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会長様は俺様閣下 43

43   翔太(SHOUTA)



 どうしてずっと同じ物食べて同じ生活してるはずなのにこんなに違うんだろう?
 食べる量だってそんな違わないのに。
 まぁ、和臣のお父さんも身長が高いから遺伝はあるだろうけれど。
 翔太の父親は普通で172センチ位なのに翔太はきっと小さかったお母さんに似たんだ。顔もお母さんにそっくりだし。
 「ちぇっ」
 男としてどうよ?と思うけど。
 「翔太はそのままでいい。可愛いから」 
 可愛いって…。
 和臣がくすりと笑いながら言った言葉に翔太は顔を俯けた。
 可愛いって言われて嬉しくないはずなのに、和臣にだけはそう思われれば嬉しい。そういえば前にも言われたっけ…。
 和臣がいいならいいか、と思えてくるんだから。
 ただ他のヤツに言われたら絶対面白くはないけど。

 それにしても和臣から離れられないこの状況がもう何日も続いている。
 こんなの小さい時以来かも…。
 なんでだ…?
 風呂が一人で大丈夫になってからは一週間に1回もこんな状態になる事なかったのに。
 なんかずっと心の奥底に不安が滞っている感じた。


 ああ…きっとあれだ…。
 和臣のお見合い…。
 あれが翔太を不安にしているんだ。
 でも…なんで?
 そんなの分かってた事だ。
 和臣は一条の後継者でいずれは婚約者、なんて現れるのなんか前から分かっていた事なのに。
 でもそれが考えてただけなのと現実になるのでは違ってくる。
 いらない、出てけって言われたら…。
 いやそれは言われなくても、婚約する事になったなんて言われたら…?
 それなのに和臣は治さなくていいなんて言うんだ。
 
 一人でぐるぐると考え込んでいたらざわりと肌がざわついた。
 「あ、の…和臣……?」
 「うん?」
 うん?じゃなくて!なんで手動いてんだ…!?
 翔太の腹に回っていた和臣の腕がさわりと動いている。
 「手……手、が…」
 「気にするな」
 気にするっつうの!
 さっきまではキスの事で頭がおかしくなりそうだったのがやっと普通になったと思ったのに、また思い出させるように和臣の手が翔太の肌を撫でている。
 そしてこの間風呂場でされた事まで思い出してきてかーっと顔が熱くなってきた。
 「も!いい!あがるっ!」
 ざっと立ち上がって和臣の手を引っ張れば仕方なさそうに和臣も立った。
 なるべく和臣の方を見ないようにしてさっさと身体を拭いて着替えを済ませた。
 和臣がそれ以上何も言わないし何もしないのにほっと安堵する。
 そして服まで着込めばさらに鎧を纏ったかのように安心した。
 
 和臣が胡坐をかいて座ってる横で座布団を枕に翔太は横になって和臣の手を弄びながらテレビを見ていた。
 そういえばゴールデンウィークに出かけるって言ってたけどその後何も和臣は言ってない。
 やっぱ出かけるのやめたのかな…?
 和臣はテレビを見ないで片手で携帯を弄っている。
 メールの着信音がするとメールを返し、また着信音。
 ずっとそれが繰り返されている。
 誰と……?
 お見合いした相手…?
 すごく気になったけれど翔太は気にしてない風を装ってテレビを見ているふりをしていた。
 テレビなんか楽しくない…。
 和臣の大きな手をなでたり摩ったり。 
 ちょっとはこっち向けよな、と思うけど和臣は全然翔太を見なくて携帯をずっと触ってるのに余計に面白くない。


 和臣は相手にしてくれないし、テレビはつまんないしでいつの間にか翔太はとろりと眠くなってきた。
 「翔太」
 「……んっ!?」
 呼ばれてはっと目を開けた。
 あ、眠ってたんだ!と自分で驚いた。
 「眠いのか?」
 「ん~~~…でもないと思ってたんだけど…」
 やっぱりとろりと瞼が重くなってくる。
 翔太がまどろんでいる間に和臣のメールは終わったらしい。携帯を手から離していたのにほっとした。
 あんまり和臣も携帯は弄らない。いつも用事がある時だけだ。


 どういうメールをするんだろう?
 和臣が翔太にメールをくれるときはいつも用件のみだ。
 そして翔太もあまりメールはしない。メールするのは柏木ばっかりだ。
 「ほら、寝るなら向こう行くぞ?」
 「うん…」
 和臣に手を引かれて立ち上がる。
 あぁ、やっぱりこれじゃ子供だ…。
 自分で自分にがっくりくるって情けない。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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