何度もキスを交わした後も離れがたくてずっとくっ付いたまま。
だって足りなかったんだもん。
「GW休み長いな。よかった。飛び石だったらずっと短かった」
「うん。学校いっつも2日休みでしょ?だからよかったんだよね!」
土日かかって、1日は学校行事の振り替え休日、2日が創立記念日。おかげで29日から5日まで休みだ。
その間ずっと一緒にいられる。
「岳斗……」
千尋先輩が岳斗の肩に頭を乗せた。
「バイトもバンドもなんも問題ねぇけど…お前がいねぇのが辛ぇ…」
「…俺も…千尋先輩いないの寂しい」
顔を合わせた。
「ライブは2日あと4日も休み貰ったから。わり、5日は取れなかったし、その他はずっと仕事になっけど…出勤が遅いから5日も駅まで送ってく」
「…うん」
出発の時はあんなに泣いたけどほら、もう4月は終わるんだ。そしてこうして会えるしきっと来年まですぐだ!
岳斗は自分に言い聞かせた。
お昼を狭い簡易キッチンで一緒に隣に立って、手を伸ばしてすぐ隣にいる千尋先輩に満足する。
けれどお仕事で夜いないのが寂しかった。
それでも千尋先輩の香りのするベッドに入れば思わず顔はにやけてしまって…。
帰ってくるまで起きていようと思ってたのにいつの間にか眠ってしまい、目が覚めたら千尋先輩が隣に眠っていた。
さわさわと千尋先輩を確かめるように触ってたらそのまま千尋先輩に抱かれて久しぶりの感覚に感じまくり、それは毎日続いた。
だって会えた時しか出来ないから。
でもあっという間に時間が過ぎていってしまう。
なんで会えない時はあんなに時間が過ぎるのが遅いのに一緒にいるとこんなに早いのだろう?
あっという間にライブの日になって2日。
千尋先輩のベースはやっぱりカッコよくて目が離せない。
千尋先輩もずっと岳斗を見てくれて、なんか歌が全然入ってこなくて困ってしまった。それ位千尋先輩が足りなかったんだ、きっと。
余裕がないんだと思う。
時間が限られているから。
だから千尋先輩しか見えていないんだ。
千尋先輩の部屋。
あの岳斗のプレゼントしたTシャツが飾られていた。
そして指にはリング。
岳斗の胸には十字架の千尋先輩のネックレスがいつでもかかっており、今は岳斗も千尋先輩から貰ったリングをしている。
特別な天使の翼。
エール・ダンジュ…。
バンド名を思い浮かべる度に岳斗は嬉しさで胸が締め付けられそうになる。
ライブではやっぱり千尋先輩の背中には輝く白い翼があった。さらに輝きを増してきたと思う。
なんで岳斗にだけ見えるんだろう…?不思議だ。
「……尚にはよく会うのか?」
千尋先輩が休みの日。
もう明日は帰らないといけないんだ。
早すぎる。帰りたくない。離れたくない。
「…え?」
そんな事を思ってたから質問を聞いてなかった。お昼は軽く食べに行こうと千尋先輩と外に出かけていたのだ。
「尚、に」
「ああ、尚先輩?うん。バイト先にたまに来る」
「……あの日…俺が出た日も尚が来たんだろ?」
「え!?なんで?…って尚先輩か……なんでバラすのかな……泣いてたって言った?」
「…ああ」
「俺、折角頑張って笑ってた…のに。千尋先輩に笑って行ってらっしゃいって言いたくて…頑張ったのに。その後の事なんか言わないでくれたらいいのに!」
「岳斗…」
千尋先輩が岳斗の頭を抱えた。
「それでも俺は…俺には見せて欲しいんだ。岳斗の全部を…。尚なんかに見せるな」
頭を抱えられて小さく囁かれた。
「え?そこ?」
「そこだ!ムカつく野朗だ」
「?」
何が?岳斗がきょとんとした。
「いい…岳斗、お前はそのままで、な…?」
「うん?何が?千尋先輩好きなとこ?変わんないよ?」
「…………さっさと食って買い物して帰ろうか?」
「うん」
やっぱり外よりも家の方がいい。いつでもくっ付いていられるしキスできるし触っていられるから。
千尋先輩の意味合いはちょっと違って、帰ったらすぐにまだベッドに直行してしまったけれど。
そんな感じであっという間にGWが終わってしまった。
6月にもまた週末のどこかで来るね!と約束して新幹線で帰って来た。
別れる時が嫌だ。
会えるときはあんなにドキドキして嬉しいで埋まっているのになんでこんなに別れる時って辛いんだろう。
そして岳斗の手には新たに増えた宝物。
千尋先輩のアパートの鍵。
2個しかないから、これを持っているのは千尋先輩と岳斗だけだから、と千尋先輩から渡された。
いつでも来ていいから、と。
テーマ : 自作BL小説
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