「う~ん…どう言ったらいいかなぁ……」
そう言いながら莉央の手がさらに綾世の肌を撫でていく。
「ぁっ…」
声が思わず漏れてしまって慌てて綾世は口を押さえた。
「声抑えなくていいすよ?」
ふるふると綾世は首を振った。
「や、め…ろ……」
「無理ですね」
にっこりと莉央が綾世を見て笑みを浮べたと思ったらそのままベッドに綾世を横たえて上から身体を押さえつけてくる。
そしてじっと綾世を見るのに綾世は莉央を睨んだ。
「簡単な事、なんですけど…でも綾世さんはなんか事情ありそうだし、簡単そうじゃないんですよね…」
「なん、の事、だ……?」
「綾世さんの心の事。でも…俺の事嫌いじゃない、ですよね?」
自信たっぷりに言う莉央を綾世はぎっと睨んだ。
「そんな顔したってダメです。本当は綾世さんの心が開くの待ちたいのも山々なんですけど…。待ってるだけじゃダメかなぁ、という気もするんで…。だって綾世さん頑なだし」
「頑な…?」
「ええ。自分に歯止め利かせようと足掻いてる、でしょ?」
「何を分かった風に…っ!」
「うん。すみません。勝手にそう思ってるだけですけど。でも間違ってない、とも思いますけど…?」
綾世は思わずふっと莉央から視線を逸らせてしまった。
「今、彼氏いないって本当ですか?」
「……いない」
いると思われるのも心外で思わず答えてしまう。そしてはっとした。
「あ!いや、いるっ!からやめろっ!」
「……見え透いた嘘はダメです」
莉央がくすりと笑った。
「心は待ちます。でもオトナですから、身体先にいただいてもいいですか?」
「ダメだっ!」
「聞こえません」
だったら聞くなっ!
思わず叫びたくなる。
「…綾世さん…」
莉央の手が綾世の頬を覆った。
そして近づいてくる顔。
あ……。
ぎゅっと心臓が掴まれた気がした。
キスが優しい。
今まで一人しか知らなかった。
けれど、全然違う。
思わず綾世は莉央の背に腕を伸ばした。
縋りたい。
莉央は料理も優しい。腕の中も。言葉も。キスも。
「ぁ……や……」
やめろ…。これじゃ自分がダメになってしまう。
やめろ、と思いながら綾世の腕は莉央の服を掴んでいた。
啄ばむようなキスを繰り返し、そして莉央の舌がそっと歯列を割って綾世の口腔に入ってくる。
「ふ……」
「…やば、い……綾世さん…」
「あっ!」
ぐっと莉央が腰を綾世に擦りつけてくる。
莉央のそこはすでに大きく怒張しているらしい。それを感じて綾世の身体がさらに疼いてしまう。
でも莉央は彼女と住むはずだった、と言った。男を好きなんじゃないはず。
「やめ……」
「だから無理です。綾世さん」
莉央が綾世の耳たぶを食みながら綾世の耳元に囁いた。その欲を孕んだ掠れた声にまた身体がぞくぞくと粟立つ。
だめだ…。感じすぎている。久しぶりだからか…?
もうすでに身体は待ち構えている。
莉央の手が頬から鎖骨を辿り膨らみのない胸の突起に触れるとびくんと身体が反応してしまう。
「…感じやすいんですね…?」
やめろ…。
「すみません…男抱くの初めてなんで…嫌なとこあったら言って下さい」
言うもんか…!
綾世は自分の口を手の甲で押さえ声が出ないようにと噛んだ。
「綾世さん…ダメです」
すぐに莉央はそれに気付いて手を離された。
「手こっち」
莉央の首に回されて思わずしがみついた。
だめだって分かっているのに。
離せなくなってしまうじゃないか。そしてまた傷つくのか?
嫌だ。
綾世はふるふると頭を何回も振った。
「大丈夫です。だって一緒に虹見たでしょ?」
「え…?」
思わず綾世は目を見開いて莉央を見た。
「きっと、特別…です。店の名前も虹。それで虹見たんだから…」
綾世にとっては確実に特別な事だ。
でも莉央もそう、思っていた…?
「あっ!」
莉央の指が綾世のすでに身体は待ち構えていると主張する勃ちあがったものに触れてきた。
「感じてるんですね…?嬉しいです…」
すでにかけられていたタオルはどこかに消えている。そして感じているのがダイレクトに分かる自分のそれは鎌首を期待に擡げていた。
「あ…あ……っ!」
感じてしまう。
莉央の指が後ろに這ってくると自分の中にゆっくり侵入させてくる。
莉央の指が…自分の中に埋まり、そして蠢いている。
嘘だ。夢だ。きっと。
テーマ : BL小説
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