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熱視線 譚詩曲~バラード~2

 「別人?」
 怜が宗に聞き返した。
 「学校じゃクールビューティって言われてて誰も近づけないのに」
 くくっと宗が笑った。
 は?クールビューティ?
 何が?
 「ところが最近は表情がくずれっぱなしらしい」
 「?」
 何の事だろうか?
 明羅は怪訝そうに宗を見る。
 「休み時間の度に携帯出して見ては溜息。赤くなったり青くなったり。この間は弁当写メしてたって?」
 明羅はかぁっと赤くなる。
 ちらと怜を見れば怜の口端が緩んで口を押さえていた。
 「兄貴だろ?料理得意だし?泊まった次の日だったし」
 「……なんで宗が知ってるわけ?」
 明羅は動揺しないようにと平静を装って宗を睨んだ。
 「さぁ?知らんけど桐生のクラスのヤツの話が俺ん所に必ず聞こえてくるから」
 だから、それがなんでだ?
 「……あとは?」
 怜が面白そうに先を宗に促した。
 「れ、怜さんっ」
 「だって学校で明羅がどんなか全然知らないし。クールビューティ?」
 怜がくくっと笑いながら言った。
 「そ。表情変わんねぇし、人を拒絶したように孤高で」
 「………別にそんなんじゃないけど」
 明羅が否定するが宗は肩を竦める。
 「そんなだろ」
 「………余計な事言わないでくれる?」
 明羅がつんと言えば怜がまた面白そうに明羅を見ているのに気付いた。
 「な、何?」
 怜を見れば明羅の表情が崩れる。
 「…明羅、楽しいな、お前」
 楽しくない!
 怜がまじまじと明羅を見てる。その目が笑ってた。
 「…だから。ずっとこんななのに金曜になると携帯見てはいそいそして、授業終われば速攻で教室出て。そりゃ噂にもなるさ」
 「…お前は?」
 怜が明羅の頭を撫でながら宗に聞いていた。怜の手が頭を撫でるのに明羅は身を委ねたくなってしまう。
 だって本当なら初めての朝で、恥かしいは恥かしいけど、もっとくっ付いていたいと思ったっていいはずだ。
 「俺?何が?噂?別に…。兄貴が連れてたからちょっと興味持っただけだけど。まぁ、前から綺麗だとは思ってたけどな。…でも男だし」
 綺麗、という所は置いておいて、それが普通だ、と明羅は納得する。
 「ふぅん?」
 「…なんだよ」
 怜がにやにやして宗を見れば宗が仄かに顔を赤くしていた。
 「別に?」
 ちっと宗が舌打ちする。
 もしかしてこの二人仲良し?
 明羅は宗と怜を見比べた。その二人が同時に明羅に視線を向け何?と声を揃えたのに明羅はぷっと吹き出した。
 「……やっぱ仲良しなんだ?」
 別に仲良くない、と声を揃えればさらに明羅は笑ってしまって、その拍子に体に疼痛が走って顔を顰めた。
 すると宗が立ち上がった。
 「じゃ。桐生、邪魔して悪かったな?」
 くくっと宗が笑ったのに明羅がむっと口元を引き結んだ。
 「別に」
 「……お大事に」
 ふっと笑われたが明羅は表情を変えなかった。

 「……先に宗が来てるって言ってくれればよかったのに」
 宗が帰ったので明羅はくったりとソファに身体を横たえた。
 「悪い」
 怜が笑って明羅の髪を撫でた。
 「なんか食うか?」
 「うん……でも動けない…」
 「動かなくていいから」
 「……甘やかしすぎ」
 だから甘えたくなってしまうんだ。
 「いくらでも甘えろ」
 甘えてる。
 でも、宗が来たおかげでどう怜さんの顔をどう見ればいいか、なんて悩まないで済んだかも、とも思った。
 きっとそうじゃなかったら昨夜怜さんにされた事を考えてしまってまともに顔が見られなかったと思った。
 そしてそう思った瞬間に脳裏にされた事があれこれフィードバックしてくる。
 「ぅ……」
 「明羅?」
 かっと顔が赤くなってきて思わず口元を押さえてしまう。
 「……恥かしすぎる」
 しかも宗にまで知られた。
 「……可愛い。明羅」
 横になってる明羅に覆いかぶさるように怜が身体を重ね、明羅の耳を食みながら囁いた。
 「…おかしい、よ」
 「おかしくない。宗も言ってたクールビューティって…。俺には全然そうじゃないみたいだから…」
 くすくすと怜が耳元で笑うのがくすぐったい。
 「クール…なんたらは知らないけど…。でも怜さんだけ特別…みたい」
 「…知ってる。で、写メって?」
 明羅はかっとまた顔を赤らめた。
 「だって!嬉しかったから!」
 まさか写メしてたのまで怜に知られるとは思ってもいなかった。
 
 

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