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熱視線 夜想曲~ノクターン~3

 明羅は自分の家に着いた。
 「………入る?そういえばうちの母親の後援の二階堂グループの御曹司だったよね?」
 「いや…いい」
 宗はあっさりそう言って来た道を戻っていった。
 一体あれは何がしたいんだ?
 全然分からない。
 明羅は家に入って切っていた携帯の電源を入れてみた。
 何回か怜さんから着信がある。
 でも…。
 明羅はまた電源を切り、そしてベッドにうつ伏せに突っ伏した。
 なんで嘘ついたのかなぁ…。
 別にそのまま言ってくれればよかったのに。
 嫌は嫌だけど、嘘つかれるよりいい。
 言われた事なら信じられる。
 でもそれを言われなかったら問いただす事だって出来ない。
 「怜さん…」
 明羅は携帯を握り締めた。
 

 次の日もやっぱり学校の駅に宗がいた。何も会話がないまま並んで歩く。
 あのあとも何回か怜が連絡をくれていた。
 あんなに携帯が鳴るのを待っていたのに、今はそれが怖い。
 怜さんの声が聞きたい。
 会いたい。
 見なければよかった。さっさとまっすぐ帰ればよかった。
 そうしたらきっとこんな気持ちになんてなってないのに。
 「そんなに兄貴が好きなのか…?」
 宗がぼそりと呟いた。
 だからどうしてそれを宗に言わなければならない?
 明羅は無視した。
 好きなんて言葉で簡単に済ますな。
 …分かってる。たとえ怜さんがどんなだって明羅には怜しかいらないのだから。
 今日は怜さんの所に行こう。
 聞いてもいい、だろうか…?
 でもそんな汚い感情を持ったなんて怜さんに知られたくない。
 隠れて見ていたなんて…。
 わざとじゃなかったんだけど…。
 本当に偶然なんだ。

 学校にいる間は怜は電話をかけて来ないらしい。
 昼休みにチェックすると、怜さんからの着信は朝の分でもう来ていない。
 それにもちょっと寂しいなんて思うのに我儘だと思う。
 学校でなんて電源切ってるからかけていいのに…。
 出ない自分が何を言ってるのか。
 日課になっている怜のブログを開いた。更新されないのが分かっていてもいつもそれを眺める。だって明羅のいるところで打った文章で、その姿も一緒に思い浮かべられるから。
 「あ……」
 思わず声が出た。
 更新されてる。
 嘘っ!!
 心臓がどきどきした。
 これ……。

 <愛の夢>弾いてやる。
 迎え行くから。
 
 これ…だめじゃん。
 明羅は泣きたくなった。
 明羅のためだけの更新だ。
 やだって言ってパソコンの前にも座らないのに。
 学校まで迎えに来てくれるの?
 明羅にしか分からない内容。
 <愛の夢>満足な出来になったの?
 たった二行の更新。
 それなのにこんなに明羅の心をかき乱す。
 もうだめだ。
 やっぱり声が聞きたい。会いたい。


 授業を終え、急いで靴を履きかえる。
 「桐生?」
 宗の声。でも関係ない。
 明羅は走って校門を出た。
 いた!怜さんの車。
 「怜さんっ」
 怜さんが車の脇に立っていた。
 抱きつきたい。
 「…乗れ」
 怜が明羅に助手席のドアを開けた。
 明羅は何も言わず乗り、怜はドアを閉め、運転席に移動する。
 後ろに宗がいただろうが怜も何も言わない。

 そのまま車の中は無言で怜さんの家に着いた。
 車を降りて玄関に入って、怜が明羅を力強く抱きしめてきた。
 「怜さんっ」
 明羅は怜の首にぶら下がるように腕を回す。
 「怜さん…」
 明羅もぎゅうっと抱きついた。
 「明羅」
 怜さんの顔が近づいてきて明羅の唇に重なった。怜さんの舌が貪るよううに明羅の口腔を舐ってくる。
 「怜、さ、…んぅ…」
 こんなキス初めてだ。明羅の全部を吸ってしまいそうな勢いの怜の舌に明羅の息が上がってくる。
 「ん…ぁ……」
 怜さん…。
 ぎゅっと明羅は腕にもっと力を入れた。
 何度も何度も怜が明羅を確かめるように唇を合わせた。
 そしてしばらくたった後、怜が明羅の口を解放した。
 明羅はそんなキス初めてで力が抜けそうになる。
 「怜さん…」
 明羅は怜の胸に頭をつけた。
 「ど、して…嘘…?」
 「明羅?」
 怜が怪訝な表情を見せた。
 「外、じゃないって言った……」
 「………いたのか?」
 「たまたまだよ!宗がついてきて…。うちまで来そうだったから、途中で降りて…」
 「…なるほど。………言い訳にしか聞こえないだろうが嘘つくつもりじゃなかった。内緒にしてたかっただけだ」
 「も、いい……」
 「よくない、だろ。あれはCDのプロデュース会社の女だ。発売日の打ち合わせで、それも本当は生方が行く予定だったんだ」 
 明羅はふるふると首を横に振った
 
 

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