贅沢な時間だ、と思う。
何もしないでテレビ見てゆっくり、なんて。
なんか今までずっとこんな時間はなかった気がする。
ふわ、と思わず綾世が欠伸を漏らすと莉央が笑った。
「寝ますか?」
「いや、まだいいけど?」
「…寝ましょう?」
にっこりと莉央が笑みを浮べる。
「………いや、まだ眠くないから」
ヤバイ!
「……じゃ、ココで?」
「な!何!が!?」
「やだなぁ…。決まってるでしょう?」
「決まってない!」
さ、行きましょ、と莉央はさっさとテレビも消して電気も消して綾世の手を引いて寝室まで引っ張っていく。
「綾世さんのアパートにチェストありましたよね?あれ運びますか?それとも新しいの買いますか?」
「いいよ…」
「いいよ、って?どっちです?」
「どっちも…しない…」
「だって着替え、袋に入ったままって…。俺のクローゼット避けますか?いや、あっちの部屋にもクローゼットついてたか?ああ、部屋使ってなかったから忘れてたけどついてたな。使っていいですから。でも引き出しとかはいるよな」
「いいから!」
なんとなくいたたまれない。
すると莉央がくすくすと笑っている。
「なんでこんな事で照れるかな?」
「照れてない!」
恥ずかしいだけだ。
寝室の電気をつけ莉央に引っ張られるとベッドに横にさせられる。
そして莉央が綾世の上にかぶさってきた。
「……嫌、ですか?」
そんな風に聞くのはずるい。
する、と莉央の手が綾世の服の中に入り込んでくる。素肌を撫でられれば肌がざわついた。
「っ!」
びくんと身体が跳ねてしまう。
「綾世さん…」
莉央の声が艶っぽいのに背筋がぞくっと戦慄く。
逃げられない。
だって綾世に逃げる気もないから。
待っているんだ。自分は。
「莉、央…」
助けて…。どうしたらいい?
この手を取って、この手がある時はいい。
でももしなくなったら…?
いや、ヤツとの関係と莉央は全然違う。
莉央だったら…。
でもそれが消えたらきっと自分は耐えられないかもしれない。
「……怖い、んだ…」
「……何がですか?」
「…………」
ふいと綾世は莉央から顔を背けた。
「俺が、…じゃないですよね?」
違う、と綾世は首を横に振った。
「…色々あったんだ…」
莉央は手の動きを止めた。
「うん…でしょうね…。綾世さんいっつも辛そうだったから。無理してる感じで。そんな無理することないのに…とか、俺が守ってやりたいなぁ、とか甘えさしてやりたいなぁ、とか頼ってくんねぇかな、とか思ってましたもん。…初めてですよ?こんなん思ったの。だからぐいぐい押したんたんですけど」
莉央がそう言って綾世に軽くキスした。
「キス、してもしても足らないです…。なんで?俺自分でそこまでがっついてねぇし淡白かな、って思ってたんすけど…綾世さん相手だと欲しくて欲しくて…。昨日も一昨日も必死に我慢しましたけど。今日は我慢出来そうにない…。でも綾世さんが嫌なら…」
嫌なんじゃない…。
綾世は首を横に振る。
だって本当は待っているんだ。
もう身体は莉央に触れられるのに期待して震えている。
「うん…嫌じゃない、んだよね?」
「莉央…」
莉央がキスするのに綾世はおずおずと腕を莉央の首に回した。
分かってるくせに…。
「分かってますよ。だって綾世さんすっげ感じてるもん…」
意地悪だ。
クスと莉央が笑う。
「前も言ったけど、話すのに時間はこれからいっぱいあります。少しずつ分かっていきましょ?とりあえず過去の綾世さんに何あったとしても関係ないです。先週の初めて会った虹の時からの綾世さんが俺の綾世さんですから…。違いますか…?」
「……違わない。あれから……あの時から……僕は変わった、から…」
「うん。…よかった。………俺の綾世さんでいいんだ?」
「え?あ…ちが……まだ……」
「まだ?」
「……まだ……だ」
「往生際が悪いですね?ま、いいですけど。まだ、って事はそうなる予定って事でしょうから」
莉央が何回もキスを落としながら綾世の服を脱がしていく。
「莉央…」
「今日は逃しませんよ?いっぱい甘えていいですから。べたべたに…」
そんな事した事ないから分からないけれど…。
いいのか?と思いつつ莉央の首にぎゅっとしがみついた。
「…やること初心で、身体がエロって……ほんとヤバいですよ…」
莉央が深いキスを仕掛けてきながらそう呟いた。
テーマ : 自作BL小説
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