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会長様は俺様閣下 39

39   翔太(SHOUTA)


 一日鬱屈とした気分のまま終わって和臣と一緒に車に乗った。
 いつもは広い後部座席でちょっと距離を離すけれど、今日は離れたくなくて触れるか触れないか位の距離。
 そして車に乗ってすぐに手を伸ばすと和臣がちゃんと分かってくれて手を繋いでくれた。
 なんでこんなに怖い、という思い全部に弱いんだろう?
 ずっと心臓は落ち着かない。
 自分に向けられたことじゃないのに。
 翔太は自分に向けられた事でなくてこんな状態なのに、当の副会長はどんな気分なんだろう?と顔が顰め面になる。
 きっと柏木が副会長のフォローをしてるんだろう。
 柏木ならきっと優しいし副会長も安心出来るだろうと思うけれど。
 「翔太、お前にも同じ事、いやそれ以上の事になる事だって考えられるんだ。一人になるな。分かったな」
 こくりと翔太は頷いた。
 和臣は正しい。
 あの毅然としてる副会長の机にあんなことされて…、バカな自分相手にだったらきっともっと凄いことになるかもしれない。
 輪姦してやる、と言った阿部って呼ばれてたヤツの顔と口調とを思い出して身体が震えた。
 和臣に触れられた場所。あれは和臣だったから自分でもすっかり記憶から抜け落ちる位になんともない事だったけど、あんなトコあいつ触られて入れられる…?
 嫌だ。
 「翔太…」
 震えている翔太に気付いて和臣が手を離すとその手で翔太をさらにぐっと抱きかかえてくれた。
 「…大丈夫か?」
 パニックにならないか?と和臣は聞いてるんだ。
 こくこくと翔太は頷いた。
 和臣がこうしてくれているならば平気だ。
 「今は、だいじょ、ぶ…でも…」
 夜は…。
 「分かっている」
 何も言わなくても和臣は分かってくれている。それにやっぱり安心した。

 車から降りても和臣は翔太を抱えるように肩を抱き寄せてくれていた。
 「あら、翔ちゃん?どうしたの…?」
 「ちょっと気分が悪いんです。夕飯は離れの方に運んでもらうように言っておいてください」
 「分かったわ。けど…翔ちゃん、本当に大丈夫?」
 和臣のお母さんが翔太の顔を覗きこんで翔太の額に触れた。
 「熱あるのでもないのね?」
 「ええ。休んでいれば大丈夫ですから」
 和臣が翔太の代わりに当然のように答える。
 「理香さんありがとうございます。大丈夫だから」
 「和臣さんが無体だから疲れたんじゃないのぉ?」
 「そんなわけないでしょう!」
 無体?難しい言葉の意味は分からない。
 「ひどいようだったらいつでもお医者様呼ぶから」
 「ええ」
 そのまま和臣に抱きかかえられて離れまで行った。
 「和臣…」
 制服を脱ぐために離れるのも嫌で和臣の首に腕を回した。
 「…脅かしすぎたか?大丈夫だから」
 「うん……フクカイチョ、大丈夫かな…?」 
 「大丈夫だろ。ヤツには柏木がいる」
 「…そだね。じゃ着替えてくる」
 「ああ」
 翔太はそそくさと自分の部屋に行って着替えを済ませる。
 自分のベッドを見てそういやここしばらくずっと和臣にへばりついて寝ていたので全然ベッドに横になっていなかった。
 そう思っても怖いから仕方ない、とさっさと部屋を出て向かいの和室の部屋に向かった。
 「翔太」
 なんか最近の和臣は優しいと思う事が多い。
 前よりずっと。
 ただここ最近は怖いが続いてるせいかもしれないけれど。
 「う~~~ん…今度ソファを置こうか。和室にソファはちょっとな感じもするが」
 「え?なんでソファ?」
 「そうしたらお前がくっ付いて横になってられるだろう?」
 「いいよ!そんなの。ここにソファって合わないよ」
 「…そうなんだよな」
 「うん。いい…。今までだってこれで大丈夫だから平気。背中にくっ付いてるから和臣やる事してていいよ?」
 座卓の上には書類が置かれてあった。
 「そうか?」
 「ん…」
 
 和臣は着替えを翔太が用意しなくいで、翔太が着替えをしている間に和臣も済ませるようになった。
 でも着るのは和装が増えてる。今日も和装だ。本当は正面から見たいんだけど…。恐い時は離れられないからそれはちょっと残念だ。
 「和臣…俺…いらない?」
 「は?」
 「だって何もしなくていいって…それでなくても俺、何もしてないのに…」
 「いや、普通それでいいだろう?」
 「どうして…?俺は和臣の為に着替え出すのも好きだったのに…和臣にいらねぇって言われてるのかと、思った」
 こういう事も言っていい、のかな?
 「そんなわけあるか。ばかもの」
 あ、怒られた。怒られたけど…なんだ違うのか。
 …いらねぇんじゃないのか。…そっか。
 翔太はちょっと嬉しくなって顔が弛んだ。 
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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