それから続けて何回か…数える事が出来なくなってやっと解放された。
岳斗がもう動けない位にへろへろしてれば、抱き上げられて風呂場に連れて行かれ、ぐちゃぐちゃになってた身体を流され、千尋先輩の精を受けたのも綺麗に流された。
いいけど!恥ずかしすぎる!
千尋先輩にしがみついて顔をあげる事も出来なくて、耳まで真っ赤になりながら指を入れられて掻き出され、さらにまた声が漏れてしまうのにまた恥かしくなるという悪循環だ。
「いいな…。バイクに乗ることもバイトとか、学校とかの事考えなくていいから」
くくっと千尋先輩が満足そうに笑ってるのにもう!という意味を込めて胸を叩いた。
今まではバイク乗るからとか一応は考えてくれてたらしい。
ここは岳斗の家だし、明日の予定も何もないので無茶した、って事か。
ベッドに戻ってきてTシャツ短パン着させられてやっと一息つけた感じだった。
濃すぎる…。
あ、れ…?そういえば…。
「千尋先輩、煙草…は?」
「ん?ああ、お前の部屋では吸わねぇよ」
「え?別にいいのに。あ、灰皿持って来る?」
「いい。吸う時は外行くから」
「でも…」
「いいって」
ベッドに横になってる岳斗の脇に座って千尋先輩が頭を撫でてくれるのに、岳斗は身体を壁際に寄せてスペースを作った。
「横になって?狭いけど…千尋先輩も毎日休みなしで疲れてるでしょ?」
「そこまででもねぇけど…」
そう言いながら千尋先輩が岳斗を腕に抱いて横になった。
岳斗の目の前に千尋先輩の革にぶら下がった十字架とシルバーの十字架が目に入ってそっとそれに触れた。
かしゃりと音がしたのに千尋先輩が苦笑した。
「それは俺の罪の証…ってほどじゃないけど、そんな感じだ」
「え?」
「シルバーがバンド組んだときに買った。革のはバイクの時。家から…親の敷いたレールから外れた時にな…」
贖罪、のつもり、なんだろうか…?
岳斗はよしよしと腕を伸ばして千尋先輩の頭を撫でる。
「そういやお前の親、よくバイクの後ろ乗っけるのに何も言わないな?」
千尋先輩が話題を変えるようにそう聞いてくる。あんまり話したくないんだろう。
千尋先輩とお母さんとの会話を思い出せば岳斗も切なくなる。
「気をつけて、位かな…ええと、あの、ね…俺はいつも千尋先輩来る時の音、行っちゃう時の音は分かるけど、自分乗せてもらってる時の音は家で聞いてるわけじゃないから分からないんだ…。で、その、俺、乗せた後の千尋先輩のバイクの音が静かなんだって…」
「ん?…ああっ!」
ははっと千尋先輩が珍しく声をたてて笑った。
「そりゃ、お前乗せて飛ばせねぇし」
「だから…。無理しないの分かってる、みたいで…」
……千尋先輩がくっと笑って岳斗の前髪を上げて額にキスする。
「あ!、あのね!ちゃんとお礼言ってなかった!CDありがとうございます!チョー嬉しかった!」
「………」
千尋先輩が視線をそらせてそっぽを向く。
「毎日聴いてるよ…?」
「言わなくていいから!」
がしがしと頭をかいてるのにぷっと思わず岳斗が笑うとぎゅっと腕の中に閉じ込められた。
「千尋先輩の誕生日いつ?尚先輩に4月だって聞いたけど」
「4月3日」
「早っ!」
やっぱ4月なんだ…。
あのTシャツどうしようかなぁ…?
まぁ、いいか…。そのままにしとこ。
何もないのにプレゼントってのも変だし…。
気に入るかどうかも分かんないし…。
勝手な岳斗のイメージだったけど、十字架の訳を聞いた今は余計に渡せないかも、と思ってしまう。
背中の真ん中に十字架が書いてあったから、千尋先輩がただ十字架が好きなのかな、と思ったけど、その胸の十字架が千尋先輩の気持ちの中で家との確執に繋がっていたなんて…。
簡単に渡せるものじゃない感じだ…。
翼だけだったらよかったのに。
天使の翼みたいなのが書かれててまさに岳斗のイメージそのままだったからこれだ、と思ったのに…。
「失敗…」
「何が?」
「あ、ううん、何でもないっ」
あれはこのままずっと岳斗がしまっておかなきゃないかな…?
機会があればいつか渡そう。
しゃらりと十字架に手を伸ばしてそれを撫でた。
音楽とバイク…。岳斗が行った時も千尋先輩のお母さんが言ってた。
いつもあんな風に言われているんだろうか…?
岳斗が力になれるならいくらでもなるのに、まだ高校生でしかも千尋先輩より1コ下じゃ何も役に立てない。
…それが悲しかった。
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