ここ、どこだっけ???
目が覚めた瑞希はつきん、と痛む頭に顔を顰めた。
場所はどこか知らないけれど、自分を包む腕は宗のもの。
宗がいてさえくれれば安心出来る。
宗の腕はいつも瑞希を掴んで離さない。
それが嬉しい。
まだ眠っている宗にそっと瑞希は身を寄せた。
昨日は送別会で飲み会だった。
宗と店の外で会ったとこまでは覚えているけれど…。
ううん?と瑞希が唸った。
でも宗が隣にいるんだから宗がここに連れて来てこうなってるはずだけど。
きょろりと視線だけで周りを見渡せばどこかのホテルらしい。
…覚えてない。
素肌が宗と触れているし身体に少し倦怠感があるので宗に抱かれたのだと分かる、けど…。
全然覚えてないってどう…?
痛い頭がますます痛くなりそうだ。
コレ、二日酔いか?
瑞希は初めて味わう頭痛に思い当たる。
どれ位飲んだっけ?
いつもはそんなに飲まないのに昨日は次々勧められて、最後だから、という事もあって断りきれなくて。
隣で目を閉じて眠っている宗をじっと見た。
いつも瑞希の飲み会に迎えに来てくれる。
どんなに忙しくても危ないからと言って。
………宗が正解かも、と自分の記憶がないという失態に瑞希は難しい顔になってしまう。
今まで大丈夫だから、なんて言ってたけど全然大丈夫じゃないらしい。
宗に怒られるかな?と呆れられるかな?とちょっと心配になりながら宗が目覚めるのをじっと待った。
宗のきりりとした眉が動いた。
「…宗?」
起きたかな…?
「ん……瑞希?起きてたか…?」
「…ぅ、ん…」
覚えていないのが後ろめたくて小さく答えた。
「…お前飲みすぎ。これから俺いない時に酒飲むの禁止な。俺いる時ならいいけど」
「……ええと…俺、なんかした…?」
宗が目を見開いて瑞希を凝視した。
「……覚えてないのか?」
「う……はい…」
小さくなって瑞希が答えるとくっくっと宗が笑い出した。
「…宗と会ったとこまでは覚えてる、けど…」
「ずっと俺にべったりだった。ま、俺はいいけどな」
「え…?」
うわぁ!と瑞希は顔を真っ赤にした。
「俺に会うまでは普通だったらしいけど。ずっと俺の腕離さなくて抱きついてた」
耳や身体まで熱くなってくる。
「ひ、ひ、…人前、で…?」
「ああ。ずっと。あの後清水達と店に行ったのは?」
覚えてない、と瑞希は首を振った。
「…そこでも…?」
「ずっと」
宗は楽しそうに笑ってる。
反対に瑞希は青くなった。
「……お酒もう飲みません…」
「なんで?俺いるならいいって言っただろ?でもその方が賢明かな。ただ俺の前だけでならいいぞ?しなだれかかってエロいし、可愛いし」
宗が瑞希の熱くなった耳にキスした。
「頭痛いか?身体は?」
「…頭ちょっと痛い…身体はちょっと重い、だけ…」
恥ずかしい、と瑞希は布団に隠れる。
「したのも覚えてないのか?」
「………」
覚えてない、と言えなくて瑞希は小さく頷くだけにする。
「…それは許せないな。俺以外だったらどうする気だ?」
「…宗以外には気を張ってるから多分こうはならない……と、思う…」
宗と会ってからだ。記憶が分からなくなったのは。
きっと宗の顔を見て安心したんだと思う、けれど、どうも自信を持っても言いにくい。
「本当か?」
「…………ホント」
自信はないけど頷く。
宗がいれば安心出来るのは本当。宗じゃなかったら絶対無防備にはならないとも思う。
実際宗に会うまでの記憶は残ってる。
「俺、その後のお店でもお酒飲んだ?」
「いや?」
「じゃあやっぱり宗見て安心したんだと思う。宗に会ったとこまでは覚えてる、から…」
言い訳にしかならないけれど。
「…ならいいけど」
くつくつとずっと宗が笑っている。
「瑞希…」
宗が瑞希の上に乗って濃厚なキスを仕掛けてくる。
「ぁ……」
「覚えてないなんて…困った奴」
「ぅ……ごめん、なさい…」
「許されないなぁ」
夜にも宗を受け入れた身体はすぐに宗を呑み込んでいく。
「あ、ぁ…」
抱かれたのは本当らしい。肌がざわついていて感じやすくなっている。
宗に穿たれればすぐに快楽が瑞希を包んでいく。
「宗…」
「瑞希から欲しいって言ったのに…」
「覚えて、ない……ぁ…」
覚えてなくても身体は覚えてたみたいだ。敏感になっている肌はすぐに宗に反応してしまうんだから。
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