47 翔太(SHOUTA)
「三浦くんは怖いって言うけど、嫌なんじゃないだろう?」
副会長に言われて小さく翔太は頷いた。
「…嫌じゃないよ……でも和臣、意地悪言ったりするし。好きなの俺ばっかだし」
「は?」
副会長が間抜けな声を上げた。
「………好きでもない相手追いかけてこないと思うけど?」
そんなことない!
「だってアイツ俺様だから。好きもないし。俺のものだ、だけだもん」
「そういう君はちゃんと好きって言った?」
「……言ってない。そんな事言えねぇし!絶対」
そんな事絶対言えるはずない。
「でも好きなんだろ?」
「…そうだけど。きっと和臣はちげぇもん」
「………ちゃんと話をした方がいいね。いい機会だからここでしたら?敦?どう思う?」
「…その方がいい。だいたいこっちが迷惑だ」
「…ごめん」
それは確かにそうだろうから翔太は小さくなる。
「…あの、なんで二宮副会長いるの?…幼馴染、っては柏木に聞いたけど」
「隣ん家だから」
隣?隣の家だと柏木の家にいるのが普通なのか?
「如ん家とウチの両親が一緒に旅行に出かけて俺ら留守番だから」
「ふぅん…」
ああ、家族で皆仲いいんだ。ふぅん…。
「如の部屋と俺の部屋一歩で行き来できる位近いから、いつもわりと一緒にいるし」
「敦、別に余計な事はいいだろ」
「そお?」
「敦、お前ちょっと外見て来いよ?和臣まだか?」
「ああ、じゃ見てくる」
柏木はそういって外に出て行った。なんか柏木と副会長ってこう、なんでもお互い分かっているみたいに見える。
ちょっと羨ましい。
しかし今の問題は和臣がここに向かってるという事だ。
和臣が来る…?
どうしよう…?
怒ってるかな?
翔太は落ち着かなくなってきた。
和臣が柏木の後ろから姿を現したのに翔太はびくっとした。そして柏木の家のリビングに4人で顔を付き合わせる。
「俺達いない方いいんじゃねぇの?」
柏木じゃなくて副会長の声だ。でも言い方がいつもと随分違う。
「だな。如、俺の部屋行こ。三浦、いいか、きちんと話しろ!きちんとだ!」
柏木がじろりと翔太を睨んだ。
「う……はい…」
「和臣。お前も。頭ごなしに物事言わない方がいいと思うけど?だから三浦くんが逃げるんだろ」
「会長、話終わったら声かけてください」
「……分かった」
柏木と和臣が話してるのを翔太は顔を伏せて聞いていた。
そして今度は柏木が和臣にこそこそと何か耳打ちして、その柏木に和臣が頷き、溜息を漏らしている。
「翔太」
溜息を吐かれながら和臣に名前を呼ばれて翔太はびくりと身体を揺らした。
和臣の声は怒ってないみたいだけれど。
ソファに座っていた翔太の隣に和臣が座ってそして翔太を抱きしめてきたのに翔太は固まった。
「お前はこうされるのは嫌なのか?」
「やじゃないっ」
「……朝、お前がいなくてどれだけ俺が焦ったと思っている!?」
焦った…?
翔太はつっと顔を上げて和臣の顔を見た。
あ…。
本当にいつもの冷静な顔じゃない…。
「翔太は俺から逃げるのか?離れるのか?」
「ちが…!」
「だとしても俺は離さないけど」
え?
「お前を繋いででも離してなんかやらない」
「……なんで?」
和臣がそんな事言うなんて考えられない。だって和臣は他人はすぐ切り捨てられるのに。
「なんで?当然だろう。俺はお前しかいらないから」
「え?」
お前しか!?…しか!?
翔太はじっと和臣を見た。
「な、なんで…?」
答えてくれるのだろうか…?
「お前がどう思っていようが知らないが俺はお前を好きだからな。お前が俺を……翔太…?」
翔太は和臣の首に腕を回して抱きついた。
「好きっ!俺も…和臣…っ!」
言っていいの?
「…………は?お前意味間違っているだろう?」
「え?違う、の…?」
翔太は驚いて和臣と顔を付き合わせた。
そしたら和臣が軽くキスしてくる。
「俺のはこういう意味だ」
だからそれのどこが間違っているんだ?
翔太も自分から和臣にちょんとキスする。
「俺もこういう意味で好きだけど…ちげぇの?」
「は?だってお前やだって言うだろう?」
「やだじゃないもん!」
和臣がはぁ、と溜息を吐き出して頭を抱えた。
「意味分からないな…じゃあなんで翔太は柏木の所に逃げてきた?」
じろりと和臣に睨まれた。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学