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会長様は俺様閣下 48

48   翔太(SHOUTA)


 「だって…和臣…俺の物って…俺…キスだってしたいからって…だけで」
 「好きなんだからしたくて当たり前だ」
 え…違くない…?それって…。
 「お前は小さい頃からずっと俺だけのものだ。違うのか?」
 「え…?そうなの…?」
 「そうだ。今までもこれからもずっと」
 これからも…?
 でもだって…。
 翔太は顔を俯けた。
 「翔太。何だ?言ってみろ」
 「……だって、お見合い……したって…篤臣くん、が…」 
 「したけど?」
 したけど!?
 ぶわっと翔太の目に涙が溜まってくる。
 「翔太?」
 和臣が首を傾げた。
 「何故泣く?」
 だって…。
 「言いなさい、と言ってる」
 「だって、そしたら…俺一緒にいらんねぇだろっ」
 「は?何故?お見合いしただけでなんで一緒にいられなくなるんだ?分からないやつだな」
 「だって!和臣、お見合いしたんだろっ」
 「だからしただけだけど?須崎の爺が無理に話をつけてきたからな。たまたま他の件で須崎の力を借りたからとりあえず見合いだけはしたけど、話を受ける気ないのは始めから言ってあったから。それでもいいというからしただけだけど?」
 「……え?」
 涙を落としながら翔太は和臣の顔を見た。
 「……何?もしかして翔太は俺がそんな話を受けたんだと思っていたのか?」
 「だって!和臣が話だけじゃなくて行くから…和臣だったら行く事もしないで断る気なら断るだろ?それ…行ったから…受けるんだって思って…。和臣、何にも言ってくんねぇし…。俺、話もしてもらえないと思って…聞いたのも篤臣くんからだし…」
 「まったく篤臣は余計な事を言ってくれた。でもそれならそうで翔太も俺に聞けばよかっただろう?」
 「聞けるわけないだろっ!」
 「何故?」
 「………だって…和臣に…嫌われたく、ねぇ、もん…」
 「嫌うか!聞くだけで!」
 呆れたように和臣が溜息を吐く。
 「お前な…俺がどれだけ翔太が特別だと思ってる?」
 「……ええと、ちょっと、は」
 「ちょっと!?」
 和臣が眉に皺を寄せた。
 「どこがちょっとだ!俺が寛大なのも世話焼くのもお前だけだぞ?」
 「……寛大~~?」
 どこが!?
 「寛大だろうが!柏木に抱きついても我慢してる!もっとも柏木が全然お前の事を何とも思ってないのを知っているからだが」
 「俺だって柏木なんかなんとも思ってねぇもん!」
 だから、と和臣がまた頭を抱える。
 「本当にお前と話してるとおかしくなってきそうだ…。とりあえず翔太は誰に抱きつくのも禁止だ」
 「…誰に…ってしねぇよ、そんな事」
 「してるだろうが!柏木もそうだし、篤臣にもだ!」
 「…篤臣くんは和臣の弟だし、子供だし」
 「俺の弟だから余計にダメなんだ!お前はバカだな」
 「バカってなんだよ!」
 「バカだからバカって言っているんだ。抱きつきたいなら俺にしとけ」
 「………うん」
 そこは否定する必要もないので頷くと和臣がくっと笑った。
 「俺…抱きついていい…?」
 「当たり前だ。もう他の誰にもするな!」
 「………ん」
 なんだ、そっか…。
 翔太の泣いていた涙はもう止まって代わりに顔が緩んだ。
 「…翔太?じゃあいいんだな?」
 「いい?何が?」
 翔太はきょとんとして首を傾げた。
 「昨日の続きだ。泣いてしゃっくりあげる位翔太は嫌なんだと思ったがそうじゃないんだな?」
 「…や、じゃない…よ」
 昨日の続きって!昨日の夜の事を思い出して翔太が顔を真っ赤にした。
 「よし、じゃ帰るぞ。柏木も二宮もさぞ邪魔に思っただろうよ。まったく…」
 「?」
 ぶつぶつと和臣がこぼしながら柏木に声をかけるのに翔太が首を捻った。
 邪魔は邪魔だろうけどそんなに言わなくてもいいのに、と思わず口を尖らせたくなる。 
 

 和臣と並んで柏木の家のソファに座ってたけど柏木と副会長の前でなんとなく恥ずかしい。
 「迷惑をかけた」
 「………それで?解決したんでしょうね?」
 副会長はさっきと違っていつもの口調に戻ってた。
 「ああ」
 和臣がうっすらと笑っているのに翔太は小さくなる。
 「…親御さんは?」
 和臣が柏木に聞いていた。
 「旅行に行っていない…っす」
 「ふぅん。…それは邪魔して本当に悪かったな」
 和臣が何か含んだ感じで言ってるけどなんだろう?
 「解決したならいいですけどね」
 「…柏木、あの、フクカイチョも…ごめんなさい…」
 翔太は自分が邪魔したのが分かっているので小さくなって頭をぺこんと下げた。
 「ああ、それと赤井沢の事だが三人は自主退学にしたから安心していい」
 和臣がなんでもない事のように告げていたのを翔太はただ聞いていただけだった。 
 


テーマ : BL小説
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