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熱視線 間奏5~怜視点~

 「忘れ物ないな?」
 「今言われても…」
 確かに。もう明羅の家の前だった。
 「宗の事は何でもいい、何かあったらすぐ連絡よこせ」
 「…うん」
 宗の目的はイマイチ分からない。宗はなんでも怜のする事が気に食わないらしいが、怜自身は別に宗の事は何とも思っていない。ただ、その対象が明羅に向くのには正直心配で仕方ない。
 明羅もぐずぐずして車から降りないのに怜の口端は緩む。
 「いつでも来ていい。明日でもいいぞ?」
 「……ん」
 明羅が小さく頷いた。
 「本当は帰したくないけどな…」
 「え!」
 思わず怜が呟くと明羅が驚いた表情で怜を見た。
 その目がでかくてぷっと笑う。
 「来る時はちゃんと学校の用意してから来いよ?」
 「だから小学生じゃないから」
 茶化して言えば明羅はむっと口を引き結ぶ。
 そしてゆっくりと、のろのろと明羅が車を降りた。もう夜で車の通りも少ないから危なくはない。
 「門入るまで見てるから」
 明羅がなんかもじもじとして、なかなか車から離れない。
 顔を俯けているのにどうした?と聞こうとしたらぱっと明羅は顔を上げ、窓の外からまっすぐ怜を見た。
 「うん…怜さん……好き、だよ…」
 「っ!」
 「じゃっ」
 ぱたぱたと顔を真っ赤にして明羅は開けてもらった門の中に入っていってしまった。
 やられた…。
 怜はハンドルに突っ伏した。
 はぁ、と派手な溜息をつく。
 そうくるのか……。まったく明羅は怜が必死に隠そう、取り繕おうとしている壁をあっさりぶち抜いていく。

 思わず笑いがこみ上げてきた。
 そしてハザードを消して車を静かに出した。

 可愛すぎるだろ。
 17の男があれってありか?
 自分が高校の頃を思い出しても誰も明羅みたいなのはいない。

 朝、思わず手を出していた。
 我慢に我慢をしてたのに。
 夏の毎日無防備に寝る姿にやばかったのを我慢してたのに。
 一週間が長いと言った明羅に同感だ。
 今まで一ヶ月あった気配がなくなってしんとした家に怜も困惑した。
 それが普通で、それでよかったはずだったのに。
 それが嬉しそうにやってきて、また無防備なのに手が出ていた。

 いつでも来ていい、なんて違うだろ。
 毎日学校まで迎えに行ってしまおうか。
 
 だめだ。
 きっと今度明羅が来たらもう自分を止める事は出来ないだろうと確信がよぎる。
 明羅がイく時の声もやばかった。そのまま暴走しそうになるのを必死に抑えて。
 もうどこもかしこも可愛すぎるのがいけない。
 おまけにさっきの可愛い告白に卑怯な自分が恥かしくなる。
 怜はわざと明羅に言葉を言っていなかった。言ったら最後閉じ込めておきたくなる。離せなくなる。
 だからキスもしなかったしずっと我慢してきたのに。
 明羅はそれを全部剥がしていってしまう。
 朝の可愛い反応もその後の態度も、全部が怜をぐだぐだにしてしまう。
 甘えてくるのが可愛くて。
 反応が可愛くて。
 「……終わってる」
 自分で頭を抱えた。

 それなのにあの曲。
 弾き込めば弾き込むほど深みが増してくる。
 想像力が搔きたてられ、いろいろ表現を変えてみたくなる。
 怜の自由に。
 あの才能が怖い、と思った。
 そしてこのままではだめだ、と思った。
 だからCDとコンサートを決めたのだ。
 誰の為ではない。明羅のためだ。
 いや、自分の弾くあれも聴いてほしかったのかもしれない。
 あれはどうなっていくのだろうか…?
 そして自分は…?
 今まで動く気などなかったのに明羅の存在が出来ただけでこんなにも変わるのか。

 それも恐かった。
 だがそれ以上に明羅が欲しい。
 明羅を分かるのは自分だけだ。
 そして自分を知っているのも明羅だけだ。
 そうでなくてはあの曲は弾けない。

 ハッピバースデイ…。
 怜は何度もそれを思い出して笑いが漏れる。
 「ありえねぇ、タイトル」
 あげくに小曲のほうは番号でいいだなんて。
 そういえば音が甘かった、と明羅が言っていた事を思い出した。
 きっと明羅の存在がそうさせたんだ。
 今なら満足いく<愛の夢が>弾けそうな気がする。
 今度明羅が来た時に聴かせてみようか。
 明羅の事を思いながら弾けば多分明羅の言っていた愛が足りない部分は十分に補えるはずだ。
 そうしよう。
 怜は口角が綻んだ。

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