「で、宗は?」
「あの、会場に…」
「瑞希クン一人置いて!?」
「いえ、あの、俺はパーティ出る予定じゃなくて、武藤社長から電話がかかってきたから後から出てきたんです」
「私と一緒に会場に行くかい?」
「え…いえ、それは…」
「そういえば瑞希クンはここまで何できたんだい?」
「あっ!!!………どうしよう…車でした…。ワイン飲んじゃった…」
瑞希は口を押さえた。
「代行…」
「ああ、いいよ。ここに部屋取ってあげるから。あと宗を早めによこしてやる。坂下も一緒だろう?」
「あ、はい。でも…」
「いいから。おいで」
有無を言わせないお父さんはさっさとフロントにいって部屋を取ってしまう。
「え、と…あの…お父さん…?」
「うん?ああ、夜ご飯もまだだろう?ルームサービスも…宗の分もか…?まぁ、いい…」
宗の分のところで嫌そうな顔をするお父さんに瑞希は思わず笑ってしまった。
「じゃあ瑞希クンは部屋で待っていなさい。あと1時間もしないうちに宗をよこすから。明日は休みだろう?」
「はい」
「じゃゆっくりしていきなさい。あ、ちゃんとドア開ける時は本当に宗かどうか確かめてから開けなさい。君は危なっかしい」
「……はい」
そんなに子供でもないんだけどな、と瑞希は苦笑してしまう。
じゃ、と宗のお父さんがさっさと行ってしまおうとするのに瑞希は慌てて呼び止めた。
「お父さん……あの、ありがとうございました」
宗のお父さんは片手を上げて颯爽とホテルを出て行く。
やっぱりカッコイイ…。
宗もあんな感じになるんだろうか…?
「お客様、お部屋にご案内いたします」
「あ、はい…」
思わずなぜかホテルに泊まることになって、なんて…どうも変な感じだ。
本当は家で宗のご飯作って待ってるはずだったのに…。
なんでこんな事になってしまったんだろ???
瑞希は案内されながら頭を捻ってしまった。
「え、あの…部屋、ここ…?」
「ええ。社長からここにと…」
だらだらと瑞希は冷や汗が出そうになる。
「お連れ様が後でいらっしゃるんですね?」
「ええと…はい…」
多分…?
広い部屋に落ち着かなくてソファにちょこんと瑞希は座った。
スィート?
続き間のある部屋って…。
一泊いくら…?
怖い~~~!と早く宗が来ないかな、と瑞希はひたすらじっとして待った。
1時間まで経たないころ携帯が震えた。
今いく、と宗からのメールだ。
それに思わずほっと安堵の溜息が出てしまう。
そして宗が案内されてやってきた。
「ルームサービスもと二階堂社長から言い付かっておりますが?」
「ああ、じゃあ…」
宗は全然動じた様子もなくルームサービスを次々頼んでいく。
「それと、ワインを貰おう」
「ちょ!宗!ダメだよ!」
「いいよ。どうせ親父の金だ」
だからダメだというのに!
こんな所のルームサービスなんていくらするんだろ?とメニューを覗いて頭を抱え込みたくなる。
ありえない…。1品に3000円とかが安い方…。
普通じゃない!
それを平然と頼む宗も普通じゃない!
瑞希は何も言えなくて黙っておく。
ボーイが注文を受けて出て行くと宗が上着を脱いだのに瑞希がそれを受け取った。それをクローゼットのハンガーにかける。
「瑞希も上脱いだら?」
「…ん」
瑞希は落ち着かなくてそのままだったので瑞希も脱いでハンガーにかけ、ネクタイも外す。
「さて、と…。瑞希くん?」
「うん?」
「俺は一人で武藤に会いに行くな、って言ったよな?」
「ええと…うん」
「それなのにどうして行ったかな?」
「だってなんか国際キャピタルから話来て…どうのって…」
「そんなの瑞希を誘い出す罠だろうが!」
瑞希はびくんとして肩を竦めた。
「でも全然大丈夫だけど?」
「大丈夫じゃないだろ!それにワイン飲んだ~!?俺いないとこで酒もダメだって言っただろ!?しかも車で来てるのにワインってどういう事だ?」
「うん…忘れてた」
「忘れてたじゃないだろうが…」
はぁと宗が頭を抱える。
「宗に電話したんだけど…」
「人が途切れなくて…。気付かなかった。…悪かった」
はぁ、と大きく宗が溜息を吐き出した。
「…分かった。二度と瑞希と別行動なしにする」
「は?」
「瑞希は一人にすると危険だ」
「あのね…。お父さんにもなんか危ないとか言われたけど…なんで?危なくなんかないのに」
「あぶねぇだろが!一人で武藤といるのも、酒飲んでんのも!」
「大丈夫です!」
「大丈夫じゃない!全然!」
宗が瑞希を抱きしめて荒々しくキスした。
「お前、親父に聞いて俺がどんな気持ちになったか分かるか…?」
瑞希はしゅんとして黙った。
「………ごめん」
心配してくれたんだ…。
「ありがとう…嬉しい」
はぁ、と宗がまた溜息を吐き出してそして苦笑した。
テーマ : 自作BL小説
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