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熱視線 譚詩曲~バラード~3

 「ねぇ…」
 そういえば明羅のジュ・トゥ・ヴはどうだったのだろう?
 言葉が聞こえた、と怜は言っていたけれど。
 朝ごはんにしてはもう遅い時間で、ブランチになった怜が用意してくれたご飯を食べながら明羅は口を開いた。
 「その、さ…ピアノ…」
 「ああ…。お前、あれでダメだって言うのか?」
 「うん?」
 「あれでダメなら世のピアニストの半分はダメじゃないか?」
 「………昨日のは、どう弾いてたか、音がどうか、自分でも聴こえてなかったんだ…。全然。怜さんだけしか知らない…」
 怜が眉を上げた。
 「…あんなの、初めてで…きっと二度と弾けない、と思う…」
 「……本当にピアノやめる、のか?」
 「うん。それは。俺はもう…怜さんの音で満足」
 怜は頭を抱える。
 「もったいない、と思うが…」
 「昨日のは特別、だと思う。分かんないけどね」
 いいんだ、と明羅は続けた。
 「だってきっと続けても頭には怜さんの音だけが鳴ってるから。家で練習してた時ももうずっと…。昨日は全然それがなかったから。だから特別」
 ふぅん、と怜が納得してないように頷いた。
 「…怜さんのピアノ、聴きたい」
 「ああ。じゃそこで横になってろ。身体は?まだひどいか?」
 「あ、朝より、は、そ、そうでもない…から」
 明羅がわたわたと動揺すると怜が笑みを漏らす。
 「今日はゆっくりしてろ。明日は曲!」
 「…うん」
 曲が途中で放置していたのを思い出して明羅も頷いた。

 「明羅、電話鳴ってる」
 「え?」
 怜のピアノの余韻に浸っていたら怜に声をかけられて慌てて相手もみずに出た。
 「もしもし?あ、久しぶり…うん。元気」
 明羅は電話を指差して怜にお父さんと口パクで伝えた。
 「今?怜さんの所。え?あ、うん。ちょっと待って。怜さん、お父さん代わってって」
 「丁度いい」
 丁度いい?
 明羅は怜に電話を渡した。

 「もしもし、初めまして。二階堂 怜と申します。…いえ、全然迷惑では…」
 父が話しているのか怜が頷きながら聞いている。
 変な感じだ、と電話で父と怜が話すのを不思議な面持ちで聞いていた。
 しかしなんで今日?
 朝から宗は来るし、落ち着かない。
 「あの、お話したい事があるのですが…」
 怜が何かを切り出しそうなのに明羅は首を傾げた。その明羅の頬を怜の手が撫でる。
 猫が甘えて顔をこすり付けるように明羅も怜の手に顔を擦りつけた。
 「実は明羅くんが私に曲を作ってくれたのですが、それを是非発表したくて…。ええ。CDも……はい。いいえ、そんな…」
 え?それ言う?言わなくていいのに、と明羅は怜を見た。
 「それでうちに機材が全部そろっていて、明羅くんにはさらにCD用に曲をお願いしたくて。……いえ、聴かれれば分かると思います。ご自宅の方では機材が………はい、いつでも家で…ただ普段は学校がありますし…。それで是非家で…明羅くんがよければいつでも出来る状態で、はい」
 え?
 明羅が怜をじっと見ると怜がにやりと笑った。
 「学校までは同じ電車で家からも一本で行けますので…はい、責任を持って、いえ、こちらのほうが無理を言ってるんですから…はい」
 もしかして…?
 明羅はじっと怜を見てたら電話を怜から返された。
 「も、もしもしっ」
 本当に曲作った?お前はどうしたい?
 そう聞かれて明羅は息巻いた。
 「曲は、本当だよっ。怜さんがよければ、こっちにいたい…。だって機材が揃って、うん」
 元々干渉もされないし、母も怜を誉めてたらしくて話はすんなり進んでしまって。
 電話を切って明羅は怜に抱きついた。
 「怜さんっ!」
 「同棲確定で」
 いたずらっ子のように怜が笑って明羅に軽くキスした。
 「信じられない!」
 「そうか?俺はずっと考えてたけど?どうやったら明羅を手にいれられるかなぁ?と。俺は離したくないのになぁ、と思ってても明羅は学校があると普通に帰っていくし」
 「……怜さんも、その…俺と、一緒にいたい、と思ってくれてた…?」
 「当然だろう。じゃなきゃこんな事考えるか」
 「どうしよう…」
 「とりあえず曲出来るまで、って話だけど。…離す気ないから」
 色々な思いがこみ上げてきた。
 嬉しい。
 単純な思いだけでない。
 いろいろ怜が明羅との事を考えていてくれる。それが嬉しくて瞳が潤んできた。
 
  

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