「ああ、俺も…歌にも込めてた…歌詞、聴こえたか?」
「少しは…あれ…も一回聴きたいな…」
千尋先輩の唇が岳斗の首筋を舐めて移動していく。
「……そのうち、な」
「ん……ぁっ!」
乳首を食まれてぞくぞくと快感が岳斗の身体を駆ける。
そして千尋先輩の長い指が、大きな手がベースを奏でる指が岳斗の身体を翻弄していく。
千尋先輩に触られるだけで岳斗は敏感に身体中が反応してしまうのだ。
「ちひろ、せんぱ…い…」
声にも熱が籠もってしまう。息も身体も熱い。きっと視線もそうなんだ。
だから千尋先輩に全部分かられてしまうんだ、きっと…。
でもそれでいい。分かってもらえてるなら。
分かって貰えて、こうして傍にいる事を許してもらえるなら。
思いが溢れすぎて自分でも持て余してしまう。
離れるのはたった1年だ。
ううん、きっと岳斗は我慢できなくなるから、卒業したらすぐに千尋先輩の所に行ってしまうだろう。2月だってきっと学校がなければ千尋先輩の所に行く。夏休みも冬休みも。それを考えれば1年にも満たないんだ。
「俺、行くから…」
「ああ、待ってる…。俺も来られる時は来る。岳斗…お前に会いに」
「うん…いっぱいキス、して…いっぱい……ほしい」
「ああ、身体中全部にしてやる」
くすと千尋先輩が笑った。
千尋先輩…。
なんでこんなカッコイイ人が岳斗なんか好きでいてくれるんだろ?
特別に思ってくれてるんだろ?
ずっと夢見てる感じだ。
「好き…」
「知ってる」
千尋先輩の熱い吐息を含んだ声が岳斗の耳を擽る。
千尋先輩の熱い手が体温が息が岳斗に思いを伝えてくれているようで、それが嬉しいと思う。
「…俺で、いい、の…?」
「ああ?」
「だって…千尋先輩…かっけぇ、のに…すっげ…もてんのに…」
「バーカ。そんなの意味ねぇだろ…。俺だってお前を残してくのは不安だ」
「…え?」
何が?と岳斗は千尋先輩の目を見つめた。そして千尋先輩の手が岳斗の前髪をかき上げて額にキスする。
「…俺だけ見てろよ?」
「…………誰も見えないけど?千尋先輩だけだよ?ずっと」
千尋先輩が口角を上げて笑みを見せる。
「ちひろ、先輩…」
千尋先輩の長い髪が岳斗の顔にかかって顔が近づいてきた。
岳斗が舌をそっと差し出すと千尋先輩がそれを受け止め、絡めて唇が重なった。
心臓が苦しい。
「んっ…」
千尋先輩の舌が岳斗の口腔の中を舐(ねぶ)ってくるのに息が上がってくる。これだけでもう身体は敏感になってふる、と震えてしまう。
千尋先輩の手がわき腹から上に岳斗の身体を撫で上げるのにぞくぞくして…。
「ぁっ…!」
小さく尖った乳首を摘まれればびくんと身体が揺れた。
引っ張られ、抓られ、捏ねられ、そしてキスは食べられそうな位に激しいのに浅く息が漏れ、唾液が口端を伝っていく。
「やぁっ……」
身体が感じすぎる…。
「岳斗…」
唇を離した千尋先輩の顔をうっすら目を開けて見てみると唾液で唇が濡れているのが目に入り、かっと顔がさらに熱くなる。
そんなでも千尋先輩はカッコイイままだけど岳斗はきっと情けない顔になってるはず。
恥ずかしい…。
官能に身を任せる事になるなんて。
思わず顔を隠すとすぐに手を退けられた。
「隠すな…。全部見せろ…。岳斗。エロい顔も声も濡れた唇も感じやすい身体も…全部俺だけに、だ…」
「千尋先輩、だけ…千尋先輩、にしか…こんな、なんない…もん…」
「それでいい…」
「あ、ああ…んっ!」
千尋先輩に胸の尖りを口に含まれて思わず声が上がった。
しゃらりと千尋先輩から貰ったネックレスが音を立てる。
「岳斗…気持ちいい…?」
「んっ……」
胸にある千尋先輩の頭を抱えるように抱いた。
長い髪が岳斗の肌を擽っているのにもびくびくと感じてしまう。
いっぱい感じさせて。
いっぱい感じて欲しい。
千尋先輩の全部を。
岳斗の全部を。
どこもかしこも岳斗の全部は千尋先輩だけの物だ。
こんなに感じるのも、千尋先輩だからだ。
好き、大好き…。
寂しいけれど、でも分かってる。知っている。
そうしなきゃないのだと。
岳斗だけは千尋先輩の味方で理解者で、そしてファンなんだから。
送り出して欲しいと言った千尋先輩だってきっと先は不安なんだ。
岳斗は千尋先輩を信じて、そして笑って送り出すんだ。
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学