用意を終えて帰る、と言う桜を送っていく、と理人も一緒に外に出た。
すぐ近くだし桜はいい、といったのに理人がいいから、と。
今出ないと一日外に出ない事になるからと理人が笑う。
でもそれがこじつけだとも分かる。
別に女の子じゃないのに…。
そう思いながらも少しでも一緒にいられるのはやっぱり嬉しくて、横目でちらっと理人を見ながら好きだなぁ、と思ってしまう。
隣を歩く理人の手を掴みたいなぁ、とか思っちゃうんだ。
頑張る、って黒田に言ったもののどう頑張ればいいのかやっぱ分からない。
「なぁ?」
「うん?」
「聞いていい?」
「何を?」
「…好きになってもらうのって、どうしたらいいんだろ?」
「はい?」
桜がじっと理人を見上げた。
そして理人は桜を見ていた。
「…どうしたら…って聞かれてもなぁ。理屈じゃないだろ。いいな、好きだな、と思った所だってじゃあなんで好きか、っていえば分からないだろうから。理由があって好きになるんじゃないし。自分がそう思っても相手に強要も出来ないしなぁ」
「……そうだね…。でもやっぱ俺、理人好き。理人が迷惑で嫌だ、って言うなら…もう言わないけど。理人嫌じゃないって、言ったよね?困る、って言ったんだ…。嫌じゃない?キモチワルイって……思わない…?」
さすがにそんな風に思われたなら桜だって諦めるしかないと思うけれど、理人は嫌じゃないって言ったんだ。
「………嫌じゃないから困るんだ」
「じゃあ!ねぇ!言っていい?俺、言いたいんだもん。好き。理人困ってていいから、嫌じゃなければいい…嫌いじゃないなら…」
理人の腕を思わず縋るように掴んだ。
「あのな。今の所、お前の気持ちに応える気はない。お前はまだ17だぞ?」
「だから本気じゃないって?」
桜はきっと理人を睨んだ。
「好きってどんな?って聞いて来る位子供だろ?」
う……。
桜が怯む。
「だって!初めてなんだもん!こんなんなったの!」
「あのな……桜クン、外でこの話題はやめようね?お前ん家の近くだし」
そうでした!
桜がぱっと口を塞いで立ち止まるとはぁ、と理人が溜息を吐き出して桜の前に立った。
「お前、ウチ来ない方いいんじゃないのか?」
「な、なんで…?俺、行くの…やだ?ダメ?」
「…そうじゃない。桜は可愛いと思う。顔だけの事じゃないぞ?でもまだ17の子に好き、はなんねぇと思うんだよな。だったら俺が思わせぶりな態度するよっか…」
「いいんだ!別に!理人が言うの分かるし!…子供、ってのも分かる…。でもそれでもいい…。勿論、ホントは好き、が一番いい。でも一緒にいられるだけでもいい、んだ…。理人が嫌、じゃないなら…」
「う~~~ん…嫌はないんだよな。…それがずるい大人な感じで俺は嫌なんだが。……応える気はない。それでも桜はいい、と?」
「いいよ!でも俺、言っていい…?好きって。だって出さないといっぱいになって溢れちゃいそうなんだもん!」
「………まっすぐストレートで、…お前、嫌だなぁ…」
嫌?
「ああ、桜がじゃないぞ?自分が汚いオトナに思えて嫌だな、っていう意味だ」
「汚い?どこが?」
理人は桜をバカにするのでもなくちゃんと答えてくれる。
「色々と。オトナになると感情だけで動けなくなるもんだ…。先を読んでシュミレイトして。その場だけの勢いってのはまずないからな」
「???」
「それだけ桜が綺麗で汚れてなくて、素直で可愛いって事だ」
意味わかんない。
「こんな事いうのもずるいって知ってて言ってるんだからなぁ」
理人が長い前髪をかき上げながら苦笑している。
「理人?全然意味わかんないよ?」
理人が桜の頭を撫でた。
「17…」
そしてじっと桜を見つめて溜息を深く吐く。
すでに桜の家は目の前まで近づいていた。
「…もっと家遠ければよかった。そしたらもっと理人といられるのに…」
理人を見ながら桜が呟くと理人ががっくりと肩を落とした。
そしてぽんと桜の肩を叩く。
「桜クン、君は<煽る>という言葉を覚えようか?自分が可愛いのは分かってるよな?」
「?」
「俺はオトナだから高校生よりか理性、自制は利くと思う。お前、滅多やたらに誰彼にそんな事言うなよ?」
「いわねぇよ!…理人にしかそんな事思わねぇし」
じとりと理人が桜を見てそしてまた溜息だ。
さらに苦笑。
「困った子だ。ほんと…」
ぽんと桜の背を叩いて押してきた。家に入れ、という事らしい。
テーマ : 自作BL小説
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