エール・ダンジュ ailes d’ange は今はもう誰もが知ってるって言っていい位有名になってしまった。
たった2年やそこらで…。
岳斗は湯船に浸かりながらぼうっとして考える。
メディアにはめったに出なくて、それでもライブ、コンサートは一瞬でソールドアウト。
今はあまりにも巨大化してしまって、今はそれぞれソロ活動とかして自分の充電期間にしているらしい。
たった2年でソロ活動って…。
バンドを続ける為って千尋先輩は言っているけれど。
連日テレビからはエール・ダンジュの曲が聴こえてくる。
何かの主題歌だったりCMだったり。
エール・ダンジュのメンバーは元々皆才能に突出してたみたいで、たまたまそれが千尋先輩がライブハウスに行った時に縁あって声かかって集まって一気にバンド結成になったらしい。
ビジュアル的にもボーカルの人はモデルしてる位でかっこよくて人気もすごい。
その影に千尋先輩がちょっと隠れているけれど、それでよかった、と岳斗的には思ってしまう。
そうじゃなかったらきっと千尋先輩は人気を独り占めにしてしまうから。
それでも普通ベーシストって目立たないのに、千尋先輩はやっぱり人気がある。
「……だってかっけぇもん…」
その人と一緒にいられるというのが夢みたいだ。
千尋先輩は今は作曲する事も多くて、他の人に楽曲提供もしてる。
本当に凄いんだ…。
そしてベースの助っ人で入ったり…。
まだ高校生の時、50’sでいつか岳斗がそんな事を言ったけど、本当に言ったとおりになっているんだ。
「……凄すぎ…」
自分はまだ専門学校出たばっかのペーペーで、怒られ、走り回って、くたくたになって…。
千尋先輩の何の役にも立ってないのにこうして一緒にいてくれる。
ワンルームのアパートからは考えられないように、今はセキュリティ付きのマンションだ。
週刊誌のカメラマンとかファンが来るからセキュリティ付きじゃないとダメらしい。
…分かるけど…。
岳斗はぶくぶくと顔半分湯船に沈んだ。
岳斗が千尋先輩を大好きなのは変わらない。全部。
でも、自分は何もないのになんで千尋先輩は岳斗と…?
きっといっぱい綺麗な人とか凄い人だっているのになんで岳斗?
こんな俺なんか…。
岳斗は胸に下がっている十字架と天使の翼の片割れのペンダントトップを握った。
「岳斗?沈んでるんじゃないだろうな?」
「沈んでないですっ」
考え事してたら時間が結構過ぎ去っていたのか千尋先輩がお風呂場に顔を出してきた。
「ならいいけど。ふやけるぞ?」
「…うん、今あがる」
ざっと岳斗は湯船からあがった。
千尋先輩…。
お風呂からあがってなんとなく心細くなってしまい、キッチンにいた千尋先輩の背中にへばりついた。
千尋先輩の翼はもう煌いて光を放っている。
岳斗には眩しすぎて近づけない位に。
「岳斗?どうした?」
「…ううん」
好き。大好き…なんだ。
岳斗にはなんにもないけど千尋先輩が大好きなのは誰にも負けないと思う。
背中に抱きついている岳斗の身体を千尋先輩が向きを変えて向かい合わせで抱きしめてくれた。
「寂しいのか?」
「……ううん。ちょっと違う。…よく分かんない」
なんかわけも分からず岳斗は泣きたくなってきた。
だって千尋先輩が優しいからだ。
こんな何もない岳斗にずっと千尋先輩は有名になっても変わらずいてくれる。
「千尋先輩…」
大好き…。
「…岳斗」
ちょっと潤んでしまった目を見ながら千尋先輩がふっと表情を崩し、そして岳斗の顎をすくうと顔が近づいてきた。
「ん、ぁ…」
重なる唇にすぐ岳斗の身体は戦慄いてしまう。
何度ももう数え切れない位交わしたキス。
キスもセックスも岳斗は千尋先輩しか知らないけれど、絶対これ以上気持ちいい事ないと思う。
いつもいつもキスだけでも感じてしまって大変なんだから。
千尋先輩の舌が絡んで湿った音が静かな部屋に響く。
「ぁ……ぅ…」
それだけで岳斗は顔が紅潮し、息がもう浅くなってきてしまう。
千尋先輩…。千尋先輩…。大好き…。
キスしながらいつもいつもそう思ってしまう。
そしてそっと離れる千尋先輩が名残惜しい…。
もっと…。いつもそう思ってしまうんだ。
「岳斗…折角飯用意したのに…。食べるの後にするか?」
「ううん。お腹すいたから食べる!」
岳斗がそう答えればくくっと千尋先輩が笑った。
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みらいさんからえちシーン届きました
でもみらいさん曰く失敗だそうで…
全然そんな事ないと思うのですが~
小さく控えめにとのお達しが出てるのです…^^;
なので本文に貼り付けてみました~
みらいさん大丈夫でしょうか~~~?^^;
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