51 翔太(SHOUTA)
なんか昨日までは何でキスすんだろうとか思ってたのに、言葉を貰っただけで全然違う。それに和臣の目が優しいし、甘く思えてくる。
柏木と副会長が一緒にいる所を見たときの雰囲気に近づけてるのかな?と翔太はちょっと満足する。
「なぁ、和臣って俺くるまでここに一人でいたの?」
「ん?いや。母屋にいた。ここはもともと祖父さんと祖母さんが隠居して住んでたんだ。相次いで亡くなって、そこに篤臣が生まれて夜泣きがひどくて…。で離れをくれって言ってたんだ。そこに翔太が来たからほぼお前と変わらない位だ」
「そうなんだ…」
そういや全然そういう話聞いた事なかったな、と翔太はなんとなく変な感じがする。
「親忙しいだろ?俺は祖父さん祖母さんと一緒でこっちにいたのが多かったから」
「そうなんだ…?」
「ああ。親父が年取ってからの子だったからかなり二人とも歳いってたけど」
そう話す和臣だけどお祖父さんお祖母さんを好きだったんだろう。思い出している顔が柔らかい。
「さ、翔太くん?風呂いこっか?」
にっこりと和臣がわざわざ<くん>なんかつけてそんな事を言うのに翔太は慌てた。
「あ…俺今日一人で大丈夫」
「ああ!?」
「だって全然怖くねぇもん。平気」
和臣のお見合いも婚約者にまで発展するのかと思っていたのだがそうじゃなかったのが精神的によかったのか、和臣から言葉がもらえたのがよかったのか分からないけれど今までにない位に安心しきっていた。
「だから一人で…」
「…ふざけるなよ?」
「はい?」
「なんで好きだって言ったのに一人?違うだろ?普通は反対だろうが」
だって落ち着かないから。怖いときは仕方ないけどなんでわざわざ二人で風呂入んなきゃないのさ?
そう思ったけど和臣に睨まれて言えなくなってしまう。
「せっかくおおっぴらにイタズラできるのに」
おおっぴらにイタズラって。
「風呂はイタズラするとこじゃねぇだろ!」
「するとこだ!」
ふんとふんぞり返ると翔太の腕を引っ張った。
「行くぞ」
「や…!あ!着替え!」
「寝巻き用意したから大丈夫だ!」
いつの間に?
「寝巻きの方がエロいだろ」
「な、なんで全部話をそっちにもってくんだよぉ!」
「だからそれは男だから当然だろ。エロい方がいいに決まってる」
「和臣エロかったの!?」
「当たり前だ」
それ当然って頷くとこ!?
「さ、行くぞ」
翔太は引きずられるようにして和臣に風呂場に連れて行かれた。
「イタズラなし!」
「ああ?なんで?」
「だって…」
困るに決まってんだろ!
和臣は躊躇なくスパッと服を脱いでいくのに翔太はぐずぐず、のそのそと進まない。
「遅いぞ、先行ってる」
和臣はいつも通り全然普通で恥かしがってる自分の方がおかしいのか?と思えてくる。
確かにいつもパニックになれば裸でくっついてるんだからいつも通りにと思えば何を今更とも思う。
ぱっと翔太も脱いで中に入った。
「手~!」
「だからいいだろ」
「よくないって!」
湯船に入るとパニックおこしてるわけでもないのに翔太を後ろからだっこしてきた。
パニックになってなくても和臣にこうされていればやっぱり安心する。
手がさわさわと動こうとするのを止める。
「動かさないでよ…俺、和臣にこうしてもらうの好きなのに…」
手動かされたらそれどこじゃなくなってしまう。
「………なら仕方ない。こうするだけにしよう」
和臣が溜息を吐き出しながら手を動かすのをやめて腹を抱きしめるだけにしたのにえ?と翔太はちょっと驚いた。
絶対翔太のいう事なんて聞いてくれないと思ったのに。
不思議そうに和臣を振り向いて見たら和臣がちょっと複雑な顔をしていた。
「…お前はこうされてるのが好きなんだろ?」
ぎゅっと抱きしめて耳元に囁かれたのにこくんと翔太が頷いた。
ああ、翔太が好きって言ったから…?
「うん…好き……」
「…………その代わり上がったらみてろよ…?」
和臣が声を低くしてさらに翔太の項にキスしてきてひっ!と声が出そうになった。
それはそれで、どうしよう…と思わず冷や汗が出てきそうになった。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学