【宗視点】
「やっぱり社長とどことなく似てるね」
清水の言葉に思わず宗の顔は渋面になってしまう。
それからは雑談。
斉藤は瑞希を気にしながらも余計な事を言いもしないし、何もしない。
きちんと弁えているのを見れば宗も少し見直した。
その瑞希はずっと宗に寄りかかって眠そうになっている。
こんな瑞希を見るのは初めてで宗も少しどきりとしてしまう。
上気した肌も赤く色づいた唇も、潤む瞳も…。
宗が傍にいる時以外は酒は禁止にした方がいいかも、と瑞希を見て宗は決め込んだ。
「宗くん、TSDホールディングス…知っているかい?」
「……最近伸びてきてますね」
ビールはすでに飲み終え、それぞれカクテルに切り替わっている。瑞希は、まだ酔いが冷めないらしくとろりとして宗に体重をあずけていた。
「ああ…。そこにこの間宇多くんと営業に行ってきたんだ」
清水が難しい顔で話し始めた。
「そこの社長が変わってから台頭して…って宗くんは知ってるだろうけど、その社長と会った、んだけど…」
清水がちら、と瑞希を見た。瑞希はしきりに目を擦って眠らないようにしているらしい。
「瑞希、目擦るな。寝ててもいいから」
寝顔を他の奴に見られるのはいただけないが…。
「寝ないよ」
「はいはい」
むっと口を尖らせるのに宗が苦笑する。
「そこの新しい社長、武藤というんだが…宇多くんを見る目がちょっと気になって…」
宗は清水を見てはぁ、と溜息を吐き出した。
「…ウチでも今アポとっているんです…。やはり勢いある会社じゃないと…。しかし瑞希に…?」
「ああ。あからさまに、だ。宇多くんに目を奪われる人はそりゃあ多いけど、大概は目の保養と言わんばかりで問題ないけど、ちょっと…」
ちろりと宗が瑞希を見ればなぁに?と子供のような満面の笑みだ。
…完全に酔っ払ってる。
「…ありがとうございます。気をつけます」
「ああ。その他もまぁ宇多くんにメロメロになっている所は多いけど問題ない…と思う」
「………はぁ」
宗はやっぱり瑞希を手元におけるようにしてよかった、と改めて自分を誉めた。
「もし何かあれば俺の携帯にでも…」
宗は名刺を出して3人に渡す。
清水の携帯には一回かけた事があったからもしかして宗の番号は入っているかもしれないが。
「じゃあ、すみませんが俺は失礼しますよ。瑞希がこの状態なんで」
「…確かにね」
清水と岩国が笑っていた。
「ここのお支払いはお気にせずに。情報料として進呈いたしますので。…瑞希、行くぞ?」
「宗?どこ行くの?」
「……すみません…。機会があればまた」
「ああ、いいよいいよ。皆が宇多くんに飲ませすぎたのがいけないんだから。宇多くん…がんばってね」
瑞希は宗に掴まりながら立ち上がった。
「清水課長、岩国課長、斉藤…いままでありがとうございました」
そう言って深く頭を下げる。
一応酔っ払いながらもちゃんと覚えていたらしい瑞希にくすと宗は笑った。
「じゃ、行くぞ」
「うん」
宗は三人に頭を下げ、瑞希の身体を引き寄せながら店を出た。
代行を探して…。いや、どこかホテルでも行こうか。折角だ。
「瑞希、近くのホテル行こうか?」
「何で?」
「なんとなく。たまにはいいだろ」
「宗がいいなら」
「いいさ。明日は休みだ」
そのまま酔っ払っている瑞希を連れてホテルに宗は入っていった。
部屋に入ってすぐに瑞希のスーツを脱がせ始めると瑞希も宗のスーツに手をかけボタンを外していく。
「瑞希…」
キスしながら、瑞希の口腔を味わいながらも手は止めない。
「宗……やっと一緒…嬉しい」
やはりずっと瑞希は気にしていたのだろう。
その気がかりがなくなったのも酔った一因だろうか?
「瑞希、お前、俺いない時酒禁止」
「なんで?」
まだ顔が赤い。
「エロすぎるから。他の誰にも見せられない」
「そんな事ないよ」
「いや、ある」
全部脱がせてそのまま浴室に連れて行く。
ちゃんとしたホテルのグレードの高い部屋の浴室は広い。
「瑞希…」
瑞希の肌も何もかも全部知っている。それでも足りない。
お湯の中で抱き合いながらキスを交わす。
上あごをなぞり、歯列をなぞり、舌を絡める。
手は身体を撫で瑞希もそれに応える。
「宗……」
濡れた髪に上気した白い肌はかなりクる。
「…なんでこう我慢できねぇ、かな…」
くっと宗は笑いながら瑞希の身体に自分を押し当てた。
「宗…ほし……ぃ…」
「ああ…。いくらでも」
瑞希の白い喉元が仰け反り、そこに宗は口づけ、赤い花を散らせた。
テーマ : 自作BL小説
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