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羽は散り堕ちた。 8

 「……岳斗、いい、か…?」
 「え?」
 何が……?
 …と思ってはっとした。

 「う、嘘っ!ま、ま、ま、…マジ、で…?」
 千尋先輩の唇が離れて意識が半分飛んでいたのが急に覚醒する。
 「ああ。…ほら」
 ぐいと下半身を押し付けられるとそこがすでに硬くなっているのが分かった。
 「お前もだろ?」
 「や、や、やぁ…っ!ダメっ!」
 ふ、っと千尋先輩が笑って、岳斗の下半身に手を伸ばそうとするのに慌ててその手を掴んだ。
 狭いソファの上。
 コンパクトサイズの岳斗はいいけれど手足の長い千尋先輩はひどそう。
 「ダメなのか…?」
 「ダ、ダ、ダ、…メ、…じゃ、ない、…けど…」

 今?今日!?
 心の準備がっ!
 自分が男ばっかり好きになって、それでどうするか、なんて勿論知ってるけど…。自分が抱かれる方、なのは分かるけど。
 今!?
 「岳斗…」
 でも千尋先輩の名前を呼ばれればもう身体は溶けてなくなりそうだ。
 「岳斗…?」
 「千尋先輩……俺、男だ、よ?」

 「………は?」
 素っ頓狂な声をあげて目を丸くする千尋先輩の顔が珍しい。
 「だ、だって!」
 岳斗は顔を真っ赤にしてしまう。
 だって千尋先輩はいつも女子に囲まれてもててるし、別に岳斗じゃなくてもいいはずなのに…。
 「バーカ」
 くっくっと千尋先輩が笑って岳斗の耳にキスする。
 「そんなの知ってるに決まってんだろ。何の心配してんだ?」
 「だ、だ、だって…」
 するりと千尋先輩の手が岳斗のTシャツの下に潜り込んできた。
 「あ、ああっ!」
 嘘っ!!!
 さわりと脇腹を撫でられて岳斗の肌がざわりと粟立った。

 「岳斗…」
 耳朶を食まれる。
 「んっ!く……ぅ……んっ!」
 「寄ってくる女を可愛いなんて思った事ねぇよ」
 千尋先輩の甘い声が響いてくる。
 「いつでも目を輝かせて、一所懸命な岳斗を可愛い、と思った…」
 ち、ひろ先輩…。

 「尚も言ってた。可愛いって…尚がお前に手出してんのが気に食わなかった」
 嘘…、そう、なの…?
 「お前が俺を見上げてくる目が可愛い…。尚とお前が仲良くなった時、ちょっと会わなかった時、岳斗は尚の方を好きになったんだと思った」
 「…なんない!絶対っ!」
 そこは言い切れる!
 「ああ…今は分かる、けどな…」
 くすと千尋先輩は笑いながら舌で岳斗の首筋を舐めていく。
 「やぁ…っ」

 「尚にお前がキスされた時は尚をマジで殺してやりたくなったけど」
 「だ、め…っ」
 千尋先輩の手が、指が岳斗の身体をなぞっているのにぞくぞくと背中が総毛立ってくる。
 声が岳斗の耳を擽り、舌が首を辿って鎖骨の辺りで止まる。
 「あ、ああ、んっ!」
 きゅっと強く、痛い位吸われて声が大きく漏れた。
 「や、だ……恥ず、かしい…よ…」
 「いい…俺しか聞いてないから…」
 それが恥ずかしいのにっ!

 Tシャツをたくし上げられて脱がされた。
 なんで男同士なのにこれだけでこんなに恥ずかしいんだよ!
 「千尋先輩…」
 どうにも手持ち無沙汰だ。
 何をどうしていいかなんて勿論初めての岳斗に分かるはずなんかない。
 「岳斗」
 すらりと千尋先輩もTシャツを脱ぎ捨てるとまたキス。
 千尋先輩の胸に革のチョーカーとシルバーの二つの十字架が揺れていた。
 岳斗の心臓がドクドクとうるさい。

 これから千尋先輩に抱かれるの?
 千尋先輩がキスしながら岳斗のベルトを外してジッパーを下げる。
 岳斗もした方がいい…?
 手を伸ばして千尋先輩のベルトに手をかけた。
 今日は千尋先輩はジーパン…。
 かちゃかちゃとベルトを外す音とキスで唾液の混じる音。
 現実じゃないみたいだ。

 「ちひ、ろ…せん…ぱ…」
 「ああ、岳斗…」
 熱に浮かされたように何度も何度も確かめるように千尋先輩を呼ぶ。その度に千尋先輩も答えてくれる。
 肌が触れ合う。
 体温が伝わってくる。
 千尋先輩の身体…。

 岳斗を組み敷いている千尋先輩の少し長い髪が岳斗の顔を擽る。
 たまに髪をかき上げるけれどやっぱり千尋先輩の顔を覆ういそうになるのに岳斗は手を伸ばして千尋先輩の髪をかき上げた。
 でもすぐに千尋先輩はキスしてきて手は離れてしまう。
 変わりに千尋先輩の首に腕を回した。
 「あ、っ…」
 千尋先輩の長い指に岳斗の胸の尖りを摘まれ思わず声が漏れる。
 そんなとこ弄っても…、と思っても声が漏れてしまう。
 「や……」
 すでに下も脱がされて、千尋先輩ももう何もつけていない。
 千尋先輩の首筋に顔を埋めれば千尋先輩の香り。
 岳斗の全身が千尋先輩で満たされていた。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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