莉央が休みの土曜日は必要な荷物を運んだり、廃棄したりして、綾世のアパートを解約した。
いいのだろうかと思いながらも莉央に甘えてしまう。
莉央が会社からワゴンを借りてきてくれた車から何往復もしてマンションの空いている部屋に荷物を運んだ。
でも綾世が自分でも本当に驚くほど物は少なかった。
「あと片付けは綾世さんゆっくりすればいいですよ」
「ん……」
莉央が満足そうに言ってるのが照れくさい。
さすがにちょっと疲れて二人でソファに座っていたけど、綾世はいいのかな?と思いながらも莉央に寄りかかるように身体を倒した。
触れていたい、なんて思うのも初めてだった。
アイツには触れるのが恐かった。
甘えたいとも思った事もなかった。こうして何でもない時間を過ごすなんて考えた事もなかった。
「…疲れましたか?綾世さんずっと忙しいから」
「いや…そうじゃない……」
照れくさくなって顔を背けるけれど、莉央は綾世の顔を見て微笑を浮べる。
そして莉央が肩をぐっと抱き寄せた。
「あ~!もう!なんで可愛いことするかな…ほんとにもう…」
そう言いながら莉央が軽くキスした。
「……ホント…俺、自分が信じられないすよ?一人の方楽だったんだけどなぁ…?」
「うん…僕もそうだった。……でも一人じゃもう…」
「……綾世さん」
「ん?」
莉央が手を差し出してきたのでそれに手を乗せた。
するとぐいと引っ張られてソファから立たせられる。
「?」
そのまま手を引かれるのに黙ってついて行くと寝室の方につれていかれた。
「どうかしたか?」
「…どうかしたじゃないです。あともう今日は綾世さん動かなくていいので」
にっこりと莉央が笑みを浮べながら綾世をベッドに誘った。
「ちょ…いや、それは…」
「無理で~す」
莉央が綾世の服に手をかけてくる。
「だ…て…まだ……」
外が明るい!
でも綾世は恥かしいけれど拒む気なんて毛頭ないのだ。自分だって莉央と触れたいと思っているんだから…。
そしてこんな自分でも莉央は欲しいと思ってくれている。
そう思えば莉央のなすがままにされてしまう。
朝の光が指す中ゆっくりと綾世が目を覚ました。
ぼうっとしていたけれど、身体に重さを感じる。
はっとしたら莉央がまだ隣に寝ていた。
いつも目覚めはぼうっとしている綾世の目がぱっちりと覚めた。
土曜で昨日も莉央は休みだったけれど莉央は会社に車を借りに行くと早く起きていたので、莉央の寝顔を見るのが綾世は初めてだった。
それだけで嬉しい。
莉央は毎日早起きできっと寝足りないはず。
綾世は起きようかと思ったけれど莉央の腕が自分の身体に巻きついているのに、動いたら莉央が起きてしまいそうで動かないでじっとした。
面映い。
じっと莉央の眠っている顔を見つめた。
莉央の腕はいつも自分にかかっていて、それに安心をおぼえてしまう。
こんな事もしてもいいのか?と思いつつ、すりと莉央の首元に頭を近づけた。
そしてそっと触れるか触れないか位のキスをしてみる。
自分からなんて初めてだ。
……いい年して初めてが多すぎるだろ。
思わず綾世は眉間に皺を寄せた。これじゃ確かに莉央に馬鹿にされても仕方ない。
「……なんだ一回だけですか?」
「え?」
くすくすと笑いながら莉央が目を開けた。
「………綾世さん、なんですか、その顔?なんでそんな難しい顔?眉間に皺よってますよ?」
「……起きてた、のか?」
「いいえ?キスで起きました。もっとしてくんないかなと待ってたんですけど」
「…………」
そんな事を言われても綾世はどうしたらいいか分からなくなってしまう。
「綾世さん」
莉央が綾世の上に身体を移動させて朝から濃厚なキスをされると、思わずすぐに息があがってしまう…。
「ダメだ!莉央…無理っ!」
身体が悲鳴を上げている。
昨日は陽が高いうちから莉央にされて、夜もまたされて…。
身体が重い。後ろも違和感がある。
「……分かってますよ~。我慢します」
我慢って…。かっと綾世は顔が熱くなる。
莉央が我慢する位なら自分が無理した方がいいのか…?
だってそんな自分は勿体ぶる位じゃない。
「莉央が…」
「綾世さん。無理はなしです」
綾世の言葉に莉央が声を被せて怒ったように言った。
「無理はしないで下さい。無理したら続きませんから。いいですね?」
「………ん」
莉央は綾世が言おうとしていた事も気持ちも全部分かっている。
それに綾世は泣きたくなってきた。
いつでも莉央は綾世の事を考えてくれる。
「莉央、は無理…してない……のか?」
「全然。好きなようにしちゃってるでしょ?綾世さん乗り気じゃなくてもイタしちゃうし」
そんな事はない…んだけど…。
「うん。分かってますよ?本気で嫌がってたらしませんから」
なんか莉央にいいように分かられている。いいのか、悪いのか…。
恥ずかしすぎる。
手にとられるように莉央に分かられてるのに綾世はいたたまれなくて布団の中に顔を隠すと莉央はくすくすと笑いながら布団ごと綾世を抱きしめてくれた。
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