理人の誕生日!
思わず情報ゲットに桜はにんまりした。
なにげなしに免許証見せて、と言って見せてもらったら誕生日が書いてあった。
7月5日。
ちょっとでも知る事が増えると嬉しい。
思いもかけずコンビニで黒田と会ってびっくりしたけど、道場が近いし、黒田の家もここから近いから不思議じゃない。
それはいいんだけど、黒田が余計な事を言ってきたからどうしても理人を意識してしまう。
だって!だって!
…すっかりどう見たってデートみたいじゃん、って。
黒田が桜の肩を組んできたのになんだ?と思ったらふぅん、と黒田が鼻をならして、イケるかもな、って。
ホントかな?
ちらっと運転する理人を見た。
やっぱ、好き、だ、…と思う。
だってずっと見てたい、って思ってしまうから。
プールでだって理人と同じ位の背の人とか、ガタイいい人とかもいたけど、どうしたって理人にしか目がいかなかった。
それにあの助けてくれた時なんて…もう心臓がヤバイ位で。
なんか今日一日、いや半日でさらに桜の中は変になったと思う。
心配だ、って言われるのが嬉しいなんて。
そんなのいつもだったらむっとしかしない言葉なのに。
自分を女のように見てるからそんな言葉が出るんだ、といつもはそう思ってしまうのに理人が同じ事言えば嬉しい、っておかしいから!
理人は桜を女扱いはしないからか?
でも可愛い、って言われるのも、理人にだったら嬉しいでしかない。
やっぱり、どこもかしこも理人にだけは違うんだ。
一緒にスーパーに買い物に行ってまたパートのおばちゃんに今日は先生と仲良く買い物なんだ?と笑われる。
ついでに撫子もさっき買い物に来たよと教えられた。早く仲直りしなさいね、まで言われて、すでに事情が全部知られてるらしい。
…多分理人を取り合った、までの詳細は知らないだろうけど。
妹と喧嘩してなんて、とおばちゃんが呆れるのに理人はまた笑っている。
でも先生はお弁当から解放されてよかったのかなぁ?なんて言われれば苦笑に変わった。
「そうですねぇ」
理人が桜を見て頷く。
「そのまま桜ちゃんお嫁にもらったら?」
あはは!とレジのおばちゃんが豪快に笑うのに桜は思わずかっと顔が赤くなった。
「二人で買い物なんて新婚の若夫婦みたい~」
「そ、それっておかしいだろっ」
「全然~!桜ちゃんは可愛いし、先生はかっこいいからねぇ」
「う~~ん…桜が貰えるなら貰うんだけどなぁ」
理人までおふざけに乗ってそんな事を言い出すのに桜はますます顔が赤くなっていった。
「ふざけすぎっ!」
「わりわり」
理人が笑って桜の背中をよしよしと宥めるように撫でた。
理人には何でもない事かもしれないけれど、桜にしたらそれだけでどきっとしてしまうのに。
「もうっ!ふざけてないで、帰るよっ」
今日は車だからと、理人は嵩張るものも買いこんで、桜は普通に買った食材を入れた袋を持ち、それ以外を理人が持って車に乗り込んでやっと理人の家に着いた。
別に動揺しなければいいのに、理人を意識してしまっている桜はどうしても過剰な反応をしてしまう。
自分でも自覚はあったけど、ぱっと見は怒ってるようにも見えたはず。
そこにほっとした。
それはいいんだけど。
…理人は全然桜をそういう対象と見ていない。
それだけは分かる。
黒田もイケそうな気はするけど、今は全然桜を好き、というのとはちげぇだろ、と言ってた。
…なんで黒田がそんな事分かるのか桜には不思議だったけれど。
どうしたらいいのかな…?
朝の時点では好き、かも。だったのが、もう好き、に変わっていた。
キス、したい…?
抱きたい?
理人はそう言った。
キス…。
思わず理人の唇をじっと見てしまう。
…したい、かな…?
したい?
なんか違うような…?
抱きたい、は考えられない。
だって桜が理人を?
いやいや…。
頭の中で想像して桜は一人で首を振った。
される、側だったら…?
「桜?どうした?」
理人の低い声にびくんと桜の身体が反応してぞわっとした。
理人に桜の名前を呼ばれながら…って考えたら、かっと身体が熱くなった。
「な、な、なんでもな~~~いっ!急いで仕度するね~!」
桜は理人の家に着いて車から荷物を持ってわたわたとキッチンに駆け込んだ。
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