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熱視線 練習曲~エチュード~1

 明羅は身体に重さを感じて目が覚めた。
 見慣れぬ天井。
 どこだっけ?と重い目をしばたいた。
 そしてあっ!と思い出し、隣を見た。

 夢ではなかったらしい。
 隣には眠っている二階堂 怜がいた。
 そして何故か怜の腕が明羅の身体に絡まっている。
 女と間違えているのか?
 明羅はむっとして怜の身体を揺すった。
 「重い」
 だがなかなか怜は目覚めない。
 「怜さん」
 「ん…んん……?」
 怜がゆっくり瞼を開けた。
 「あ、ああ?…明羅、か…」
 名を呼ばれてどくりと明羅の心臓が鳴った。
 二階堂 怜が自分の名を呼んでいる。
 昨日まではなかった日常だ。

 「…お前、朝見ても美人だな」
 「…………それ誉め言葉じゃない」
 明羅はむっとした。
 「なんで?誉め言葉だろ」
 怜は何事もなかったように腕を明羅の身体から外してベッドから起き上がると伸びをした。
 髪の毛がぼさぼさで無精髭も生えてる。着てるのはTシャツに下がスウェット。
 燕尾服の怜とはまるで別人だった。

 誰コレ?

 思わずそう言いたくなるような感じで明羅はくすりと笑った。
 普通だったら幻滅する所だろうが、昨日コンサートに訪れた人は誰もきっとこんな二階堂 怜を知らないんだと思えば優越感が増す。
 「何時だ今?」
 首をこきこき鳴らしながら怜は時計を見た。
 「おっと…」
 怜は携帯を手にとってどこかに電話をかけ、そのまま寝室を出て行ってしまった。
 明羅は自分はどうしたらいいのだろうかとベッドに座り込んだ。
 内容は聞こえないが話し声が聞こえてくるので怜は電話中らしい。
 話し声がしているうちは遠慮したほうがいいだろう。
 やがて静かになったのでもうそろそろ部屋を出てもいいかな?と思ったら怜がドアから顔を出した。
 「おう、こっち来い。朝飯作るぞ」
 明羅はこくりと頷いてベッドから降りた。

 割と広いキッチンに並んで立って、怜にコーヒーのセットの仕方を教わり、レタスを千切る。
 怜はフライパン片手にスクランブルエッグを製作中で、明羅は材料から料理になっていくのを不思議に思って見ていた。
 「どんなおぼっちゃまだ」
 明羅が全然何も知らない事が分かった怜が呆れた様に言った。
 「両親はほぼ家にいないから」
 「そりゃま…どうやってでかくなったんだ?」
 「ん…ええと、お手伝いさん、とかいたから」
 怜が絶句する。
 「……ありえねぇ」
 それは否定できないので明羅は黙った。
 「ま、今までは今までだ。ここいる間は少しは手伝え。そうすれば俺も楽だ」
 そこなのか、と思いつつ明羅は頷いた。

 「そういや電車は乗るんだ?」
 「そこらへんは普通。学校行くのも電車だし」
 「あっそ。運転手つきの車かと思った」
 「いることはいるけど」
 「………いるのか」
 はぁ~と怜は明羅を見た。
 「ま、いいや。テーブルに運べ」
 こぽこぽとコーヒーのいい香りがしてくる。

 すごい。なんか普通の家の朝ごはんって感じだ。
 食パンを焼いて、バターつけて、コーヒー飲んで。
 普段と変わらないメニューなのに向かいに相手がいるだけで、これを作ってもらって手伝っただけで全然気分が違う。

 フルコンのピアノを見ながら朝食。
 変な感じだ。
 「ここ、全部防音?」
 「まぁな。いくら一軒家でもさすがにな。一日中朝から晩まで弾きっぱなしの時もあるからな」
 ピアニストの音ならばさらに普通の人より響くはずでそうだろうなと明羅も頷いた。
 しかしこの広さを防音って…と明羅が絶句する。
 明羅の境遇に怜は驚いたようだったけれど、ここだって十分驚くだろうに。
 「後片付けする」
 昨夜教わったので明羅はかってでた。
 「おう」
 明羅が立ち上がって皿を割らないように細心の注意をはらって洗った。

 それを終えた頃インターホンがなった。
 「来たな」
 怜が立ち上がって何かボタンを押していた。
 門扉か、と明羅は思い当たる。
 すると程なく家のドアが開いた。
 「おお!怜!で、どこだ!?あっ」
 怜の隣に立っていた明羅を現れた男は凝視していた。
 「……お前、男に走ったのか?」
 ゆっくりと明羅から視線を外し、男は怜をまじまじと見てそう言った。
 まったくもってかなり失礼な男だった。 
 
 

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