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熱視線 狂詩曲~ラプソディ~6

 うわぁ、怜さんだ。
 明羅は怜の車にいそいそと乗り込んだ。車に仄かに怜のフレグランスの香りがするのにどきどきする。
 怜さんがエンジンをかけてハンドルに手をかけたまま明羅を見ていた。
 「制服姿始めて見た。…本当に高校生か…」
 はぁ、と怜が溜息を吐き出すのに首を捻った。
 「しかし…変な感じだ。夏休み中はずっといたのにいなくて」
 寂しいと少しは怜さんも思ってくれたのだろうか?
 だとしたら嬉しいんだけど。
 「…うん」
 どうしよう、怜さんにくっ付きたいけど…。でも出来るはずない。
 「…うちでいいか?」
 「…うん」
 怜も頷き、車が静かに出た。
 どうしよう……。もうずっと心臓が煩すぎる。
 怜さんが隣にいる。
 緊張して怜さんの顔が見れない。

 「明羅?聞いてる?」
 「え?」
 「…なんだ?聞いてないのか?」
 思わずぱっと顔を怜に向けたら怜が明羅を見ていた。
 「宗の事。何アレ」
 「え?ああ…」
 すっかり忘れてた。思わず明羅の眉間に皺が寄った。
 「よく分かんない。なんか知らないけど学校始まった日の朝に声かけてきて…。それからなんか…毎日声かけてくる」
 怜も難しい顔になって考え込んでいた。
 そしてちらと明羅を見た。
 「?」
 なに?と首を傾げる。
 「いや…」
 ふっと怜が笑った。
 明羅はどうにも落ち着かない。気持ちがふわふわしてる。
 「…今週、すごい時間過ぎるの遅くて嫌になった」
 思わず明羅が言うと怜がまた表情を緩めた。
 そして明羅の頭を撫でてくれる。
 小さい子供じゃないんだけど、と思いながらも怜にそれをされれば思わずもっとと委ねたくなってしまう。


 「お邪魔します…」
 そっと怜の後ろから家に入る。
 たった3、4日ぶりなのになんとなく落ち着かない。 
 「まず制服脱いで来い」
 「…うん」
 着替えも置いてあるから全然大丈夫だ。
 どうしよう。嬉しくて顔がにやける。
 着替えを終えてリビングに行くと怜さんはソファに座って明羅の楽譜を眺めていた。

 その隣に明羅も座った。
 くっ付きたくて近めに座る。
 「なんだ?甘ったれか?」
 いいのかな?明羅が伺うように見るとくっと怜が笑う。笑われたって全然平気だ。
 「俺の楽譜?」
 「そ」
 ソナタじゃなくて後から作った小曲を何曲かの方、だった。
 「家で曲作ってたのか?」
 明羅は頭を振った。
 「全然」
 「そうなのか?」
 「ん…だって、怜さんの音ないから…」
 「…弾くか?」
 明羅は首を振った。今はピアノよりも怜さんの隣にいたい。
 自然にそう思えた事に自分でも驚いた。
 「今はいい…」
 だってずっと会いたかった。
 「なんか毎日会うのはいらない二階堂 宗ばっかりで」
 ぷっと怜が噴き出した。
 「いらないって」
 「だってわけ分かんないんだもん。今日もやっと授業終わって急いで怜さんの所行こうと思ったらついてくるし」
 「…今度は学校まで迎えに行ってやる」
 今度があるんだ、と明羅は嬉しくて頷いた。
 「そうだ、明日生方がくるから」
 「そ、なの?」
 「そう」
 怜がにやっと笑った。

 「え?何?」
 「内緒」
 「何?何?何が内緒なの?」
 なんかあるらしい。
 「明日な。楽しみにしてろ」
 「え?……楽しみな事?」
 「…まぁ、な」
 なんだろう?

 「曲の題名付けするぞ」
 「え?」
 怜さんが持っていた楽譜をテーブルに置いた。
 「………俺がつけたら変になるよ」
 「分かってる。だから一緒に考えてやるんだろ」
 「分かってる、だって」
 明羅はむっと口を結んだ。
 「あれをハッピバースデイなんていうヤツが信じられるか」
 「ひど」
 「ひどいのはお前のネーミングセンスだ。ほら、1曲目はロマンスでいいだろ?はい次」
 「え~~…なに、かなぁ」
 「おま、考える気ないな?」
 「……1番、2番とか」
 ごつっと怜の拳骨が明羅の頭を叩いた。
 「ロマン系が1番、2番~~?色気がないっ」
 明羅は小さくなった。
 「ふざけるなよ?」
 だって、考えられない…。
 「じゃ、イメージ言ってけ」
 「ええと…コレは怜さんの音が甘くて…」
 「…甘い?」
 「そう。もうすっごい甘かったからそのイメージ」
 怜さんが困ったようにして黙ってしまった。
 
 

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