60 和臣(KAZUOMI)
「なんで居場所分かったんだ?」
「ん?ああ。学校のやつ等が何人か来ていると言っただろう?翔太を見ているように頼んでおいたから」
「へ?」
「お前は一人だと本当に危なっかしい。今度SPでもつけるか」
「何言ってんの?」
「本気だ。俺は自分でどうにか出来るけどお前は運動神経もないし逃げるのだってままならないだろう」
「……ないってほどじゃねぇよ!」
翔太がむうっという顔をする。
「何でも人より出来る和臣と比べたら当たり前だろ!」
「だから心配だと言ってるだけだ。……本当にお前がパニックになっている時は焦るんだ」
「……ごめん」
ごめんといいながらその目が和臣の所為だろと訴えている。勿論分かっているとも。
「だからちゃんといつでも助けてやってるだろ?」
「…ん」
そう言えば満足なのかぺたりと身体を寄せてくるのに和臣も満足する。 だが翔太の顔が曇ってくる。また何を考えているんだか…。
「…何を考えている?」
「…いいのかなって…。だってあの…あそこにいたのがお見合いの相手でしょ?」
「いいのかな?何が?お見合い?」
翔太は何が言いたいんだ?
「うん…ほら…お似合いかなぁって……」
ああ、と頷いた。つり合わないとか、似合わない自分が、って思っているわけだ?
「見た目ならな。あれなんかこれっぽっちも俺なんか見てないし。いや、外見と家には惚れてるんだろうけど」
翔太が不思議そうな顔をする。
「…普通は皆そうだ。俺は俺じゃなくて一条の名前が先に来るから」
「?」
「まったくお前は予想しない事を言う。だから面白いけど。でもちょっと面白くはないな」
「うん~?」
何を言い出すのかと思えばまったく。
「お前は面白いけど俺にしたらいらないって言われているようだから面白くないと言うんだ」
「そんな事言ってねぇし!だって和臣いないと俺死にそうになっちゃうし…」
和臣がいなければ死にそう?どれだけ熱烈な告白か、と思うところだが、実際怖い思いでパニックを起こせばそのような感じになるから複雑なところだ。
そしてまた翔太が何か考えている。
その考えが突拍子もなくていつも笑いたくなるんだが。
「ね……俺、和臣の特別?」
「は?今更の事何言ってるんだ?」
今?そこを聞く?
まったく呆れる。
「ん…ちょっとは、ほら、特別かな、って思ってはいたけど。前も聞いたけど…」
照れながら言うところは可愛いけどそうじゃないだろう、と頭を抱えたくなる。
「ちょっとどころじゃないけど?全然翔太は分かってないんだ?」
「ちがっ!分かって…っけど…だって、和臣は一条の後継者だし…」
まぁ、それは当然だ。翔太の言いたい事も本当は和臣も分かっている。
自分が翔太の為だけに動いているというのが自分でも信じられないという所はあるから。
「頭いいし、運動も出来るし、俺様でも、でもかっこいいし…それなのにその…俺ってどうなの…かなって…」
「……さんざん柏木に意地悪だ、優しくないって言いまくっていたのにそれでも翔太は俺がいいんだ?かっこいいって思うんだ?」
「かっこいい!…よ。……意地悪で、優しくない…のもホントはちげぇもん…いや、ホントだけど!あん時は…俺は好きなのに和臣が俺の事物みたいに言うから…」
「物だなんて思った事なんかないな。物の方がよっぽど楽だ」
「ひでぇ…」
「翔太がいいんだから、仕方ないな。……ふぅん、かっこいいんだ?」
「ん…」
そんな風に思っていたなんて全然知らなかった。容姿の事も何も翔太が言った事なかったから。そう言われれば悪い気はしない。
「着物姿が好きなんだよな?ここ最近は着ていなかったから明日は着物にするか」
「……え?………聞こえてた、の?」
「ん?ああ、勿論。翔太の期待に添わないといけないからな。俺はお前の寝巻き姿がエロくて好きだけど?」
「そ!そんなのは違うっ!」
今も着せてるのは寝巻きだ。すっと胸元に手を入れればすぐにはだけるところがイイ。
「か、ずおみ…?」
「ん?」
「今、さっき、した…ばっかだけど?」
「それが?」
さわりと翔太の肌に直に触れると翔太の声が上ずる。
「仕方ないな。可愛い事ばかり言うから。期待に添わなきゃいけないだろ」
「だ、誰も何も言ってねぇ」
「気にするな」
「気にするって!……っ」
そんな事言ってもいつも最後には和臣のしたいように翔太はさせるんだから本当に翔太がいれば和臣はいつでも機嫌がよくなってしまう。
テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学