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桜誘う桜守 30

 ご飯を作って、食べて、お風呂も借りて、ソファに理人と並んで座ってたけどどうも落ち着かない。
 桜は身体をもぞもぞとずっと動かしてしまう。

 「桜?どうした?なんか帰ってきてから変じゃないか?」
 「え!?…そ、そう…?…かな?」
 「ああ。顔も赤いような…熱か…?」
 理人が桜に顔を近づけ、桜の顔を覗き込みながら額に手を触れてきた。

 うわぁ!近いよ!

 ソファに沈み込んだように座ってる桜の目の前に理人が覆うように近づいてくる。
 「熱はないな?」
 額を触った後、首筋も触られるとぞくんとして桜は目をぎゅっと瞑ってそして理人の服を掴んだ。
 あ、やっぱもうダメだ!
 「理人っ!」
 「うん?」
 「好きみたいなんだけどっ!!!」
 「……は?何が?」

 目を開けると目の前の理人の切れ長の目がきょとんとして桜を見ていた。
 さらにぐいっと桜は両手で理人の掴んでいた服を引っ張り、顔を理人に近づけた。
 顔から火が出そうな位熱い!
 今まで何回か告った事あるけどこんななった事なかった。
 心臓がどきどきしてる。
 やっぱり理人だけ違う。

 「俺が!理人をっ!」
 「………は?ああ、俺も桜好きだけど?」
 「意味ちがうっ!」
 「違う?」
 今の理人の<好き>は友達とかの好きと同等の<好き>だ!
 「…ええと……」
 理人が困った様に頭を傾げ、そしてはっとした表情をした。
 「……ええと?…そういう意味で?」
 「そう!………え、と……その……多分?」
 「多分~~~?」
 ぷっと理人がふき出した。

 「なんだ?多分って」
 「だって!わかんねぇんだもん!」
 「多分って言うんじゃ違うんじゃないのか?」
 「ちがくないっ!」
 だって目が回りそうな位いっぱいいっぱいになってるもん!
 今までこんななった事ないから!
 「理人…」
 桜はぐいと理人の掴んでた服をまたさらに力を入れて引っ張った。

 「おい、コラ」
 ぎゅっと桜が目を瞑ってキスしようとしたら理人が逃げた。
 「なんで逃げんの?」
 「当たり前だろ」
 「…当たり前、……なの…?」
 桜は口をへの字に曲げた。
 「理人は、やだ……なんだ…?」
 そっか…。
 キスしたいとか、抱きたい、が<好き>って言った理人は桜を<好き>じゃない、から…。

 「いや、やだ…ってんじゃないけど。多分、なんて言ってるんじゃな」
 しゅんとしてしまった桜に慌てるように理人が付け加える。
 「多分じゃないってば!…やだ……なんだ…」
 「いや、あ~~…や、というわけじゃない、けど…」
 理人が困った様にしている。
 「…や、じゃない…?じゃ、キスしていい……?」
 「なんでそうなる!?お前、ちょっと待て」

 理人が桜の額に手を当てるとぐいと桜の身体を離そうとした。
 「やだっ!」
 桜が余計に手に力を入れて理人にくっ付いた。
 「コラ。まず手離せって」
 「やだ!」
 手を離したら理人はきっと逃げるんだ…。

 「キスしたら分かる?好きって?俺わかんねぇんだもん!…したいって思ったんだもん!理人、キスしたいって思ったら好きって言ったでしょ?これ…好き、とちげぇ、の…?」
 「ああ~~…桜、まずちょっと落ち着けって。逃げないから」
 「落ち着いてるよ?」
 どきどきはしてるけど。
 「理人…俺の事、やだ…じゃない?」
 「う~~ん……やだ、はない、な…」
 かなり困った顔はしてるけど、理人がそう答えてくれたのにほっとした。
 「……やだ、じゃなかったら、キス、して…いい?そしたら…分かる?」
 やっぱり目の前にある理人の唇に目が惹かれてしまう。

 「ああん?そんな簡単にキスって。お前誰かとしたことあんの?」
 「ないっ!」
 「……お前、…男好きなの?」
 「ちげぇもん!理人だから……だもん…。男が好きなんてキショイ!」
 「キショイって…俺も男ですけど?」
 「だから!理人にだけ俺、変なんだもん!だから…」
 ぐいと桜は座っている理人に乗りかかかるように体重をかけた。

 「……じゃ、もしキスしてやだったら?」
 「ないっ」
 「……なんで言い切るんだ?」
 くくっと理人が笑ってる。
 なんでこんな余裕?
 桜が子供だから?
 「理人、俺が好きって、…言ったら……迷惑?」
 「う~~ん…迷惑…ってわけじゃないけど、困る、かなぁ」
 「じゃあ……好きって言うの今だけでいい…から…………なぁ?ダメ?」
 理人を押し倒すようにして少しずつ桜が理人との距離を詰める。
 どうしたって理人に力で敵うはずはないのに距離が縮まっていく。
 理人が逃げてない証拠だ。

 そしてぎゅっと目を閉じ、桜から理人に唇を重ねた。
 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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