一緒に堕ちてやる…。
宗の言葉が響いた。
綺麗な事ばかりじゃなくても一緒にいてくれる、に聞こえた。
ただ一緒にいるだけじゃない。
何をしたって一緒にいてくれる。
たとえ穢れても…。
一緒に…。
瑞希の心が震えた。
初めて宗の心を捕らえたような気がした。
雁字搦めの鎖で繋がれている感じ。
堕ちるのも一緒なら羽を広げて飛ぶのも一緒。
宗を堕としてはいけない。
「宗……」
宗の舌が瑞希の口腔を蹂躙し、手が服の下に潜りこんでくる。
宗の体温を感じればすぐに瑞希の身体は反応してしまう。
宗はもう瑞希が何をされるのが好きかなんて全部知っているんだから。
「や、ここ、で……?」
「どこでだっていいだろ…?お前と俺しかいないんだ。瑞希、手ついて」
後ろ向きにさせられて流しに縁に手をかける。
後ろから宗の手が瑞希の半分起ち上がったものに触れてきた。
「宗っ…」
瑞希は顔を斜め後ろに向け、片手を宗の首にかけキスを求めた。
宗の手は自分のベルトのバックルをはずしている。
なんでもいい、んだ…。宗が欲しいと思ってくれるなら。
一緒に堕ちてやる…。
その言葉が瑞希を見捨てないと言ってくれていた。
「あ、ああっ!」
後ろから宗の滾った自身が性急に瑞希を貫いた。
そしてすぐに律動を始めればもう瑞希は快感に包まれてしまう。
「ヤラシイな…?」
「や……ダ、メ…?」
「いいや。いい…すごく、な…」
ぐい、と宗が腰を押し付けてくれば宗を深く飲み込んでいるのが分かる。
「あ…ふ……ふか、い……」
「瑞希は奥が好き、だろ…?」
「んっ……!す、き……」
「瑞希を好きにしていいのは俺だけ、だ」
「うんっ……宗、だけ……」
欲しいのは宗だけだ。初めて会った時から変わらない。
楽しい事も幸せな事、嬉しかった事、切なかった事、悲しかった事も色々あった。
でもやっぱり宗しかいらない。
その全部を感じるのは宗だけだ。
他の人には何も感じない。
「宗が……いっぱい…ほし…」
「いつでも、いくらでも…。だから我慢などするな」
「あ、ああっ…!」
宗!宗!
……肉のぶつかる音。
キッチンで、こんな…と恥ずかしい気持ちも湧くけれど、でもそれより宗を感じたかった。
瑞希の全部は宗だけ。
一緒に堕ちてもいいと言ってくれた宗に全部自分をあげる。
瑞希の全部を!
「汚くてもいい…?醜くても…?」
果てたあと風呂場に連れて行かれて一緒に湯船に入りながら宗に聞いてみた。
「ああ?汚い?醜い?誰が?瑞希がか?」
「うん…黒いんだ…俺の心の奥…」
「そんなん普通だろ。人なんて誰でも暗い部分は持っている。黒くて汚い奴がこんな綺麗なわけないだろ。人を惹きつけるはずないだろうが。何を言ってるんだか…」
ぷっと宗が笑った。
「なんで外ではお前強気なのにウチだと…俺の前だけそんな弱気?」
「だって宗だから…。他の人になら嫌われたって何されたってなんてことないけど、宗は特別だから…」
「ああ、特別なのは分かるけど。俺の前では可愛いからなぁ、瑞希は」
「…え?」
「瑞希は知らないだろうけど、俺皆から怒られまくりだったんだぞ?」
「…え?」
「瑞希が元気ないって、俺がなんかしたんだ、どうにかしろって。皆瑞希の味方ばっか。俺の方がやきもきしてたのに…。瑞希が自分を大事にしないのも俺の所為。ぜ~んぶ俺が悪いんだとよ」
「…宗の所為じゃないのに」
「でも俺の所為なんだと。瑞希が安心出来ないのも全部俺が悪いんだそうだ。………でも今は落ち着いたようだな…?」
宗が手を伸ばして瑞希の頬を撫でるのに瑞希は手を重ねた。
「うん…。一緒に堕ちてくれるって言われたのが…」
「ああ…。どこまでも一緒にいるさ」
羽をもがれても一緒にいてくれる。
瑞希が宗の手を確かめるように包み、そしてその手のひらにキスする。
「……お前、そういう事したらまた欲しくなるだろ」
「いいけど…ダメ」
「……どっちだよ」
「宗がどうしても、というならいいけど…」
「瑞希がそんなだから…俺に甘いから俺が増長するんだ、と言われたぞ?」
くすくすと瑞希は笑った。
「だって宗に欲しいって言われるのが一番嬉しいから…」
ぐいと身体を引っ張られてキスをかわす。
何度も。何度も。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学