誕生日に貰ったCDは今までで一番の岳斗の宝物になった。
だって千尋先輩の曲が入って、声が入っているんだから。
最後の曲はきっとあの日に作った曲。
いったいいつの間に…ってきっと岳斗が寝ちゃった後に作ってCDも落としたんだろうけれど。
CDは親のPC借りて曲を落として携帯にも入れた。
勿論ちゃんとその後PCのは削除して。時間があれば岳斗はいつもそれを聴いている。
15、16日と先輩来るから、と親にも許可を取って準備OK。
OKだけど先輩が来るのにご飯どうするの!?と母親に慌てられた。
そういえば高校出たら家を出て行くし飯の支度も自分で出来るようにならないと、と岳斗も考えて、にわか仕込みで簡単に作れるもの、カレーとか色々作り方とか教えて貰う事にした。
13日までは岳斗もバイトがあったし、14日も千尋先輩は1日バイトで結局15日の夜まで千尋先輩とは会えなさそうなのにガックリはするけれど、仕方ない。
そして15日。
部屋も片付けたし、準備は万端だ!
いいけど目に入るのはラッピングされたTシャツだ。
なんか今更でもうどうしていいか分からなくてそのままになっている。
そして千尋先輩から借りッぱのMA-1。
千尋先輩の物があるだけで、それを眺めるだけで嬉しくて仕方ない。
両親と妹が一緒に出かけたのを見送って岳斗もスーパーに出かける事にした。
食費、とお金を預けてもらっている。
それはいいけど料理はかなり不安だ。
なるようになるだろ、と岳斗は楽観して千尋先輩に夜になれば会えるんだ、とうきうきしながら買い物に向かった。
「岳斗!よく会うな」
で~た~!
また尚先輩だ。
「…尚先輩って暇なの?」
「うるせぇよ?」
ごつっと頭を小突かれた。
「…どこ行くんだ?」
「え?スーパー。……っと、あの…誕生日の時…ありがとうございました」
岳斗は小さく頭を下げた。
尚先輩のおかげで千尋先輩と過ごせたんだ。
すると尚先輩がくすと笑う。
「…だからお前カワイイんだよな…。…千尋怒ってただろ?大丈夫だった?」
「え?あ、うん。全然」
そしてじっと尚先輩が岳斗の顔を覗きこんでくる。
「?」
「……そしておいしくいただかれちゃいました、だよなぁ…」
「?」
なんの事?と一瞬思った後ぐわっと顔が熱くなった。
「な、なに…!」
「千尋だもんなぁ…。そんで今日はスーパー?買い物?」
「あ、うん…。親いない、から」
「……そんで?千尋は?」
「バイト…」
「意外と千尋ってストイックだったんだなぁ。知らなかった…。岳斗クン寂しい?尚先輩が慰めてあげるけど?」
「い、いらないっ!千尋先輩バイト終わったら来てくれるもんっ!」
「…あっそ。何?それで岳斗クンはバイトで疲れて来る旦那を迎える若奥様なのぉ?」
「な!何、言って!」
「え~!だってスーパー行ってご飯の買出しでしょ?」
そうだけど!
「ふぅん…そんでその後は岳斗クンをおいしく千尋がいただいちゃうんだ…?いいねぇ」
この尚先輩のからかいの口調をどうにかしてほしい!
「あ、否定しないんだ。ふぅん…」
ぅ……と岳斗は怯んでしまう。
だって千尋先輩が15日にいっぱい愛し……って…。
かぁ~~~~っと身体中が熱くなって耳も熱くなる。
その岳斗の様子をじっとみて尚先輩が苦笑した。
「幸せそうね?…ならいいけど。じゃ、千尋にあんま無理すんな、って言っておいて?」
尚先輩はそう言っていなくなってしまう。
ほんと尚先輩ってどこにでも現れるんだから。
こっちの行動見てるのかな、って思ってしまう。
いつもいつも偶然に会うのは尚先輩だ。
千尋先輩ならいいのに…と思わず思ってしまったけれど、今回は尚先輩のおかげで千尋先輩と誕生日を過ごすことが出来たんだから、偶然に会うのもいいのかもしれない。
そう自分に言い聞かせながら岳斗はスーパーに向かった。
何にしようと悩む位料理が出来るはずもなく、切られて売っているコールスローとか、焼いてタレ絡めればいい肉とか、明日の朝用のパンなどを買い込む。
そういえば千尋先輩の家に泊まった時、なにげに千尋先輩の手際がよかったなぁ、と思い当たった。
パスタ茹でてる間にスープ作ったりしてた。
岳斗も頑張ろう!と拳を握った。
テーマ : 自作BL小説
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