千尋先輩とデートの日!
天気はいいけど、暑い!
それでもうきうき気分で、岳斗は千尋先輩のバイクに乗せられて出かけた。
近場の海岸線を走る。
バイクで走っている時は気持ちいいんだけど、止まるとアスファルトから熱が反射して最悪だ。
千尋先輩はフルフェイスは暑いからとサングラスに半帽のヘルメット。
…ずるい。
確かに顔が蒸れそうだ。
途中で止まって海を眺める事にする。
「待ってろ。飲み物買ってくる」
千尋先輩はヘルメットを取るとかけていたサングラスを頭の上にスライドさせ髪をあげるようにして自販機に向かって行った。
かっけぇよな、とその後ろ姿にも見惚れる。
背高いし、手足長いし。
しかもっ!今のサングラス頭にかけてんのも反則じゃね!?って思う位カッコイイ!
自販機で飲み物を買っている千尋先輩に女二人が近づいていく。
やっぱ何処行ったって千尋先輩はかっこいいから声かけられまくりなんだ…。
思わず見たくなくて岳斗は視線を海の方に向けた。
仕方ないけど!
岳斗だって千尋先輩のカッコイイとこは大好きだから何も文句言えないけど!
でも…。
離れて本当に大丈夫だろうかという不安は常にある。
「ひゃうっ!」
冷たいペットボトルが頬にあたった。
「飲め」
「……うん。ありがとうございます」
千尋先輩は煙草を咥えて一人で戻ってきた。
「…女の人は…?」
「知らねぇ………何?気にするのか?」
千尋先輩がにやっと笑う。
「…気にする、に決まってる…」
だって岳斗は男だから…。やっぱ千尋先輩は女の人の方がいいのかな、とか…。
千尋先輩から視線を外して受け取ったペットボトルの口を開けてぐいと飲んだ。
「バーカ」
千尋先輩がそう言って岳斗の頭をコツンと小突いた。
そのまま一気にジュースを空にして、バイトの前に汗を流したいと千尋先輩が言うので一旦千尋先輩の家に向かう事にした。
「Tシャツ貸すからお前もシャワーする?」
千尋先輩があちぃ、あちぃ、言いながら家に入って聞いて来たのに岳斗は逡巡する。
「え…で、でも…いい、です」
千尋先輩の親は仕事でいなくて留守だった。
「それとも1回してから?」
「え…?」
「岳斗…」
千尋先輩のクーラーの利いた部屋でキスを交わした。
「あんま機会ないから…お前が嫌ならしないけど。夏休みに入ってからは会う度にしてっけど…。別にしたいから会ってるんじゃねぇから」
岳斗は自分だってもしかしたら、と仄かに期待はしていたので首を振る。
「…したい…。千尋先輩…」
だって一番千尋先輩が間近に感じられる。
岳斗だけの千尋先輩だと思えるから。
外に出るといつも千尋先輩は人の視線を集めてしまうから気が気じゃない。
こうして部屋で二人でいられれば岳斗だけしか見ていない。
「…お前も欲しい、って思ってる…?」
「ほし、…い…よ」
岳斗が自分から千尋先輩の首に腕を回して抱きついた。
もう何度も来た千尋先輩の部屋。
黒を基調にしたちょっと煙草の匂いがする、千尋先輩の匂いがする部屋。
「岳斗」
千尋先輩と唇を合わせればそのままベッドに運ばれて、千尋先輩を身体に受け入れる。
もうすっかり岳斗の身体は千尋先輩に与えられる快感を覚えていて、キスだけでさえも感じてしまう。
「こんな、なる…なん、て…」
何処もかしこも敏感になって千尋先輩を待っているんだ。
身体に残してもらった痕はもうなくなっていた。
「ちひろ、せんぱ、い…痕、残して!…ほし、い…」
「ああ…」
服に隠れる場所に千尋先輩がきゅっと肌を吸い上げて痕を残していくのに安堵する。
もっと、ずっと、…コレが残ってればいいのに。
コレがあると千尋先輩に愛された証拠のような気がして。
消えると夢だったような気がして。
そうじゃない、ってわかってはいるけれど。
だから、いっぱい痕が欲しい。
ずっと残るような痕が…。
岳斗が望んだようにキツく、痛い!と声をあげる位キツく吸われた。
岳斗の思いを千尋先輩は分かってる?
「ずっと残ってればいいのに…」
岳斗が思っていた事を千尋先輩がぽつりと呟いた。
あ……。
分かってるんじゃなくて、千尋先輩もそう思ってた、って事?
「千尋先輩!…あ、の…俺も、していい…?」
千尋先輩が自分の胸辺りとトントンと示す。
ここに…?
そっと岳斗が千尋先輩の胸に口を近づけて思い切り吸い上げた。
「…初めてつけた…」
千尋先輩につけた初めての自分の印に岳斗は満足して小さく笑みが零れた。
テーマ : 自作BL小説
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