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会長様は俺様閣下 41

41   翔太(SHOUTA)


 「あ…か、ずおみ……書類、は…?」
 翔太を抱きしめたまま動く気配がない和臣に翔太は口を開いた。
 まだ顔は恥かしくて上げられない。
 「終わってる」
 あ、そう…。
 いいけどいつまで…この体勢…?
 和臣はずっと翔太を抱きかかえている。
 「……やはりソファを買おう。明日見に行くぞ」
 「え…?なんで?」
 「なんで、じゃない。もう決めた」
 和臣が言い切る。
 大きい座卓に和臣の机もあるけれど、部屋は広いし置くのに問題はないとは思う。…けど、なんで?
 それよりどうしてキスなんかしたの?と聞きたいけど、答えは一緒だろう。


 したいから…。


 その答えを聞くのが虚しいから聞けない。
 「翔太、顔を見せなさい」
 だから、どうしてそんな事言うかなぁ!恥ずかしいから上げられねぇってのに!
 和臣の手が翔太の顎にかかって無理やり顔を見られる。
 翔太の顔はきっと熱に浮かされたように真っ赤になっているだろうけれど、目の前の和臣の顔は涼しいものだ。
 その温度差にやっぱりね、と自分の中で納得してしまう。
 和臣にとってはなんでもない事なんだ。
 なんか虚しい…。
 そんな風に思うのもきっとおこがましい事だろうけれど。
 和臣の指が翔太の唇をなぞる様に触れてきた。
 うわっ!
 翔太はぎゅっと目を瞑る。
 なんかエロいよ…。
 心臓がどくどくと音を立てている。
 でも離れる事も出来なくて、どうしたらいいんだろうと目が回りそうだ。
 うっすらと目を開けて和臣を見ると満足そうな笑みを浮べた顔が目に入った。
 なんでそんな顔してんの?
 「和臣」
 好きだ…って言ってみたい。
 柏木に何度もちゃんと言えって言われているからかなぁ?
 でももしそんな事言って何言ってる?とか言われたら…?
 絶対言いそうだもん。
 そんな事言われたら一緒になんていられなくなる。
 それは今の時点では非常に困る!
 だって恐くなった時に、息苦しくなった時に助けてくれるのは和臣だけだ。
 「翔太?何を考えている?」
 「え?あ…何も?」
 嘘だ、という目を和臣はしたけれど何も言わなかったのにほっとする。
 「…まぁ、いい。翔太、俺といる時は安心していいから。何でも…息苦しくなっても、害を与えられそうになっても、お前を助けてやる」
 「……ん」
 なんだよそれ…。
 かぁっと顔がまた熱くなってくる。
 そこに好きだなんて言葉が入ったら翔太はもう舞い上がって帰ってこられないかもしれない。
 でもそんな言葉はないけれど。
 なんで和臣はこんな事言ってくれるんだ?その分自分は和臣に何をすればいい?
 翔太の出来る事なんて何もないのに。
 

 学校から帰って来た時よりもずっと心の中は落ち着いた。
 落ち着いたけど、和臣に関しては落ち着かない。
 でも離れられなくて、そうすると和臣がちょっと動いただけでもびくっと反応してしまう。
 それを見て和臣ははぁ、と溜息を吐き出す。
 呆れているんだろうか?
 あまりにも翔太が和臣を意識しすぎているから。
 これは困った、と翔太はさらに青くなりそうだった。
 だってさっきのキスの感覚がずっと残ってて、それを思い出す度にざわざわと身体がおかしくなる。
 だってあとお風呂あるのに!
 絶対ヤバイ気がする。
 じゃ一人で入る?
 無理だ……。いややっぱり一人で…。
 翔太は頭をふるふると振った。
 一人で行ったら確実に今日は息が詰まってしまう。
 そしたらやっぱり和臣と一緒にしか考えられない。
 ……高校生にもなって一人で風呂入られねぇってどうよ?
 毎度そう思って、情けなくてがっくりしてしまうけど本当なんだから仕方ない。
 今までも何回も我慢して一人で、と思った事もあったけど、やっぱりパニックになって、息止まりそうになって、和臣から余計離れられなくなってさらにひどいことになる。
 それを考えたら今ならまだそこまでひどくはない。
 一人で平気な時は平気なんだからおかしいよな…と頭を抱え込みたくなる。
 「翔太、風呂いくぞ」
 和臣は何も思ってないのか夕食も終わってしばらくしてからそう声をかけてきた。
 ただテレビみてだらだらしてただけの時間が緊張に変わる。
 つうっと翔太は冷や汗が流れそうだった。
 
 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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