「なんだ?桜、頬っぺた赤くなってるぞ?」
理人がソファに座った桜の顔を見て、そして桜の頬を触った。
「…撫子にひっぱたかれた」
「兄妹喧嘩か?」
くくっと笑いながら理人はキッチンに行くと氷を袋に入れてタオルで包んで渡してくれた。
「一応冷やしとけ」
「……ん。平気、だけど?」
「一応な。手形になってるぞ?」
マジか…。よっぽど撫子は手に力が入ってたらしい。
「じゃ撫子も痛かっただろ」
「だろうな。……お兄ちゃんだねぇ」
理人が桜の隣に座って笑ってた。
「妹、可愛いだろ?可愛くなくても」
「…まぁ」
桜が頷くと理人が苦笑している。
「俺も妹いるから分かる」
「そうなの?」
「そ」
ふぅん…。理人にも妹いるんだ。
ふとじっと理人を見つめた。
撫子が理人を好き?本気で?…嘘だ…。
「………んん???」
桜は眉間に皺を寄せた。
そういや……。
「どうした?」
「あっ!いやっ!なんでもないっ!!」
売り言葉に買い言葉で、自分まで理人を好きだ、とか言った気がする。
嫌いじゃないけど…。
好き?
好きっていえば、黒田が言っていた言葉を思い出す。
ちゃんと好きになるってどんなだ?
撫子はちゃんと理人を好き、なのか?
撫子と理人が…?
嫌だ!
……どっちに?
「わっかんねぇ~~~~」
「何が?」
「ああ!んと…いえ…何でも…ないです」
「…桜、飯食ったの?」
「まだ!先に風呂入って、上がったとこで撫子が待ち構えてて、そんで出てきたから」
「じゃ、食う?お前が作ってってくれたものだけど」
「食う」
明日の分も、と思って多めに作ってたから桜が食べても平気なはず。
「明日の理人の分は明日また作るから…というか…その…」
泊めてもらえる、かな…?
伺う様に理人を見ると理人が苦笑していた。
「お母さんに連絡してOKなら別にいいぞ」
「うわ!やった……助かります…すみません」
理人がくっくっとまた笑っている。
「お前面白いな…。顔可愛いのに結構強烈だな」
強烈…。
「そんな事言われたの初めてだ…」
桜が作っていった物を理人とダイニングで向かい合わせで食べた。
「…スミマセン」
「いや?作ったの桜だし?」
理人はずっと笑いを噛み殺している。
「理人、笑いすぎる…」
「いや、本来俺はそんな笑う方じゃないはずなんだが…どうも桜は俺のツボに入るらしい」
そう言って口を抑えてまた笑ってる。
もういいけど。
笑われるのに諦めて自分で作った肉じゃがや和え物の味を確認する。
うん、大丈夫みたいだ。
「ほんと美味いな」
理人も笑いを治めて箸を進めた。
「口に合ってよかった」
「ああ、マジで生姜焼きもうまかったし、カレーも美味かった!今日のも美味い」
そして何か言いたそうにして理人は桜を見たけれど言葉を引っ込めた。
「…何?」
「いや…怒られそうだからやめとく」
……なんとなく察しがついた。
いい嫁さんとか言いたかったのだろう。理人をちらりと睨むと理人は肩を竦ませて視線を桜からそらしていた。
「あ…」
テーブルに置いていた桜の携帯が鳴った。理人の顔を見てから携帯に出る。
「もしもし……撫子は?…ああ、そう。…ん。今はり…っと、歯医者の先生ん家。泊めてもらうから。明日朝俺の制服と鞄届けて?ああ?だって出てけって言われたし!」
「桜」
電話を代わる、と理人が手を出していた。
「先生が代わる、って、うん」
はい、と理人に電話を代わった。
「もしもし桜くんお預かりしますので。…いえ、全然。かえってご飯の用意してもらって助かってますし。はい、……落ち着くまで、全然ウチは俺一人ですし構いませんので、はい」
桜くん、だって。
なんかこそばゆくてむずむずする。
「桜」
電話を返されて慌ててもう一度出た。
「もしもし?…ああ、うん…じゃあ」
電話を切って理人と顔を合わせた。
「…お願いします」
「はいよ」
そしてまた理人がぷぷっと笑っている。
「あ、いいけど。布団…ない事ないんだけど干してなくてずっと押入れに入ったまんまだ」
「いいよ?俺、別にリビングのソファでもいいし」
「………確かに桜のサイズだったらそこのソファでもいけるな…」
桜はむっとして唇を尖らせる。
本当のことですけどねっ!
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