小さくギターの音が聞こえてきた。
ギター?ベースじゃなくて?
なんで?千尋先輩…?
うっすらと目を開けてみると千尋先輩が上半身裸で床に座り、煙草を咥えながらギターを抱えていた。
床には紙も散らばっていて、曲を作っているんだ、と初めて見る光景にうわぁと岳斗は目が釘付けになる。
いつもこんな風にして曲作ってるのかな?
千尋先輩がギターのコードを弾きながら音を小さく口ずさんでいる。
千尋先輩の歌!?
声が心地いい。
低くていい声。響いてちょっと甘い。
バンドでもコーラスとかでは入ったりするけど絶対表には出てこない。
メロディアスな曲みたいだ。
もっと聴いてたいなぁ、と思ってたら千尋先輩がくるりと振り向いて岳斗と目を合わせた。
「おま、…起きて!?」
「え?あ、うん…今、目覚めた…んだけど…」
千尋先輩がなんか動揺している。
わたわたとして紙を片付けてギターを片付けた。
「…なんで?もっと聴いてたい」
「いや、いい」
「なんでぇ?俺、千尋先輩の声も好きなのに…」
「…………岳斗、こっちこい」
「?」
にっと笑って煙草の火を消しながら千尋先輩が呼んだので岳斗は何も考えないでベッドから足を床について起き上がった。
「なっ!……や!!!!」
自分がマッパだったのに慌ててタオルケットを引いて身体を隠そうとしたら千尋先輩の腕が岳斗の身体を引っ張って自分の胡坐をかいた膝の上に抱き寄せられた。
くっくっと笑っているので確信犯だったらしい。
岳斗は耳から首まで赤くなって身体を膝を抱えるように小さくした。
「先に風呂行くか。汗かいたし?」
「や…」
千尋先輩は上半身裸のままだし、おまけに自分の身体にある千尋先輩がつけたキスマークが目に入ってますます岳斗は赤くなってしまう。
「身体は?ひどくねぇ?」
そんなの聞かれるのもいたたまれない。恥かしすぎるッ!
「だ…い、じょ、…ぶ」
千尋先輩がくっくっと笑いながら岳斗のこめかみにキスする。
「別に隠す事なくね?全部見てるし?」
「そ、…だけど…っ!」
そういう問題じゃないと思う!
「岳斗、10日とお盆は…って聞いたよな?」
「え?あ、あの…」
言ってもいいのだろうか?
親いないから…夜、一緒にいたい、って…?
「あ、の…15日と16日、ウチ…その誰もいないから…千尋先輩…と、一緒、いたい、な…とおも、た…ん、だけ、ど…」
おずおずと口にしてみれば千尋先輩がぎゅっとさらに力を入れて岳斗を抱きしめた。
「バイト終わったら行く」
「………うん。……いい、の…?」
「いいに決まってるだろ!なんでさっさと言わねぇんだよ」
「だ、って…」
それじゃして、ほしい、とか思ってる、と思われそうで…。
「……バカだな」
千尋先輩の甘い声が耳に聞こえた。
お風呂使わせてもらって、千尋先輩が誕生日なのに悪い、と申し訳なさそうな顔でさっと簡単にパスタ茹でてレトルトソースをかけた夕飯食べて…。
別にいいのに…。
だって誕生日に一緒にいらないと思ったのにいれくれるだけでいい、のに…。
そしてまた千尋先輩の部屋に戻るとキスされて、折角着たTシャツをまた脱がされた。
「ち、ひろ、先輩。そういえば、バ、バイトは?」
「ああ?具合悪いので、って言って早退。そんなのはいいけど、お前バイトない日50’s来いよ」
「え…?」
「全然来ねぇし…。俺3時過ぎには50’s入ってるって言ったよな?店始まるまで少ししか会えないけど…」
千尋先輩がそう言って岳斗にキスする。
「あ……俺、行って、も、いい…?」
「お前が来てくんねぇと会えねぇ」
「千尋先輩…」
岳斗の上に乗ってる千尋先輩の首に腕を回して抱きついた。
「遠慮しすぎ」
「だって…千尋先輩疲れてると思って…。それなのに俺行ってうるさくしたら邪魔かな、って…」
「うるさくねぇよ。岳斗は」
千尋先輩の手が岳斗の身体をさわりと撫でていく。
「ぁ……」
「声ももっと聞きたい。…イイ声もな…」
艶めいた千尋先輩の声にぞくりと敏感なままになってる身体が反応してしまう。
いつでも千尋先輩を待っている。
手もキスも全部。
千尋先輩を受け入れたばかりの身体はすぐにまたやすやすと千尋先輩を受け入れ、岳斗の嬌声は止む事なく続いた。
名前を呼んで、呼ばれて…。
千尋先輩の熱を感じられて嬉しくて…。
今までで一番幸せな誕生日になった、と思いながらいつの間にか千尋先輩の腕の中で目を閉じていた。
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