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熱抱擁 amoroso~愛情豊かな~3

 「…それは困ります…」

 瑞希は父の会社に退職届を出し、そして今日は有給を取って宗の会社に来ていた。
 会議室に並ぶのは宗の会社立ち上げの前からのメンバー達で、すでに瑞希も見知っている。
 「宗…」
 困ったように助けを求めるように宗を見たけど宗は肩を竦めるだけ。

 「俺は何も言ってない。こいつらに任せると言ったんだ」
 「でも、俺は立ち上げの時に実際に、直接携わったわけじゃないし」
 「いいえ、宇多くんは二階堂商事でも若いのにすでに長を貰っているんです。そのままいけば一流企業の重役にだって上り詰める事が出来るだろうにそれをわざわざこっちに呼び寄せるんですから、当然です」
 「でも…本当に俺は一社員でいいのに…」
 「いけません」
 びしりと坂下さんがが言い放つのに瑞希はびくりと肩を竦めた。
 「忙しくなると思います。そしてその他に秘書の役もやって欲しいのですから」
 「…秘書?」
 「宗さんが秘書は置かないと言い張るんですよ」
 はぁ、と坂下さんが大きくため息を吐き出す。
 「あ、じゃあ俺、秘書だけでいい…」
 「いいえ。それは勿体無いのでダメです」
 仕事が出来るという評価は単純に瑞希にとっては嬉しい事だが…。

 「でもCIO(最高情報責任者)なんて…」
 「あくまでそんなのは名目上の事ですから。実質的に今の日本の会社の中でそれがどんな地位にあるかといえば会社内外のあくまでの名称でしかありません。それでも宇多くんには投資家からの資金調達の方をお願いしたいと思っています。今までは私が兼任しておりましたが…」
 「ええと…今までのままじゃダメなんですか?」
 「だめですね。かなり仕事量が増えてきてて私も目が回らなくなってきてた所だったんです」
 むぅっと瑞希は難しい顔をする。

 「宇多くんは二階堂商事で営業をしてきて顔も広くなった。名前も知られてます。まさにうってつけですから。ついでにいえば社長兼CEOの宗さんと行動を共にする事が多くなります。秘書も兼ねてというのはここです。勝手に、突拍子もない行動を稀に起こそうとする宗さんを止める役目も大事な役目になります」
 「ああ!?なんだそれ?俺はそんな突拍子もない事はした事ないぞ?」
 「ありますよ」
 宗はないと言ってるけどきっとあるんだろう、と瑞希は宗をちらと見た。

 宗と一緒が多いというのは嬉しい事だけれど。
 自分が…いいのだろうか?
 宗を伺う。
 宗は瑞希の処遇に関して口出ししない事にしているとは聞いていた。
 聞いていたけど、まさかこんな事になるなんて思ってもみなかった。
 自分はただの一社員として来るつもりだったのに。

 「俺なんか…」
 …が、と口にしようとしたら宗にじろりと睨まれた。
 宗は瑞希がたとえ瑞希自身でも瑞希を貶めるような言い方をするのを好まない。

 「宇多くん、難しく考えなくていいんです。一番は宗さんが仕事をしやすいように、物事を運びやすいようにして欲しいんですから。それは宇多くんしか適任がいないと思います」
 坂下さんに言い切られて、そこはちょっと嬉しく思ってしまう。
 宗にとって瑞希が特別だと言う事だろうから。

 「…それは俺としても…その…嬉しい、ですけど…」
 瑞希が言えばその場にいた者全員が瑞希を見て、そして宗を見るとはぁ、と溜息を大きく吐き出す。
 「?」
 瑞希はどうしたんだろう?と宗を見た。
 宗は憮然とした表情。

 「お前達の言いたい事はわかるけどな…」
 「俺、なんかダメな事言った?」
 「いいや!瑞希の寛大な心に皆が心酔してんだろうよ。よくも俺の相手を好き好んでしてる、と思って」
 こくこくと頷く人達に瑞希は首を捻った。
 「どうして?」
 「ああ、やっぱり瑞希はいい。…瑞希はそのままで…。ホント瑞希だけだ…」
 宗が溜息を吐きながら瑞希を見つめるのに、何が?と瑞希はやっぱり首を傾げた。

 寛大って何がだろう?
 あとで宗に聞いてみようと瑞希はその場は流す事にした。
 「…本当にいい、んでしょうか…?」
 ここにいるのは宗の選んだ人ばかり。
 その人達が瑞希を見てしっかりと頷くのに、いいのだろうか、と思いつつ瑞希もこくりと頷いた。
 「よろしくお願い致します」
 すくりと立ち上がり、瑞希は皆に向かって一礼した。



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お知らせです~
イラストギャラリーに先日いただいたaikaさんの莉央×綾世upしました^^
記事が幅狭くて切れておりますが(T-T)クリックで見てくださいませ~m(__)m

そしてもう一枚 坂崎 若様からも綾世をいただきました^^
エロいです
背後にご注意くださいませ~(笑)
どこの場面か皆様すぐ分かるはず^^b

本当にありがとうございます~~~m(__)m

 
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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