49 翔太(SHOUTA)
そのまま柏木の家を出て和臣が待たせておいた一条の車に乗せられる。
「このままどこかでブランチとってソファを見に行くぞ」
「え?あ、うん…」
「腹へっただろう?」
「うん」
何も食べないで出てきたので勿論お腹はすいている。
「あの…和臣…ごめん、なさい」
「……いい。許す」
やっぱり言い方はエラそう。
まぁ、実際一般普通の人とは違うんだろうけど。
あとは電車で帰るからいい、と和臣は車を帰し、翔太と並んで店の立ち並ぶ通りを歩いた。
「はぐれるなよ?」
「はぐれるかよ!」
馬鹿にしたように和臣が言うのに翔太はつんとして答えれば和臣が笑った。
その顔は学校や他の人がいる時の顔と違う。
これは翔太だけのものだ。
普通にコーヒーショップでブランチ食べてるのがあまりにも和臣に合わなくて笑ってしまう。
今日はさすがに和装じゃないからおかしくもないはずなのにセレブ雰囲気はどうしたって出るから合わないんだ。
でも普通なのが楽しい。
いっつも高級レストランとかホテルとかだったりするから。
なんでそこにいっつも翔太も交ぜられるのかがよく分からないんだけど。
男と女だったらデートだ。
ん…?
これってデート…か?
ちらとコーヒーを口に運ぶ和臣を見る。
周りをよく見れば周りのお姉さんとかが和臣にちらちらと視線を向けている。
あっちもこっちもだ!
背が高くて足組んでのさえも絵になる。
「翔太?食べないのか?」
「た、食べるよっ」
和臣が周りを気にしていた翔太にくすと笑みを浮べた。
うわぁ…!
なんか恥ずかしい…。
これデート?好きって言って好きって言ったんだから…。
そんで昨日の続き…。
身体がかっとして目が回りそうになってくる。
味なんか全然分からないうちにサンドウィッチを平らげて慌ててコーヒーを飲めば噎せる。
「時間あるんだからそんな慌てることないだろ」
和臣はずっと満足そうだ。
そして楽しそうだ。
何してるのでもないのに。
でもそれは翔太も一緒。
翔太は和臣のものだって言われた。ただの物扱いかと思ったけどそれは意味が違った。
…ってことは和臣は翔太のもの?
じっと翔太は和臣を見た。
「…何だ?」
「俺、和臣のもの?」
顔を近づけて翔太が聞くとそうだな、と和臣が当然の様に答えた。
「和臣は俺のもの?」
「ずっとお前のものだろう?」
え?
翔太は目を大きく見開いた。
「今までだって夜は全部お前だけのものだし?」
そうだけど!それってなんか意味合いが微妙だ…。
それは翔太がパニックを起こすからで!
「…治す必要ないから。ずっと一緒にいれば問題ないだろ?」
え?
和臣がこれも何でもない事の様に言った。
それってこれからもずっと夜はいてくれるって事?パニックなりそうになったらずっと一緒にいてくれるって事…?
「な?治す必要なんてないわけだ」
でも…やっぱ、ちょっと…。
そう思うけど和臣はそれで問題ないと本当に思っているらしい。
そりゃ和臣がずっといてくれるなら発作は出ないから問題ないけど。
「でも…」
「治さなくていい」
和臣が終了と言わんばかりに言い切った。
翔太にしたら和臣がいれば何も問題はないけど、和臣にしたら面倒じゃないのかな?とも思う。
だっていつそうなるかも分からないんだから。
今はいいけど仕事とかするようになったら…。
でもそれはまだ先の事だ。
ま、いっか、と翔太は笑った。
和臣がいてくれるならそれでいいや、と。
そのまま店を出て今度は家具屋に向かう。
和臣がああでもないこうでもないと選ぶのに翔太は別にいいのに、と思いながら。
一条の、と分かられた和臣には店の人が揉み手でも見えそうな位丁寧に接客。いつもこうして和臣は一条の名を背負っているんだから大変だ。
翔太だったら安いカウチでいいけど和臣ではそうはいかないんだろうな、と余計な心配をする。
名前があるから下手な安物なんて買えないよなぁ…。
別にいいのに、と思いながら翔太は和臣の傍にいただけだった。
そのまま電車に乗ってもやっぱり和臣には違和感。
そして周りは和臣を知らなくてもやっぱり人目を集める。
だよなぁ。だってどう見たって普通の高校生になんて見えねぇもん。
オーラが俺様だ。
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