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会長様は俺様閣下 40

40   翔太(SHOUTA)


 柏木にちゃんと言えって言われてから、そうするようになってからはちょっと変わったと思う。
 でもお見合いの事は聞けないけど…。
 本当はそれこそ問いただしたい。でももしお見合いが決定で婚約なんて事になったとしたら本当に翔太はいられなくなるから、だから聞けない。
 それに和臣も何も言わないし。
 まだうだうだした思いが出てくる。
 今日の朝の衝撃だった出来事と阿部の下卑た顔、見知らぬ和臣の見合い相手。
 ぐるぐると頭の中が回る。
 「…太、翔太っ?」
 「え!?あ、何?」
 和臣の声にはっとした。
 「…何を考えている?溜めないでちゃんと言いなさい」
 婚約すんの?俺もういらない?
 …なんて言えない。さっきはそんなわけあるか、って否定してくれたけど、問題が違うから。
 「うん…頭の中が色んな事ぐるぐるしてる。わけわかんね」
 「…そうか。あんまり考え込むな。ちゃんとお前を守ってやる」
 えっ!?守る!?
 うわっ!ナニソレ!なんか俺特別な感じする!
 和臣にそんなこと言われて翔太はどきどきして顔が熱くなって思わず頬を押さえた。
 「翔太?」
 「え?ああ…?うん?何?」
 動揺してなんか言葉も声のトーンもおかしい。
 「……いや」
 くすっと和臣が笑ったのが分かった。
 「翔太、やっぱり背中合わせはつまんないな。お前の顔が見えない」
 ぎゃ~~~、何言ってんの!?コイツ!!!
 誰だ!?コレ!?
 「か、和臣…?」
 「うん?」
 「いえ…なんでもない、です…」
 くっくっと和臣の肩が震えている。もしかしてからかってんのか?
 なんだ。そうか…。……だよなぁ。
 「翔太」
 「なぁにぃ?」
 和臣の背中にぐっと寄りかかるとふっと和臣の背中がなくなった。
 「お、わっ!」
 倒れる!と思ったら和臣の腕に掴まった。まるで横抱きのような体勢。
 「びっくりしたじゃん!」
 「顔が見たかったんだ」
 しゃあしゃあと言う和臣の台詞にぶわっと顔が赤くなった。
 「何言ってんの!?毎日見てんだろ!?」
 「見てるけど」
 翔太の身体をぐいと和臣が引き寄せた。
 何この体勢!?まるきり横抱っこだろ。
 いや、くっ付いてられるのは嬉しいけど!
 「翔太」
 和臣の手が翔太の頬にかかった。
 まさか…、また…?
 そう思ったらやっぱり和臣の顔が近づいてきてぎゅっと翔太は目を閉じた。
 唇が重なっている。
 だから!どうして和臣はキスすんだ?
 ここ最近はしてなかったのに。
 気まぐれでしただけだと思ってたのに。
 何度も何度も啄ばむように和臣の唇が翔太の唇を確かめている。
 「ん……やっ……か、ず…」
 言葉を出すのに口を開いたらその隙に和臣の舌が口腔に入ってきた。
 嘘っ!
 舌を絡められてる。
 「や…ぁっ……」
 力が抜けてくる。
 和臣、なんで…?
 聞いても返ってくるのはきっとしたいから、という言葉。
 分かってるけど…。
 俺は好きなんだ…。
 翔太はキスされて嬉しい。でも和臣はどうして…?
 「ぁ……ん……」
 鼻にかかった声が漏れるとさらに和臣の舌は翔太の舌に絡まって吸い上げられる。
 しんと静まり返った部屋に湿った音がいやらしく聞こえて恥ずかしい。
 和臣が夢中になっているみたいに翔太の口を貪っている。
 頭を押さえられ、何度も角度を変えながら…。
 「か、ず…お……みぃ……」
 その合間に名前を呼ぶとはっとしたように和臣が唇を解放した。
 翔太は恥かしくて和臣の胸に顔を押し付け縋ると和臣は翔太の頭を抱きかかえるようにしてそしてその頭にもキスしてきたのにうわぁ…、と翔太は焦った。
 恥ずかしい…。
 なんで…?
 和臣の着物の胸の合わせの所をぎゅっと握った。
 顔が熱い。耳まで。
 「翔太…」
 和臣の声がちょっと掠れてるのにぞくりとして小さく身体が震えた。
 だって、なんか…和臣が、違う。
 好きだ。
 どうしよう…。
 ここ最近ずっと和臣から離れられなくて、その間にさらに気持ちは大きくなってしまったみたいだ。
 言ってしまいたい。
 でもそんなの言えるはずない。
 言って何になる?
 でもじゃあ、どうして和臣はキスすんの?
 翔太の頭の中は理解出来ない事に対処出来なくてぐるぐると回っている。
 どうしたらいい…?
 そして結局翔太は何も言えないまま、言われないまま、しばらくそのままでいた。
  

 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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