「あ、ああっ!」
それだけでびくびくと反応してしまう。
もう岳斗の中がすっかり待ち構えていたみたいに反応してしまう。千尋先輩を離さないようにときゅっと締め付けてしまう。
「岳斗…中が…」
千尋先輩の声が上擦っているのに感じているんだ、と嬉しくなればさらにひくりと中も反応してしまう。
岳斗が反応すると千尋先輩自身もぐんとさらに質感を増す。
「…だめだ…動くぞ」
「ぁ……ぁんんっ!」
ずっ、と腰を引かれてそして奥まで穿たれる。
いつもゆっくりから始まるのに今は我慢出来ないのか性急に衝かれ、それでも慣れた岳斗の身体は官能に支配されてしまう。
千尋先輩の手が岳斗の身体の上をさわさわと撫でて移動している。この手の動きが千尋先輩がベースのネックを移動する時に思い出してしまうんだ。
ベースをスライドさせる時のように岳斗の身体を手が滑っている。
肉のぶつかる音が響く中、奥まで千尋先輩のものを咥えて、あられもない嬌声を上げて受け入れる岳斗はやっぱりこんなの千尋先輩とだけしか出来ない、と思う。
千尋先輩だから、何されたっていいし、したいんだ。
千尋先輩…。
明日からは隣にいない。電話してもすぐに来られない。
夜に公園に来てくれる事もない。
身体中全部に刻んで!千尋先輩を!
「ああっ!」
さらに激しく抽送を繰り返され、追い上げられる。
何度も、何度も。
キスも身体中に。
印はキツく。
後ろは千尋先輩を忘れないように。
手も顔も髪も匂いも。
全部全部…。
何度も精を吐き出されて、とろとろに蕩けた中を風呂で洗い流されるのが途轍もなく恥ずかしい。
一言も明日の出発の事は話さない。
明日は明日。今は今だ。
今は千尋先輩をいっぱい感じる時間。
首のネックレスが動く度に存在を訴えるのが嬉しい。
千尋先輩の思いの籠もった十字架。
それを岳斗が受け取ったのだ。
「千尋先輩…これ…大事にするね」
きゅっと岳斗が十字架を握った。
「千尋先輩…俺、なんでも半分こがいいな」
「半分こ?」
「うん。嬉しい時、楽しい時、一緒にいて笑っていたい。同じ事を知って、感じて。それだけでなく…辛い時、悲しい時も一緒にいたい。一人は嫌だ…。ライブの時も一緒にその場にいたい。俺はどうしたって演奏する側にはなれないけど、でも一緒に空気を感じたい。苦しみも何もかも全部、半分こ。………これ、千尋先輩の半分俺貰った、って事でいい?」
ベッドに並んで座って岳斗がそう言ったら千尋先輩が目を見開いて岳斗を凝視していた。
そしてバスローブを着てる岳斗の身体をそっと抱きしめ、顔を岳斗の肩に埋めてきた。
「岳斗…だから…なんでお前は……」
千尋先輩の声が苦しそうだ。
「千尋先輩?」
どうしたのかな?と岳斗は思いながら千尋先輩のお風呂後で湿った髪を撫でた。
小さく千尋先輩の肩が震えていた。
「……一緒だ…。ずっとな。半分こで…。お前の我慢するとこも全部分かってるから。無理するところも」
「へへ…大好きも半分こ?」
「それは俺の方が大きいかもしれない」
「嘘だ!それはないよ!絶対俺の方が大きいもん!」
「そんなの岳斗には分からないだろ」
「分からないけど、分かるもん!だって俺全部千尋先輩の事ばっかだから!」
「俺だって岳斗の事考えている。だから恥ずかしいあんな歌ばっかになるんだ」
ぅ…と岳斗は思わず言葉に詰まる。
「でもノリのいい曲だって…」
「あれは歌詞俺じゃねぇ」
「……」
じっと顔を上げた千尋先輩と視線を合わせる。
「そう、なの?」
「そう。まぁ、どうせ他人が聴いたってなんてことないかもしれねぇけど…お前には聴いてほしいと聴いて欲しくないは半々だ」
「…俺は聴きたいもん。いっつも俺千尋先輩がどう思ってるかなんて分かんないから…歌でこういう風に思ってくれてるんだぁ、って分かるから」
「………歌詞の半分は嘘だ」
「それが嘘でしょ?」
千尋先輩が耳まで仄かに赤くしてる。珍しい!
やっぱ嘘じゃないって事でしょ!
「この間の、俺の誕生日の時の曲の歌詞教えて?」
「…嫌だ」
「なんで!?」
「恥ずかしいからに決まってるだろ」
「ずる~い!千尋先輩は俺の事全部分かってるっぽいのに!」
「…岳斗の目が分かりやすいからな」
やっぱそれってずるい。
でもいつか聴けるはず。
コツンと額をくっつけてそして笑った。
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