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熱視線 間奏7~怜視点~

 明羅を攫うように連れて来た。
 明羅がいないとどうも何に対してもやる気が起きなくなってしまったらしい。
 いれば何を食わせようか、何を聴かせようかと明羅の反応が楽しみで、それがないと自堕落になってしまいそうだった。
 いないのが、一人が普通だったのに。
 あっという間に怜の中に入り込んできて大きくなって居座っているのに怜は自嘲を浮かべた。
 
 思わずしてくれない、なんて可愛い事を言われて明日も学校があるのにイタしてしまった。
 …でもわりと平気そうで、これならウィークデイでも出来そうかも、とほくそ笑む。
 さすがに体育がある前日はまずいだろうから、時間割を把握しておかないと。
 飯も食って、身体も疲れて、心も満足したのか明羅は穏やかな顔で、安心しきった顔で寝ていた。
 髪をさらりと撫でると体を摺り寄せてくるのに思わず顔がにやける。
 いい年こいて、しかもヤロー相手ににやけるのもいかがなものかと自分でも思わないでもないが、仕方ない。
 
 大事すぎる。
 ずっと真綿に包んで置いておきたい。
 無理させたくないと思って連日無防備に眠る明羅に悶々としていたが、そこはオトナだから我慢、いや、やせ我慢する。
 …と、思っていたのにあっさりと明羅はそれを取り去っていくのだ。

 自分に自信がないのか?
 自分を軽く見ているのか?
 明羅は自己主張が足りないと思う。
 もっと頼っていいのに。
 もっと我儘を言えばいいのに。
 車で送るというのにも断るし、まったく分かっていない。
 
 宗の事も心配だったが、どうやら宗が仄かな思いを明羅に感じる前に怜が明羅を手に入れた事で宗の中では明羅は怜のものという図式が出来上がったらしいことに安堵した。
 それならそうで学校にいる間は宗がいるから安心だと思ってしまうのに自分でもおかしくなる。

 小さい頃の宗を思い出す。
 怜の後ろをついて回るのを邪険にしていたと思う。
 もう少し相手してやればよかった、と今更思っても仕方ない。
 とにかく当時は怜はあの家を出たくて仕方なかった。
 家に帰ってこない父親。
 母親が一人寂しく亡くなった時とは違う立派な家。
 遊び呆ける継母。
 後ろをついてくる異母弟。
 どれもが苦痛でしかなかった。
 人の存在が許せなかった。
 あの家を出て一人になった時は清々した。

 それなのに…。
 あのコンサートに毎年来ていた子供がこんな存在になるとは思ってもみなかった。

 したくない?
 んなわけあるか。
 滅茶苦茶にしてしまいそうで怖いくらいだ。
 才能も潰してしまわないだろうか?
 そこにも不安がよぎる。
 今は怜の音があれば音楽が湧いてくるらしいが、もしそれがなくなってしまったら?
 そう思わなくもないがそれを考えても仕方のない事だ。
 先を考えても仕方ない。
 でも先を考えてやりたい。
 明羅のいる先の未来に自分もい続けられるだろうか?
 才能はすでにもう開花している。
 作る曲はどれも素晴らしい出来だ。
 だからこそCMにも使われる。
 すでにこれで、明羅はこの先も怜に満足するのだろうか?
 初めは音が欲しいと言った。
 じゃあ、明羅が別の誰かの音が欲しいと思ったら?
 
 後ろ向きになってしまいそうになるのに怜は頭を振った。
 今があればいい。
 そう思うしかない。
 きっともしそうなってしまったら犯罪に走ってしまう確信がある。
 明羅を閉じ込め、出してなどやらない。
 そんな狂気を孕んだ思いは隠しておかないと。
 オトナなんだからいくらでもずるくなれる。
 ずるいからこそこうして傍らに置いておけるのだ。

 「俺だけにしとけ…」
 明羅に願うしかない。
 「怜、さん…?」
 呟きが聞えたのかうっすらと明羅が瞼を開けた。
 「寝ない、の…?」
 「寝る」
 リモコンで電気を消して明羅の身体を抱き寄せればすりと擦り寄ってくる。
 「怜、さん…だけ…だよ?」
 聞えていたのか?
 「…何が…?」
 明羅の耳にキスして囁いた。すると明羅は擽ったそうに身体を捩る。
 「…全部…。ピアノ…も…欲しい、のも…」
 よほど眠いのか呂律が怪しい。
 「いい。寝ろ」
 「ん…全部…」
 すぅと寝息がもれ、また寝入ったらしい。
 とにかく寝つきは素晴らしくいいのだ。寝たら滅多に起きないし。
 くっと笑いが漏れる。
 全部。
 明羅にそういわれるだけで怜の気持ちは浮上した。
 
 
 

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