくてはいけないのか。学校でも目立つ二階堂と一緒になど歩きたくない。
 学校に向かう生徒から、女子、男子関係なくひっきりなしに二階堂に声がかかる。
 そういえば電車?
 私立で結構名の通った学校で、車で通学も多いのだが二階堂 宗は電車なのか?
 「電車?」
 「いや。お前が見えたから」
 わざわざ車から降りて明羅の所に来たというのか?
 迷惑な。
 「俺は用事ないから」
 用があるのは、いて欲しいのは二階堂は二階堂でも宗じゃなくて怜だ。
 明羅は宗から離れてさっさと学校に入っていった。

 しかしそのちょっと歩いただけでもすでに二階堂と明羅が夏休み中に仲良くなったらしい、とこそこそ話が聞こえてきて明羅は辟易した。
 そうじゃない。
 全否定してやりたいが明羅に直接聞いてきたのはほんの数人で、その数人に違うと言った所で否定の声は全然聞こえてこなかった。
 なんなのか、一体。
 別に遠巻きにされたってかえって煩わしくなくていい位だが、二階堂との事を噂されるのには心外だ。
 明羅が欲しいのはあれじゃない。

 明羅は時間があれば携帯をチェックした。
 怜から電話はないか?メールはないか?ブログは更新されてないか?
 でもどれも全滅だった。
 何してるんだろう?
 いつも明羅を抱えて眠っていた怜が隣にいない。
 夏休みの時間に戻りたい…。
 明羅はただじっと携帯の怜の番号を見つめた。
 
 

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