「すっげ、美味そう!」
理人がじっくりとテーブルに並んだ料理を見て満足そうにしてるのに桜もちょっと得意になる。
だっていつもより頑張ったし!
でも見た目だけよくても問題は理人が気に入ってくれるかどうかだ!
全部をよそい終えて席に座るとイタダキマス、と声を揃える。
なんかどれもこれも恥ずかしい気がしてならないけど…。
桜は理人が口をつけるのをドキドキしながら待った。
…どうかな…?
伺う様に向かいに座る理人を見つめた。
「美味い!」
驚いた顔の後に笑顔も浮かんだ理人に桜も満足する。
「ソース、デミでよかった?きのことかもどうかな、とも思ったんだけど」
「あ~、それもいいなぁ。いや、でもホント…桜、すごいな。お前、高校生男子なのにえらいなぁ…」
………あれ???
なんか…。
誉められてるのにあんま嬉しくない…。
「桜?」
「え?あ、ああ、ううん。…ありがと、…なのかな…?」
一瞬沈んだ気持ちを桜は押し隠す。
今の理人の言葉のどこに引っかかった?
ちらっと桜は自分も箸をつけながら理人を見た。
そしてぷっとふき出した。
「理人、口の端のデミソースついてる。恥ずかしいぃ!」
「うっせ」
理人が慌てたように舌で口の端を舐め取っているのを見て桜は思わずそれを凝視してしまった。
ざわっと身体が変に反応した。
…なに…?
「取れたか?」
「あ、うんっ」
頬が熱くて思わず顔を伏せた。
変だっ。
なんか心臓がどきっとした。
キス……。
……………したい……?
いや、違う、よな…?
だって理人も男だ。
ふる、と桜は頭を横に振って自分の作った料理に集中することにした。
でもどうしても理人の顔を見てしまう。
ちょっと長めの前髪で…、鼻高くて、目が切れ長でカッコイイ。
手も大きいけど綺麗。
持ってる箸が小さく見える。
「…なんだ?まだついてるか?」
ちょっとばつが悪そうに聞く理人に桜は内心どきっとしたけれどそれを出さないようにした。
「ううん?またついてたら教えてあげる」
「つかねぇよっ」
慌てたように言う理人に桜は笑った。
子供みたいだ。
………あ……。
さっき面白くなかったのは理人が子供に言うような口調だったからだ。
歳が12も違うんだから当たり前、なのに…。
「着替え取りに行ってきたのか?」
「あ、うん」
「水着も持ってきた?」
「持ってきた!」
「じゃ、明日の午後行くか」
「んっ!」
桜は思い切り頷いた。
やった!
やっぱり変!
歯医者の音だってプールだって桜は好きじゃないのに。
嬉しいんだから。
何が嬉しい…?
桜は理人をちらっと見た。
理人が満足そうに食べ終えれば桜も満足だ。
後片付けをしていると理人はカルテのチェックをしているらしい。
キッチンで隣に立たれるよりずっとその方が落ち着く。
今日は買い物に行った時に朝の分の卵やウィンナーとかも買ってきたので明日の朝はばっちりなはず。
お昼にはハンバーグの残ったタネでパスタにしよう、と理人の反応が楽しみで仕方ない。
ふふ、と思わず桜は笑いが漏れてしまう。
…さっきのドキは勘違いだ。…きっと。
理人のカルテと睨めっこも終わって、お風呂も借りて、ふかふかのソファでとっぷりと身体を沈めるように並んで座ってテレビを見ていたらとろりとと眠くなってきて、桜は広いソファでついころりと横になった。
「桜?なんだ?もう眠いのか?」
「ん~~ん?大丈夫……あ、俺ここで全然平気だよ?」
そういえば朝、理人のベッドで一緒に寝てたんだった!
……全然気付かなかったけど。
「いや、布団出してやろうかと思ったんだけど、なんかかび臭くて、な…天日干ししてからじゃないとだめだな、と思って。お前小さいし、細いし邪魔にならなさそうだな、と。なんかさすがにソファはちょっと可哀相な気がして。眠いなら上行って寝ていいぞ?嫌じゃなければ」
「…や、じゃないよっ」
や、なわけない!
……なわけない?
ううん???
やっぱなんか思う事が変な気がする。
「……理人は、俺、邪魔、じゃない…?」
「全然」
理人はテレビを見ながら普通に答えていた。
理人がテレビをずっと見ているのにこっち向かないかなぁ、ところんと横になった下から理人の横顔をじっと桜が見つめていると理人がぱっと桜に視線を向け、視線がばちっとかち合った。
わっ!
桜はがばっと起き上がった。
「あ、じゃあ、俺、もう寝るっ」
「はい。おやすみ。お子チャマだなぁ…まだ10時なのに。俺なんか高校の頃は宵っ張りだったけど」
「子供じゃないよっ!」
「はいはい。おやすみぃ」
理人がくくっと笑っているけど、笑われてる事よりもなんか自分が落ち着かなくて、オヤスミ!と挨拶してさっさと桜は二階に上がって行った。
テーマ : 自作BL小説
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