「昼飯食ってちょっとぶらついてライブハウスに行くから。見たいだろ?」
「うんっ」
どんな所で千尋先輩が来年から過ごすのか、見たい。
いいけど、人の多さに岳斗はきょろきょろしてしまう。
東京に来た事ないわけじゃないけど、こんな風に個人だけで、というのは初めてだ。
そして寄る人波に岳斗はどん、とぶつかると流されそうになってしまう。
「岳斗」
千尋先輩が岳斗の腕を掴まえてくれた。
「ありがとうございます」
「お前、はぐれるなよ?服の裾でも持っとけ」
「…うん」
「ホントは手繋いでやりたいとこだけどな…」
岳斗の耳に囁くように言ってくるのに岳斗はぶんぶんと首を振った。
そして千尋先輩のジャケットを掴んで安心して周りの状況を見てみると、やっぱり千尋先輩は人目を引いていた。
何処行ったってカッケェ人はやっぱカッケェんだ!
ホントに自分なんかでいいのかなぁ、と思ってしまうけど…。
千尋先輩は男の俺が服の裾掴んで歩いてるのにも全然気にした様子もなくて、岳斗の耳元にその甘い声を囁いてきたりするのに岳斗は顔が赤くなる。
自分なんかのどこいいんだろう…?
思わず岳斗は前を歩く足の長いベースを背負った人をじっと見た。
髪が肩にかかっていて颯爽と歩いてる。
ふわりと漂ってくる千尋先輩の匂いに顔を俯ける。
…なんか落ち着かない。
だって千尋先輩が来年から過ごす所に一緒に来てるなんて。
「岳斗、何食べたい?」
「安いとこでいい。牛丼とか、マックとか」
「いいよ。折角来たんだから。クリスマスだし」
何処もかしこもクリスマスな感じで歩く人達もどこか浮かれたように見える。
「ううん。いいよ。早くライブハウス行ってみたい」
「…じゃ夜な?」
「夜もいいよ。コンビニ弁当とかで……むしろその方嬉しいかも」
だって外にいれば皆が千尋先輩を見るから。
そういえばさっきごまかされたけど何処に泊まるんだろ?
どこかホテル?
だったらやっぱり外で食べるより部屋の方がいい。だってそうすれば千尋先輩は岳斗だけの千尋先輩になるから。
「…バーカ」
そう言いながら千尋先輩が岳斗の額を軽くでこピンした。
「いてっ」
「いたくねぇよ」
「痛い!」
一緒にいられるのが嬉しい。
「じゃ軽く食って行く?今日クリスマスライブあるんだ。見るだろ?チケット取っておいた」
「うん。見たい!千尋先輩もそこのステージに来年は立つ事になるの?」
「ああ。立つ。でもそこは出発点だ」
「……そうだね!」
メジャーになるための出発点。
そこのステージを見られるんだ。
「千尋先輩…連れて来てくれてありがとう」
「………礼はまだ早いぞ?」
確かに!まだ見てもないんだから。
ハンバーガーを顔を突き合わせて食べた。
それだけで全然嬉しい。
だって今日はずっと一緒にいられるから。
ずっと何も話してくれない千尋先輩に不安を覚えていたけれど、こうして連れて来てくれるなんてやっぱり取り越し苦労だったんだ!
そう思えればますます岳斗の心が軽くなってくる。
「千尋先輩」
抱きつきたいなぁ、と思ったけれどさすがにそれは無理だろう。
そう思っていたら千尋先輩が岳斗の頭を抱えてきた。
「……夜、いっぱいしよう、な?」
「……そう、じゃなくてっ!!!」
千尋先輩は声を立てて笑って岳斗は真っ赤になりながら千尋先輩の胸を叩いた。
「煙草吸ってくる」
千尋先輩は逃げるように灰皿をもって喫煙ルームに行ってしまう。
知らない所に一人でポツンといると途端に不安で寂しくなってくる。
でもすぐに千尋先輩が戻ってきた。
「んとに、煙草吸うのもひでぇ…」
「………千尋先輩、ホントは吸っちゃいけない年でしょ?いくらオトナっぽいからって!」
1コしか違わないはずなのに見た目では絶対5歳以上も違って見えるだろう。
「お前はダメだぞ?…ま、売ってもらえないか」
「ええ、そうでしょうけどね!」
子供っぽいと言われているようで口を尖らせれば千尋先輩がくくっと笑う。
「…やっぱお前といるの楽しいな」
「…そう?」
「ああ」
千尋先輩の満足そうな顔。こういう顔も久しぶりかも。
「…俺も、楽しいし、嬉しいよ?」
「ああ」
千尋先輩が立てかけていたベースを背負い、岳斗も立ち上がった。
「さ、行ってみるか?」
「うん」
ライブハウスが広い、とは聞いていたけれどどれ位なんだろう?
千尋先輩のスタートの場所。
胸が高鳴ってきた。
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お詫び
ここ数日のコメントのお返事に誤字、変換間違いがかなりあります↓
すみません…m(__)m
頭痛が酷くて見直しもできていなかったので…申し訳ございません…
もう一度打ち直しすると日付も変わってしまうので
そのままにしちゃいますが…^^;
漢字間違いは脳内で変換してください…(セルフサービスか!? ^^;)
それとGがぬけてありがとうございますがよく
ありあとうおざいますになってます(--;)
キーボードの接触が悪くて…いつもは見直すのですが
それも出来なかったので…
申し訳ございませんm(__)m
ご了承くださいませ…
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