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熱視線 円舞曲~ワルツ~3

 「明羅」
 電話を終えたらしい怜が慌てて戻ってきた。
 「お前誰の車に乗った!?」
 「……今の電話宗から?」
 明羅が黒塗りの車に乗ったところを生徒の誰かが見ていて宗に連絡がいったのだろう。
 「嘘じゃなければ怜さんのお父さん」
 嘘じゃないだろうと思ったけど。
 「おまっ!なんで言わない!?」
 「言おうと思ったけど怜さんの写真に気とられたから」
 はぁ、と怜が嘆息した。
 周りがちらちらと見ていたが気にしない事にする。
 さっき怜に抱きつくようにしてしまったし、そりゃ気になるよな、と明羅は内心苦笑漏らした。
 「気をつけろって宗が言ってたのに」
 「…何気をつけたらいいのか分かんない」
 生方はくすくす笑っていた。
 「写真も決まったし俺は行くぞ?」
 「あ、俺も出る。いたって仕方ない。明羅」
 「うん」
 じゃあと店の前で別れて明羅は怜と一緒に駐車場に向かう。
 

 「で?」
 「で…って?」
 車に乗ったところで怜に問われた。
 「何言われた?」
 「ん~…息子二人を手玉に取ってるって」
 「はぁ!?」
 怜が呆れた声をあげた。
 「宗の事は同級生だけって言ったけど…怜さんとはだけ、じゃないらしいって……ごめんなさい」
 「別に関係ないから謝る必要はない。………お前桐生佐和子の息子って言われなかったのか?」
 「言われてないよ?知らないみたい。名前も聞かれたから」
 「………で?さっき泣いたのは?」
 「悔しいからっ!怜さんのコンサート見た事ないって!それなのに馬鹿にしたいいかた!いい?絶対宗とお父さんにチケット送って!」
 「え~~~~?別にいいよ」
 怜が嫌そうな顔をした。
 「じゃ俺が送るから!チケット2枚ちょうだいっ」
 「…同じ事だろうが」
 「だってっ!知らないくせにっ!桐生佐和子は一流のピアニスト?そうだよ!一流だよ!でも俺がぞくぞくするのは怜さんのピアノだけだ!」
 「……そうなの?」
 「そう!!怜さんのピアノだけなのに!世界の誰のピアノもオケも聞いてもならないのに!」
 「…小さい頃から随分聴いた…?」
 「勿論。名だたる人のはほとんど聴いてる」
 明羅は頷いた。
 「それなのに俺?」
 「そう。だから怜さんのピアノがすごいと、知ってる人は知ってる。年1回のコンサートだって怜さんのはすぐ完売だよ?俺はお母さんに頼んでコネ使ってるから取れるけど」
 怜はくつくつ笑った。
 「これからはコネ使わなくていいから」
 「…でも絶対あそこの席ね?」
 「当然だな。さ、明羅くん、帰ろうか?」
 怜がにっこり笑った。
 ん?
 「ご褒美をあげないと?」
 「…?何の?」
 「ん~?ま、いいや。あ、宗に連絡しないと。明羅」
 怜は携帯を渡してきた。
 「?」
 「宗が心配してたから説明」
 『もしもし』
 「あ、明羅だけど…」
 『…乗ったの親父の車?』
 「うん。そう。でも別になんでもないよ」
 『なら、いいけど。兄貴は?』
 「車運転中」
 電話の声やっぱり怜と似てるかも、と明羅は思わず口端が弛んだ。
 「ええと…ありがとう」
 一応心宗は配して怜さんに連絡いれてくれたのだ。
 『いや。じゃ』
 携帯を怜に返すと怜が明羅をじっと見ていた。
 「…何?」
 「いや、宗、何か言ってたのか?」
 「ううん?何も。宗の声、怜さんと似てるなぁ、と思って」
 ふふ、と口を抑えて笑ったら怜がアクセルを踏んだ。
 「どしたの?」
 「……何が?」
 いつも怜の運転はゆるやかで明羅の身体がぐいっと動く事はないのに今は仰け反りそうになった。
 「いつもより飛ばしてる?」
 「ああ、早く帰りたいなぁ、と。明羅身体平気?」
 「だから…大丈夫、だってば」
 なんで今聞くかな…。
 思わず顔がかっと熱くなる。
 「…怜さん心配しすぎ」
 「…そりゃするさ。気をつけろっていってるのに親父の車も乗るし」
 「…それは…。だって何気をつければいいのか分かんなかったし。あ!そういや似ているよね」
 「…何が?」
 「お父さん。怜さんと宗足して割ってダンディにした感じ」
 「………………」
 怜がじとりと明羅を睨んだ。
 「…お前今、宗も嫌じゃないだろう?」
 「うん。別に嫌じゃないよ。……何?」
 「いや……お前男の方好きなの?」
 明羅はどすっと怜の肩に拳を入れた。
 「いて。危ないだろ」
 怜が笑ってた。
 怜さんに似てるから、だけなのに。
 笑った怜が明羅の頬を宥めるように撫でた。
 「嘘だ。やきもちなだけだ」
 「は?」
 「だって明羅くんってば宗も親父も嫌じゃないみたいだし?」
 「……だってっ。…怜さんに似てるから…」
 かっと明羅が赤くなる。
 「明羅」
 信号で車が止まって名前を呼ばれたのに顔を向けたら怜にキスされた。
 「れ、怜さんっ」
 明羅はさらに耳まで熱くなった。 
 
 

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