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桜誘う桜守 19

 学校でも理人の家の鍵を握り締めて桜は顔が緩みっぱなしだ。
 「何そんないい事あったんだよ?チョーご機嫌だな」
 「え?ああ…そっかな?撫子に家出てけって言われて家出中だけど?」
 「家出~!?」
 「ばっか、声でけぇって!」
 黒田の腹にパンチを入れる。
 「いって!…まじで?そんで?」
 「そんで?」

 桜がきょとんとした。
 「どこにいるんだ?あ、すぐ帰ったのか?」
 「ううん。帰ってない。理人…っと…歯医者の先生ん家に泊まった」
 「はぁ?なんで先生ん家?」
 「うん。黒田ん家も考えたんだけど、お前ん家うるせぇし、先生一人だし、家から近いし」
 「…………そんでなんでチョーご機嫌?」
 「え?そうか?」
 そう言いながら桜の頬が緩んでくる。

 だって人の家の鍵だよ?
 それを渡してくれたって事はそれ位理人が桜を信用してくれた、って事だ。
 「鍵、貸してくれたんだ」
 「ああん?その先生が?」
 「そ!」
 「………………桜?」
 「ん~?」
 次の教科の教科書出すのに桜は机の中を覗き込んでいた。
 「合鍵?」
 「だろ」
 「……同棲……?」
 「…は!?何言ってんの?なんだそれ!?」
 「…あれ?ちげぇの?」
 「ばかじゃねぇの?理人も俺も男だってのに」

 黒田が呆れた顔で桜を見ていた。
 「お前、まじ…?」
 「何が?」
 「男同士でセックス出来るの知ってる?」
 黒田が顔を近づけて桜の耳元で囁いた。
 「は!?な、なに?嘘!出来るはずねぇだろ」
 「ばか?じゃあなんでゲイいるんだよ?出来るよ」
 「ど、ど、どう、やって…?」
 女のエロ本なんかは黒田と一緒に見た事あって知ってるけど。

 「耳かせ」
 桜が黒田に耳を向けると黒田が桜の耳元を手で覆いながら他のヤツに聞こえないように小さな声でとんでもない事を耳打ちした。
 「ま、ま、…まじ…?」
 「マジ」
 「…ちょ、…っと……待て!あのさ、じゃ、今まで俺に告白してきたヤローって俺にそういう事したい、って事…?」
 「だろ。まぁ、中には女と勘違いしてるやつもいただろうけど。基本、男だと知って告白してんだから」
 「無理っ!」
 キショっ!!!

 「……その先生はちげぇの?」
 「違うだろっ!だってかっけぇし!わざわざ男の俺なんか選ぶはずねぇだろ?」
 「……分かんねぇだろうが。俺はどんなに桜が可愛くたってヤローのモノがある時点でアウトだけど。顔可愛けりゃどっちでもいいって奴だっているし」
 ふるふると桜は首を振った。
 「いや…ない……」
 「そうか?まぁ、別に俺にはなんも関係ないからどうでもいいけど」
 黒田が自分の席に戻った。

 …男同士って…。まじで…?
 この間告白してきた奴の顔はあんまり思い出せないけど、あいつもそういう事を自分にしたい?
 キスとか?
 ぶるぶると桜は怖気が走る。

 同棲…?
 とんでもない事言うなぁ、と思いながら理人の顔を思わず思い浮かべた。
 そういえば朝、同じベッドで寝てた。
 背中合わせだったけど…。
 理人のカッコいい顔、とキス…。

 ぶわっと色々な理人の顔が浮かんだ。
 治療してる時にすっごい顔近くて、上から覗き込まれてて、あれでマスクなかったら…?

 ヤ、じゃない……かも…。
 え?なんで…?

 もう一度告白してきたヤローを思い出す。
 顔は覚えてないけどもし顔を近づけられたら…?

 いや!無理無理無理!
 きっと投げ飛ばすだろう。
 …なんで?理人は嫌じゃない?知ってる奴だから?
 じゃ、黒田は?
 ぞぞっと桜の身体中の毛が逆立った。

 そしてもう一度理人の顔を思い浮かべる。
 理人の大きい手が桜の頬を触って顔を近づけてきたら……。
 かぁっと想像して一人で桜は真っ赤になった。
 やっぱどう考えても理人は嫌じゃないらしい。

 なんで?????

 昨日撫子に好き、なんて言ったけど…。
 キスしたい、とか思ったら好き、と理人が言ってたけど…。
 好き…?
 キスしたい…?
 理人と…?
 どんな感じ、なんだろう…?
 …と考えて、ふるふると桜は頭を横に振った。

 違う、よな?
 …多分。
 人として好き、だよな?
 桜の憧れる理想の男な感じだから!だからきっと好き、なんだよな?
 恋愛の好き、じゃない、はず。
 またいっそう訳わかんなくなってしまった!
 なんで男なのに、男の事で考え込んでるんだ!?
 そうだ。考える方おかしいだろっ。

 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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