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熱抱擁 angoscia~不安~11

  【宗視点】


 どうしたら瑞希は分かるのだろうか…?

 いくら大事だと言っても全然分かっていない。
 挨拶回りからずっと瑞希に注がれる視線にはイライラし通しだった。
 瑞希にとってはそれが普通だったのだろうけれど…。
 一緒に買い物なんかに行った時にもの欲しそうに瑞希を見る視線がいくつも向けられるのは知っていたけれど、一緒の職場になってこんなにひどいとは思ってもいなかった。
 
 そして瑞希は自分の身体しかないという。
 だからといって誰にでも捧げるわけではないが、手を触られる位ならなんとも思っていないんだ。
 キスもそれ以上も特別な事は宗にだけ。
 でもそこまでなら瑞希は自分を差し出すのを厭わないのだ。
 そしてそれで仕事の役に立つならいくらでも、とも思っているらしい。
 

 「瑞希…」
 瑞希の濡れた身体を抱き上げてバスタオルに包みそのままベッドに運んだ。
 こんなに大事だと思っているのに全然分かっていない。
 「あ、ぅっ…!」
 噛み付くような勢いで瑞希の首筋に宗は唇を寄せた。そしてきつく吸い上げる。
 ひくりと瑞希の身体が喜びに震えるが分かる。
 「こんな事していいのは俺だけだ…」
 「…宗だけ……宗だ、け…だ、よ……?」

 半分泣いているような切ない顔で瑞希はうっすら笑う。
 こんな顔をさせたいんじゃないのに。
 瑞希は自分自身も信じ切れていないんだ。
 いくら宗が言っても全然瑞希に届いていない。

 …もどかしい。

 どうしたら瑞希の心の中を満たしてやる事が出来るのか?
 思いのたけを瑞希にぶつけても瑞希には足りないらしい。
 この身体の知らない所なんてもうどこもないのに。
 首から胸に舌を這わせ舐め吸い上げる。
 鬱血の痕を身体に散らしながら。
 仕事の時は瑞希がひどいだろうし、痕も見える所につけないように気をつけていたけれど、今はもう余裕などない。

 いや、むしろ見える所に…。
 でもそれで瑞希に余計な視線を向けられるのも困る。
 「ああっ…宗っ…」
 宗の愛撫に従順に瑞希の身体は応える。
 宗が与える快楽にいつでも瑞希は白い肌を上気させ、身体は敏感に宗を迎える。
 上擦る声も、宗を捕まえようとする腕も、逃さないといわんばかりに絡める足も、誘うような口唇も、全部宗のものだ。
 …それなのに全然瑞希は分かっていないのだ。

 「瑞希…」
 ただの宗の嫉妬だ。
 分かっている。
 でも瑞希は全然分かっていない。
 たったそれだけの事で宗に捨てられてしまうと思っているんだ。
 宗の小さな嫉妬だけなのに。
 まだ瑞希には届いていない。

 「離してなどやらない」
 「宗…宗……ぁっ…!」
 宗を受け入れる瑞希の後孔は宗が中に入っていくと待ち構えていたように収縮して絡まってくる。
 逃さないと…。
 それでいい。自分だけになら。
 「瑞希っ…俺のだけだ、だろう…?」 
 「んっ!…宗だ、け……俺…宗……だけ、だから…」
 あまりにも互いしか見えていない。

 6年経っても何も変わっていない。
 瑞希の中を穿てば官能に瑞希は声をあげ背を反らせる。
 白い身体のあちこちにある鬱血の痕は宗のものだという証。
 前を触らなくても瑞希の身体は宗に感じ雫を零している。

 「感じる、か…?」
 「ん……もっと…奥、ほし…あ、ぁ…っ!」
 深く深く、瑞希は心を満たしたいのだと思う。
 いつも奥に、もっと、とねだる。
 これはきっと心の奥底に、だと思う。
 届いてないんだ。

 「ああ、分かってる…」
 ずっと奥まで宗が身体を進めれば瑞希は喉をのけぞらせ、そして宗に抱きついてくる。
 律動を激しくして瑞希の奥を突くように抽送を繰り返す。
 「宗、…宗……あ、も…ぅ……んっ……っ!」
 「ああ、イっていい…」
 「や…だ……宗、も……」
 「ああ……こんな姿誰にも見せるな」
 「宗、だけ……だ、…」
 「瑞希……イ、く…ぞ」
 「あ、ぅ…んっ……!」
 ぎゅうっと瑞希の腕が宗の首に巻きつき、後ろが締まると宗が瑞希の中に白濁を放つ。
 「あ、ああぁ……」
 それを感じると瑞希も身体を震わせてさらに宗にしがみつくのに力をこめた。


 瑞希の色素の薄い髪を撫でる。
 こんなに愛しい、と思っているのに届かないというのが虚しい。
 届いてないわけではないのだろうけど、満たされていないのだ。
 自信を持って欲しいのに…。
 綺麗で凛としている仕事中の瑞希に目を奪われる。それで宗は嫉妬にかられるんだ。
 自身を人に好きにさせている、それを何でもない事にしている瑞希に苛立ってしまうんだ。
 自分が小さい、なんてよく分かっている。
 でも抑える事が出来ない。
 瑞希の全部は宗のモノなんだから。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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