44 翔太(SHOUTA)
布団はここ最近はもう前もって、翔太が一人で寝られないので二つ敷く。
前は急にパニックなった時なんかは和臣の布団に潜り込んだりしてたけど。
和臣に触っていれば安心出来る。
ほんとコレんどうにかしないと…。
やっぱ病院?でも一人で行くのもやだな…と翔太は頭の中で考える。
「か、和臣…?」
横になってかけ布団をかけようとしたら和臣が上に乗っかってきた。
「な、何…?」
和臣は寝巻きで胸元が見える。いや女の子じゃないんだから別に見えたってどうってことないはずなのにそれにどきどきした。
もうここ最近は和臣に対してどきどきしっぱなしで心臓に悪い。
キスされたり触ってこられたり。
一体和臣が何を考えてるんだか分からない。
だって元々和臣は表情が変わらないから。
翔太の上からじっと和臣が翔太を見ている。
なんでキスしたりすんの?
そう聞いても答えは、したいから、でそれ以上の回答はない。
「和臣……?」
じっと動かない和臣に名前を呼んだら和臣の顔が近づいてきて翔太は思わずぎゅっと目を閉じた。
またキスだ!
コイツ欲求不満か?
だからって手近で済ませるな、と思うだけで口は塞がれて開けない。
それに翔太に和臣は拒否出来ない。
和臣がキスしてる。
それだけでおかしくなってきそうになる。
心臓が苦しい。
嬉しいはずなのに泣きたくなってくる。
「やっ!」
和臣の手が翔太のパジャマのズボンにかかったのに思わず声が出た。
「和臣っ!」
手を退けようとしたけれど力で勝てるはずもない。
ずる、とズボンを下げられて唇は和臣の口で塞がれる。
あのサッカー部のやつ等に囲まれた時は恐怖を感じたのに和臣にそれはどうしたって感じない。
だって和臣は助けてくれる人だ。
和臣の肌に触れるのには慣れているはずなのに感じ方が全然違う。
身体全身の感覚がおかしい。
口の中でさえ和臣の舌が動くのにぞわぞわと快感が湧く。
やだ!
これは自分がおかしくなる。
そして和臣の手は翔太の前じゃなくて後ろに伸びてきた。
なんで!?
前もお風呂場でされたけど、あん時は翔太に認識させる名目があったはずで今は何もないのに!
なんで和臣がそんなとこ触るんだ!?
「や……」
「やだ、じゃない」
「やだだよっ!」
「何を言ってる?翔太は俺のものだろう?」
当然の言い方。
「違うっ!」
「……違うのか?」
何故?という和臣の顔に泣きたくなってくる。
なんだよ!ものって!
ものじゃない!
「あっ!」
和臣の指が翔太の中に無理に入ってきたのに身体が跳ねた。
「やだ!やだ!」
「拒絶は許さない」
和臣がむっとしたように声を低くしたのにひくっと翔太は息を飲んだ。
嫌われる?
これを断れば翔太は和臣の中から排除されてしまう…?
和臣の今までを見てきてこんな和臣を見た事はなかった。
いつでも誰にでも冷静で取り乱した所や声を変えたところなんて見た事ない。
それが今明らかに翔太に対して苛立っていた。
翔太は身体の力を抜いた。
和臣から離れるなんて今の自分には無理だ。
「んっ……!」
和臣の指が動くのに翔太は自分の口を押さえ、声を抑える。
や、なんじゃない。
和臣も翔太を欲しいと思ってくれているなら嬉しくて舞い上がってしまう。
でも和臣はただしたいからするだけなんだ。
自分の欲望のはけ口だけ?
でも、それでもいいのかな…?
そしたら離れなくていい?
でもそれじゃ嫌だと心が泣いている。
だって誰よりずっと一緒にいたいほど好きなのに。
和臣が滾った自身を翔太の後ろに当ててきた。
ああ…ヤられるんだ。
でもまぁ、和臣ならいいか…。
そうは思ったけど、だらだらと涙が零れてきた。
「…っく……ひっ……」
泣きしゃっくりまで出てくる。
怖いんでもない。嫌なんでもない。
悲しいだけ…。
それを我慢すればいいんだ。
「……翔太……?」
和臣が戸惑いの声を上げた。
そして何も言わないであてがっていた自分を翔太から離し、身体も退けると翔太のズボンも元に戻した。
…どうして…?
離されれば離されたで不安になる。
やっぱり翔太はいらない…?
和臣は何も言わないで自分の布団に横になった。そして泣きしゃっくりが治まらない翔太の頭をただ撫でていた。
テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学