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熱抱擁 coda~終止部~2

 23日。
 瑞希はクリスマスプレゼントをどうしようかと悩んで悩んで結局お揃いのネックレスにした。
 宗と一緒に買い物に行って、デパートで色々見て回っていた時に宗がいいな、と呟いていたから。

 でもどうも、なんとなく、しっくりきていないんだけど…。
 いいな、と言った時、宗が瑞希を見てにやっと笑ったんだ。
 いい、はいい、んだろうけど…。
 まぁ、いいや、と外に出た時にそれを買っておいた。
 毎年色々悩むけれど、でもそれが楽しくて幸せだ。
 宗の誕生日は怜さんと近いからいつも明羅くんと一緒に買い物に出かける。それも楽しい。
 楽しい事ばかりだ。


 「瑞希は座ってていいから」
 宗がテーブルセッティングに落ちつかなげに動いている。
 「でも…」
 「いいから!」
 動かなくてもいい、と言われても瑞希だって落ち着かない。
 宗が浮かれてると言っていい様に少しハイテンション。

 なんか今年はいつもと違う感じ。
 どうしたんだろう…?
 でも宗も楽しそうなので文句など勿論ない。
 届いた料理を皿に盛り付けたりしてるんだけど、瑞希は気が気じゃなくて…。
 でもソファから動くな、って言われるし。

 「宗?俺、してもらうばかりじゃなくてしてあげたいんだけど?」
 「それはあとでたっぷりシテもらうからいい」
 「……意味違くない?」
 かっと瑞希の顔が赤くなる。
 絶対意味違う!そうじゃなくて!
 「違くない。いつもしてもらってるから、本当は俺が料理でもできりゃいいんだろうけど」

 瑞希にしたらご飯の用意でもなんでも家の事ならどうせ一人でもしなくてはならない事だったので全然苦じゃない。むしろ普通に一緒に時間を共有できて、さらにおいしいといってくれる宗に嬉しい位なんだけど、宗も特殊な環境で育ったといえるからきっとそんな些細な事に気付かないんだと思う。

 「よし、いいぞ」
 宗が瑞希の手を引いて席に誘う。
 いつもと一緒な毎日のはずなのに、特別だ。

 毎年12月23日を宗は大事に思ってくれている。
 瑞希だってミニが来たあの日から大きく運命が変わったのだ。

 ディナーに連れて行かれた時もある、ホテルに泊まった時もある。
 毎年とびきり特別な事をしてくれるのだ。
 今年は家だけど、やっぱりいつもの毎日とは違う事。
 意外と宗ってロマンチストだ、とも思う。
 瑞希の方がどちらかといえばそうじゃないのかも。
 特別は嬉しいけど、特に特別じゃなくたって宗がいてくれれば幸せだと思えるんだから。

 4人掛けのテーブルに二人だけ。
 ワインをかわし、料理を食べる。
 それなのに、豪華な料理を口に運ぶ宗の表情は思わしくない。
 「あんま美味くないな」
 「え?そうかな…?すごくおいしいけど…。俺こんなの宗といるようになってからしか食べたことないからよく分からないけど…」
 味付けも肉も上品で最高級と分かる。
 いつも瑞希が作るのなんて普通の家の料理だと思う。
 「ん~~~…やっぱ瑞希のご飯の方が俺は好きだな」
 「………絶対宗おかしいよ。…でも……ありがと」

 こういう何気ない所が瑞希の琴線に触れるんだ。
 ゆっくりとした時間。
 テレビを見ながら、ツリーを見ながら、たまに仕事の話、他愛もない話、今までの時間。これからの時間。全部が愛しい。


 「宗……ありがとう」
 「まだ礼は早いな」
 「そうなの?」
 一緒に全部片付けてソファで宗に寄りかかりながら礼を言ったら宗に笑われた。
 「ちょっと待ってろ」
 「?」
 宗が立ち上がって仕事用の書類のいっぱい詰まったバッグから何か書類を取り出してきた。

 「はい」
 「何?コレ?」
 書類?
 封筒に入ったものを手渡されたのに瑞希は首を傾げる。
 「見てみろ」
 促されて封筒から書類を出してみた。

 「?」
 何これ…?
 なんか名前が書かれてるけど…。
 「そ、……う…?」
 「俺はちょっと、いや、かなり不本意なんだけど!」
 「こんなのダメだよ!」
 「ダメじゃねぇよ?了承済みだ。だから名前書いてあんだろ?」
 「でもっ!でもっ!」
 瑞希は真っ青になる。
 「プロポーズするっていっただろ?断るなよ?ただ、本当にこれはかなり俺としては不本意なんだ!」
 宗が憮然として言った。
 不本意どこの話じゃないと思う!
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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