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2012.08.26(日)
明日も来ていいって怜さんは言ってくれたけど、覚悟とも言ってたわけで、明羅は大人しく家に帰る事にする。
「今日は行かないんだ?」
「……一体何?…ストーカー?」
明羅は呆れて宗を見た。
その明羅の視線と言葉に宗はいや、と口ごもる。
「兄貴とは…恋人同士なのか?」
「はっ?」
明羅は目を見開いた。
「………だから、言う必要ないと思うけど?」
「そうだな…」
困ったように宗が言う。
周りには青桜の生徒が多数だ。だがホームに明羅と宗が並んでいる周りには人が遠巻きにして誰もいない。
「…はっきりいって迷惑なんだけど」
いや、はっきり言わなくても迷惑だ。
だがそれに宗は答えなくて。
「車なんでしょ?なんでホーム?」
「いや、今日は車返したから」
「何?うちまでついてくる気?」
宗が鼻白む。
最悪。
明羅はホームに入ってきた電車に乗った。宗も乗ってくる。
怜さんにメールでもしようか…?
でも別に何されているわけでもないし。
明羅は二つ先の大きな駅で降りることにした。
前に怜とデパートに来て宗と会った駅だ。
「どこ行くんだ?」
「だから言う必要ないでしょ」
やっぱり宗がついてきた。
まるで明羅が宗を従えているように明羅の後ろを宗が歩いている。
もう諦めて明羅は無視することにする。
本屋さんでも行こうかな。
時間つぶしにはいいだろう。
人通りも車の通りも多い。
車道の前方をふっと見たら怜さんと同じ車種の車が道路に停めてあった。
色も一緒。
まぁ、車なんだからそりゃ一緒なのもあるだろう。
それでももしや、とどきりとしてしまう。
そんな自分がおかしくて。
「おい、桐生…」
宗が呼びかけてきたので思わず宗を振り返り見たら、宗が明羅よりももっと前方を見ていて、明羅はそちらに視線を向けた。
「れ……」
怜さん。
カフェから出てきたのは紛れもなく怜で、しかもスーツを着ていた。
スーツ姿なんて見た事ない。
燕尾服かTシャツ姿だけだ。
スーツでも背が高いし、足が長いし、かっこいい、と思う。
思うけど…。
思わず宗の後ろに隠れるように移動した。
「桐生」
宗が何故か心配そうな声を出した。
怜さんは女の人と一緒で、そして怜が車の後部座席のドアを開けたが女の人はそれを断り助手席に乗った。
その人誰…?
救いは怜さんが助手席じゃなくて後部座席に勧めたことだ。
明羅は携帯を取って怜にかけた。
目で見てると怜が携帯を取り出した。
『もしもし?なんだ?今日来るのか?』
「…………怜さん、行ってもいい、の」
『当たり前だろ。迎えに行くか?』
女の人車に乗せてるのに?
「怜さん外でも出てるの?」
『いや』
…嘘ついた。
「………行かない」
『明羅?』
明羅は携帯を切った。そして電源も落としてしまう。
「桐生?」
明羅はくるりと後ろを向いて怜とは反対方向に歩き出した。
その後ろをやっぱり宗がついてきた。
早歩きになる。
人にぶつかって。
でもそれどこじゃなくて。
「おいっ!人にぶつかっておいて何もなしか!?」
明羅の腕が掴まれた。
がらの悪いそっちも高校生だろう。
「うわ、綺麗な顔」
ぎっと睨んだ明羅を見てにやにや笑っている。
そに掴まれた腕を宗が払った。
「なんだ、彼氏つきかよ」
彼氏じゃないっ!だいたい明羅が男だって分かるだろうが!
そう言いたかった明羅の口を宗が塞いだ。
「すまん。怒らせたから機嫌悪いんだ」
相手は宗が謝ったのに満足したのか何も言わずに去っていった。
「なんだよ、それ!」
宗の手が離れて明羅が小さく叫んだ。でも知らん振りもしないで助けてくれたわけで…。
「………でも、ありがとう」
明羅は宗に小さく言った。
「桐生」
明羅がすたすたとまた駅に向かうと宗がついてくる。
はぁ、と明羅は嘆息した。
「…もう帰るのか?」
「帰る」
宗がいたから途中の駅で降りたのに、そこでまさか怜に嘘つかれるなんて。
明羅が電車の窓から外をじっと眺めた。
どうして嘘ついたの?
あの女性は怜さんの何?
怜さんが後部座席に乗せようとしたのに安心したのに、どうして嘘ついたの…?
じっと電車から外を見る明羅に宗は何も話しかけてこなかった。