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2012.09.04(火)
すっかり夜になっていて怜が慌ててご飯の支度をする。
「パスタな!手抜きでわりぃ」
「そんな、事ないっ」
怜がばたばたと用意するのを明羅も少しだけ手伝う。
「いいぞ?座ってて」
「……大丈夫」
明羅はかっと頬が火照る。
まだ違和感があるし、少し身体は重いけど動けないほどではない。
「そう?」
ふっと怜が口元を綻ばせれば明羅は恥かしくて怜から顔を背ける。
「明日は立てない位な!…あ、いや、それじゃまずいか…お前が毎回動けなくなるのはダメだよな…明羅の仕事邪魔してんの俺だな…」
怜が明羅をじっと見てる。視線は感じたけど目は合わせられない。
「ん~…でも仕方ないよな」
え?そこ言い切る?
「だって初心くて可愛いのがいけないよなぁ」
「……それ、間違ってる、と思うけど…?」
「いいやぁ。間違ってない」
怜は茹で上がったパスタをベーコン、ガーリック、キャベツを炒めたフライパンで軽快に絡めている。
その手順や手際を明羅はじっと見た。
自分も出来れば怜の負担は軽減するはず。
ずっと見てるからいくらか覚えられていると思う。そのうち挑戦させてもらおうと目論んでいた。
「明日生方と打ち合わせあるから。ただ時間が微妙なんだよな…早く終われば迎えに行けるが、終わんない時は出てきてもらっていいか?」
「うん」
「じゃ、学校終わったら電話よこして」
「…うん」
「朝は送ってくけど。本当に大丈夫か?」
「大丈夫だってば!…朝も、平気、だと思う」
「いや、朝は責任とって送るから。煽ってくる明羅くんが悪いんだけど」
「……煽ってない」
小さく抗議した。
「煽ってるでしょ。俺はおりこうさんに待て、してたのに。してくれない、なんて言うから」
かぁっと顔が熱くなってくる。
「だって…」
もういらないのかと、思って。
「だって…?」
「……」
言えない!
「…何でもない」
「だからそこで抑えちゃダメだってのに。今度は可愛く、して?って誘ってね?」
くくくっと怜が笑ってるのにまた顔が赤くなる。
「いや、まじで。それで家帰る、なんて言われたら泣くぞ?」
「…それ嘘だ」
「うん。だって離さないから」
平然と怜が食事進めながらそう言いきるのに明羅はどうしていいか分からなくなる。
「……言わない、から」
「…そうしてくれ」
ふざけた口調だった怜が真面目な声になった。
「本当になんでも言っていいから。して欲しいでもして、でも。俺のここが嫌だとかも」
「え?怜さんのやなとこ…?」
「そう」
明羅は考え込んだ。
「…ない、けど?」
「偶然。俺もないんだな。欲求はあるけど。もっと自分を出していい」
「自分、を…?」
「抑えすぎる。飲み込みすぎる。……親が間近にいなかったから明羅はそうなんだろうけどな」
「そう…?なのかな…?自分では怜さんには出しすぎだと思うけど…」
「どこが!?」
怜が笑った。
「俺よりお前の方がオトナだ。俺は欲求のままお前が動けなくなる位にしちゃうし」
「…………そういう事、言われる…のは、恥かしいから、やだ」
「残念!俺は恥かしがる明羅を見るのが楽しいからそれは却下」
「………ずるい」
「オトナですから」
明羅は眦を染めた。
怜は言っていいというけど、だって何かを言って怜に嫌われたら嫌だ。呆れられたら嫌だ。この空間がなくなるのはもう耐えられない。
今のやだ、だってただ恥かしいだけで本当は嫌だなんて思ってない。
だから怜だって軽口で返してくるのだ。
「俺、…一緒にいられるだけで、嬉しい、から…」
「…………」
怜が明羅を見てはぁ、と溜息を漏らした。
「まったく…毎日俺は我慢大会だ」
「…は?」
「毎日毎日俺はイケナイ事したくて仕方ないのに煽ってくるわ、素で殺し文句並べるわ。困った子だね…」
「………我慢しなくて、いい、けど…?」
「だから!…それじゃ明羅が壊れる!絶対!」
そんなに…?
明羅は伺う様に怜を見た。
「でも、そうだな…今日は明羅も平気そうだから小出しにする事にしよう」
平気そう…小出しって…
「俺が溜め込むから爆発して明羅の負担になるんだな。よく分かった」
怜は一人で頷いている。
「それに俺が我慢すると明羅は不安になるみたいだし?」
全部怜に分かられてしまっているのに明羅は顔を俯けた。