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熱視線 狂詩曲~ラプソディ~5

 とにかく時間が過ぎるのが遅すぎる、と明羅は思う。
 電話来たのが火曜日。昨日、今日をどうにか一日過ごして、やっと木曜日の夜だ。
 明日になれば怜さんと会える。
 時計を見ても見ても時間が過ぎない。
 明羅はピアノを毎日練習していた。
 だってピアノを練習するといつも時間があっという間に過ぎるのだ。
 それなのに、昨日、今日は全然時間が過ぎなくて時計が壊れているんじゃないかと思った位だ。
 ベッドに入って、眠れば明日になる。そしたら怜さんに会える。
 でも声が聞きたくて携帯を握り締めた。

 明日、本当に大丈夫?って電話してもいい、かな…?
 ダメじゃないから、いいから、きっと怜さんは何も言ってこないんだろうけど。
 声を聞きたいって言ったら絶対引くよね…。でも聞きたい。
 携帯の怜の番号を表示させじっと睨めていたら携帯が鳴った。
 「わわっ」
 怜さんだ!
 明羅は慌てた。
 「は、はいっ」
 『…何そんなに慌ててる?』
 呆れたような声。だけど怜さんだ。
 「う、…えと…怜さん、に電話、しよう、かな、と思ってたら…かかってきた、から…びっくり、して」
 『そうか?』
 「う、うん…」
 『別にいつでもかけてきていいぞ?ああ、電話くれってメール入れてよこせばこっちからかける』
 いいの、かな…?
 「…でも、怜さんの邪魔したら…」
 『お前が邪魔ってことはないから大丈夫だ』
 うわっ、と明羅は顔が熱くなった。
 そんな事言われたら頭に乗っちゃいそうだ。
 『ばか。遠慮なんてすんな』
 ぎゅっと心臓が苦しくなる。そしたら、会いたいって言ってもいい?
 …でもやっぱり言えなくて。
 「明日」
 『おう。スタバな?』
 「…うん」
 嬉しい。会える。
 明日になったら会えるんだ。



 授業が終わるのを待ってもう、大急ぎで教科書を詰めた。
 時間が長い、長すぎる!
 歩く足さえイライラしそうだった。
 怜さんのように長い足だったらもっと早く歩けるのだろうか?
 気持ちが浮き足立って携帯を片手に学校の階段を足早に下りていく。
 時間は3時20分。
 もう来てるだろうか?
 今行く、ってメールしようか?
 いや、メールするより早く会いたい。
 それなのに。

 「桐生」
 …また出た。
 急いで上履きから靴に替えていたら二階堂 宗が現れた。
 「何?俺急いでるんだけど」
 なんで怜さんに会えてないのに二階堂 宗とは毎日会うのか。
 「用事?」
 宗は明羅が気が急いているのを分かったらしいが、明羅はそれに答える必要がないから答えないで、急いで靴に履き変え外に出る。
 いつもだったらついてこないのに、二階堂 宗がついてきた。
 「何?急いでるなら送ってくか?」
 「いらない」
 歩く明羅に並んで宗が歩いた。
 一体何なのか!

 明羅は急いでいた足を止めた。
 「一体何?邪魔なんだけど」
 「別に邪魔してないけど?駅に向かってるだけだ」
 じゃあ勝手にしろ。
 明羅は今日は駅の裏手だ。
 駅の中を横切っていくとやっぱり宗がついてきた。
 「ホームはあっちだろ!」
 怜とはあまり仲良くなさそうだったから怜を煩わせたくないのに。
 怜も宗がいて煩そうだからってわざわざ駅裏にしたのに、なんでついてくるんだ。

 どうしよう…。
 明羅が歩けばついてくるし、止まれば止まる。
 どうしよう。
 その時電話が鳴った。
 「もしもし…」
 困った声で出た。相手は勿論怜さんだ。
 『今どこ?』
 「もう店のすぐ前、なんだけど…」
 いらないのがくっ付いている、という前に電話が切れた。
 明羅の目に見えていたスタバの入り口から怜が出てきた。

 「れ…」 
 いさんっ!って思い切り大きく声を上げそうになって思わず口を止める。
 怜さんだ!
 「明羅」
 ぱたぱたと明羅は走って怜の前に向かった。宗がいた事は怜の姿の前に綺麗に忘れていた。
 「おう、行くぞ」
 怜が明羅を確認して声をかけてきた。
 怜さんは宗の存在に気付いてないのかな?
 いや、まさかね…。だって明羅のすぐ脇に立っていた、はず。

 「…ったく。んな事じゃないかと思った」
 怜が明羅の頭をぐしゃっと搔き混ぜた。
 「え?」
 「余計なの引っ付けて」
 …やっぱり気付いてたらしい。
 「だったら素直に学校前まで行ってりゃよかった」
 怜が歩く出すのに明羅もついていく。さすがにその後は宗はついてこなかった。
 
 

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